ジニ係数とは、所得格差を示す指標です。1936年にイタリアの統計学者コンラッド・ジニが考案し、その名をとって「ジニ係数」と呼ばれています。ジニ係数は、ローレンツ曲線と均等分布線で囲まれた部分の面積(A)と均等分布線より下の部分の面積(B)の比のこと。ローレンツ曲線とは、縦軸に所得額累積比、横軸に所得の低い世帯順に並べたときに所得額の累積比が描く曲線です。完全な所得分配が成立している場合は(A)が面積は0となります。一方、一つの世帯が所得を独占している場合には(A)と(B)が一致するため面積は1です。すなわち、ジニ係数(A)/(B)は0から1の間の値をとり、所得格差が大きいほどその値は1に近づきます。
ジニ係数には、主に所得について算出されています。まず、当初所得ジニ係数。こちらは、税や社会保険料を支払う前の所得で、公的年金などの社会保険の給付金は含まれません。もう一つが、再分配所得ジニ係数。こちらは、当初所得から税や社会保険料を控除し、さらに公的年金などの現金給付や医療、介護、保育などの現物給付を含むものです。
ジニ係数の現状
日本では、2013年に厚生労働省が『平成26年 所得再分配調査報告書』で、公的扶助や公的年金などの社会保障給付を除いた「当初所得」について、世帯ごとの所得格差が過去最大になったことを発表しました。1983年以降日本のジニ係数は上昇が続き、2013年の値は0.5704。こちらも過去最高となりました。当初所得ジニ係数が上昇した理由として、高齢化に伴う高齢者世帯の増加や単独世帯の増加など、各世帯が小規模化していることが挙げられています。一方、再分配所得ジニ係数は0.3759で、所得の再分配によるジニ係数の改善度は34.1%。この数値は過去最大でしたが、依然当初所得ジニ係数と再分配所得ジニ係数の開きは大きくあり、これを理由に社会格差是正のために公権力による再分配の強化を求める声が上がっています。
所得格差の現状
OECDが2016年11月に発表した報告書『Income inequality remains high in the face of weak recovery』によると、所得格差について現在以下の4つの特徴があります。
- 失業率が減少傾向にあるものの多くの国で記録的な所得格差が続いている
- 景気の回復の恩恵を受けているのは、中・低所得世帯よりも高所得世帯
- 多くの国で、長期にわたる失業と賃金上昇の遅さにより貧困層の所得が改善されていない
- 大多数の国で、昨今の経済危機の影響を緩和してきた所得の再分配の効果が弱まっている
一般的に、景気が回復すると、雇用が創出され失業率は下がり、所得格差を是正します。しかし、それと同時に高所得者層に富が集中すると、格差は一層広がることになります。また、最近の景気回復では、政府が歳出を抑えるため傾向にあります。公共事業などの政府歳出は、所得格差を是正する側面もあるため、歳出の減少は格差を広げるとも言われています。
ジニ係数への批判
ジニ係数は所得格差を示す指標として一般に利用されていますが、批判的な見方もあります。それはジニ係数が相対的な変化をもとに算出されるからです。ある年に100万円の所得を得たA氏と、1,000万円の所得を得たB氏がいるとします。数年後、所得はそれぞれ2倍になり、Aは200万円、Bは2,000万円になりました。この場合、ジニ係数の値は最初の年と変わりません。一方で実際の所得格差は900万円から1,800万円に広がっています。このように、ジニ係数は同比率で所得が変化したときには、格差を測定する機能が果たせないと言われています。
参考文献
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