エシカル(Ethical)は、直訳すると「倫理的な」「道徳上の」といった意味で、「エシカルファッション」とは、環境問題、労働問題、社会問題に配慮した、良識にかなった素材の選定や購入、生産、販売をしているファッションを指します。日本では2010年ごろから注目度が上がり、現在はファッション業界でもよく知られている用語です。
エシカルファッションの基準
100か国以上の6000以上の団体・個人が加盟している、2004年に設立されたエシカルファッションの推進団体The Ethical Fashion Forumでは、エシカルファッションの基準を下記のように記しています。
- Countering fast, cheap fashion and damaging patterns of fashion consumption(ファストファッション、安い使い捨て型のファッション消費に反する)
- Defending fair wages, working conditions and workers’ rights(生産において労働者の賃金、権利、労働環境を守っている)
- Supporting sustainable livelihoods(動植物の持続可能性をサポートしている)
- Addressing toxic pesticide and chemical use(有毒農薬や化学薬品の使用の問題に取り組んでいる)
- Using and / or developing eco- friendly fabrics and components(環境に優しい素材を開発、または使用している)
- Minimising water use(水の使用量を最小限にしている)
- Recycling and addressing energy efficiency and waste(リサイクルやエネルギー問題、ゴミ問題に取り組んでいる)
- Developing or promoting sustainability standards for fashion(ファッションにおけるサステナビリティを作りだし、それを広めようとしている)
- Resources, training and/ or awareness raising initiatives(新たな取り組みを人々に知らせ、解決策を広めようとしている)
- Animal rights(動物の権利を保護している)
背景
競争が激しいファッション業界では、生産段階で2013年にバングラデシュでおこったラナ・プラザ崩落事故に代表される工場の強制労働や、製造過程で使用する化学薬品による環境破壊などが、世界的な問題となっています。こうした問題に対し「環境・社会問題を引き起こさない、むしろ解決策となる倫理的なファッションを」という意識が1990年代からファッション業界関係者、消費者の中で高まり、エシカルファッションという言葉が広まりました。
現在ではエルメス、フェンディ、ヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood)などのラグジュアリーブランドから、H&Mやユニクロなどのファストファッションブランドまで、様々なブランドがエシカルファッションに取り組んでいます。2004年からはパリコレに平行してエシカルファッションがテーマの催しが行われたり、ロンドンやニューヨークで展示会が開催されたりするなど、世界の最先端ファッションの現場でも関心が高まっています。
また、エシカルファッションを訴える市民運動も盛んで、現在、NGOグリーンピースはアパレルメーカーに将来の有害化学物質ゼロを約束してもらうという「デトックス・キャンペーン」を進めており、PumaやNike、ユニクロなど多数の大手ブランドが参加しています。
日本では1999年から毎年5月に東京で「エシカルファッションカレッジ」というエシカルファッションを知るための一般向けイベントが2日間にわたり開催されており、2014年は1日あたり1000人動員しました。世界でも日本でもエシカルファッションの動きはますます盛んになり、デザイン的にも優れた商品が多数、出回っています。
「エシカルファッション」に取り組むブランド
多くのブランドがエシカルファッションに取り組んでいますが、今回は、その中から分かりやすい例を紹介します。
- Stella McCartney(ステラ・マッカートニー)
「動物素材を使わない」というポリシーを掲げ、国際動物愛護団体「動物の倫理的扱いを求める人々の会(People for the Ethical Treatment of Animals=PETA)」のレザー反対キャンペーン動画に出演しています。
- People Tree(ピープルツリー)
日本とイギリスでフェアトレード製品の製造、販売に取り組んでいます。オーガニックコットン等を使ったファッション性の高い服が多く、「ハリー・ポッター」に出演した女優エマ・ワトソンさんとのコラボも話題を呼んでいます。代表のサフィア・ミニーさんは、世界の優れたエシカルファッションを表彰するThe SOURCE アワードを2012年に受賞しました。
批判・課題
コナーウッドマン著の『フェアトレードのおかしな真実――僕は本当に良いビジネスを探す旅に出た』には「エシカル」の明確な定義がされていないため、宣伝、集客のために利用されている、という指摘があります。また「エシカル」という良い響きの言葉がひとり歩きしてしまい、マーケティング目的に使われ、買う側も思考停止してしまい、深く考えず「エシカル」と謳っているからいいかな、と安易に買ってしまう可能性も危惧されています。
「エシカルファッション」のこれから
多くの有名なブランドが取り組んでいることで、一般にも浸透しつつあるエシカルファッション。日々の装いを通じた意思表示として一般化すれば、ファッションを通じた環境・環境問題の解決の大きな力になります。
今後の発展のポイントは2つあります。1つは生産する側も買う側も、「エシカルファッション」がただの宣伝文句になっていないか、本当の意味でエシカルになっているか気をつけながら、生産、買い物を通じたサポートを推進していくこと。もう1つは、ファッション性や着心地が良い、質の高い商品を作り続けること。これらのポイントを押さえていけば、今後ますます発展、定着していくでしょう。
参考文献、参考URL
(※写真提供:Eugenio Marongiu / Shutterstock.com)
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