中国政府で経済に関する司令塔機能を果たす国家発展改革委員会は1月12日、昨今の国際的な原油価格の低下を受け、政府が統制するガソリンとディーゼルの公式小売価格を減少させることを発表。一方、中国政府で税制を担当する財政部国家税務総局は、石油関連製品に対する消費税を引き上げを発表した。中国政府としては、石油関連製品からの増税収入を、省エネ対策と環境汚染対策への投資として活用するとともに、小売価格の下落を防ぐことで、市民や企業に対する省エネ・マインドを醸成していく考えだ。
中国政府による石油関連消費増税はこの2ヶ月で3度目となる。まず、2014年11月29日に、1リットル当りガソリンで0.12元(2.11円 2014年1月14日現在)、ディーゼルで0.14元(2.65円)の増税が実施され、続いて2014年12月13日に、再度1L当りガソリンで0.28元(5.31円)、ディーゼルで0.16元の増税が行われた。3度目となる今回は、1月13日付けで、1リットル当りガソリンで0.12元(2.27円)、ディーゼルで0.10元(1.89円)の増税が実施される。増税分は、近年中国で深刻化している環境汚染対策へ回されるとともに、将来の資源不足に備えた省エネ技術開発を加速させる。
財政部の過去3度の増税発表は常に、国家発展改革委員会による公式小売価格の引き下げに伴って実施されてきた。11月29日には、ガソリン公式小売価格を1トン当たり225元(4,266円)、ディーゼル公式小売価格を220元(4,171円)引き下げ、12月13日にはそれぞれ500元(9,480円)、240元(4,550円)引き下げた。今回の発表では、それぞれ215元(4,076円)、150元(2,844円)引き下げる。実際に販売価格は地方行政府ごとの詳細方針や需給により決定されるが、増税による価格上昇影響は、ガソリンとディーゼルの価格低下インパクトで相殺され、市井の販売小売価格は減少していることが観測されている。上海では、代表的な取引種類である92号ガソリンの販売小売価格は、国家発展改革員会が最初に価格低下を発表した2014年7月21日には7.94元(150.5円)であったが、現在では6.03元(114.3円)まで下落し、5元(94.8円)台に突入する見込みだ。
中国政府は、国際的な原油価格を手放しには受入れない構えだ。将来に向けて社会の省エネ体質を確立していくため、増税を行い原油価格をある程度高値に維持することで、市民や社会に省エネを促し、さらに企業には再生可能エネルギーの開発に対するインセンティブを確保していく。2013年時点で中国は、世界のエネルギーの22.4%を消費しており、GDPに対するエネルギー消費量は、アメリカの35倍、日本の7倍と非常にエネルギー効率の悪い社会構造となっており、これを大きく変換させていく。
中国の立法府である一院制議会、全国人民代表大会(全人代)は、行政府である国務院に税務に関して大幅な権限を与えている。今回行政府は、「政令」レベルの国務院「中華人民共和異国消費税暫行条例」に基づき、今回の増税措置「石油関連製品の消費税継続引き上げに関する通知(関於継続提高成品油消費税的通知)」を財政部のホームページ上で発表し、翌日実施した。将来、原油価格が上昇した際、減税が行われるかは不透明で消費マインドの停滞に繋がるかもしれないという懸念も出ている。消費税に関する正式な法規則は、2020年までに全人代にて法整備される見通しだ。
【政府サイト】中国財政部国家税務総局
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