【インタビュー】MUFGが国内初の外貨建て公募型グリーンボンド発行 〜欧州基準を意識したフレームワーク設計〜 2019/01/08 事例を見る

 グリーンボンド市場で、また新たな日本初が登場した。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は11月27日、日本初の国内外貨建て公募グリーンボンド発行を発表。12月7日には、発行条件を決定し、発行額は1億2,000万米ドル(約136億円)、年限10年、利率4.127% と発表した。今回のグリーンボンドは、邦銀がグリーンボンドを国内発行するという点でも初。また同社としても国内での外貨建て公募社債発行は今回が初となる。事務主幹事は三菱UFJモルガン・スタンレー証券。

 MUFGが国内でグリーンボンド発行は初だが、すでに海外では3回発行実績がある。初回発行は、2016年9月の米国での5億米ドル発行。2回目が2018年1月の欧州での5億ユーロ発行。3回目が同10月の欧州での5億ユーロ発行。そして4回目が今回だが、今年だけでも3回発行したことになる。日本の銀行としての史上初は、2014年10月に日本政策投資銀行(DBJ)が2.5億ユーロを欧州市場で発行だが、最近はメガバンクによる発行が増えてきている。三井住友フィナンシャルグループは、三井住友銀行発行のものも含めて過去2回、みずほフィナンシャルグループと三井住友信託銀行は過去1回ずつ発行しており、MUFGは邦銀の中で発行回数及び発行額でも最多。累積発行回数ではDBJの4回に追いついた。

 MUFGが今回、国内で、しかも外貨建てでグリーンボンドを発行した背景には何があったのか。MUFG財務企画部CFO室資本政策グループの山田潤世氏と小林亮祐氏に話を伺った。 

今回のグリーンボンドの概要は?

小林亮祐氏

 当社はこれまでアメリカやヨーロッパでグリーンボンドを過去3回発行してきましたが、今回のグリーンボンドは、当社にとって国内での初めての発行となり、また当社が国内で外貨建て公募債を発行する第1号案件となります。

 調達資金の使途は、三菱UFJ銀行を通じてのグリーンビルディング及び再生可能エネルギー案件への融資です。過去3回のグリーンボンド発行のうち、最初の2回は使途を再生可能エネルギーとしていましたが、前回の3回目からグリーンビルディングも対象に加えました。

 当社のグリーンボンド発行に際しては、国際資本市場協会(ICMA)のグリーンボンド原則(GBP)及び環境省のグリーンボンド・ガイドラインに準拠した「MUFGグリーンボンド・フレームワーク」を策定しており、これに準ずる形で発行しています。

 セカンドオピニオンは、Sustainalytics(サステイナリティクス)から取得し、国際資本市場協会(ICMA)のグリーンボンド原則(GBP)及び環境省のグリーンボンド・ガイドラインに適合しているとの評価を獲得しています。

MUFGグリーンボンド・フレームワークの内容は?

小林氏

 資金使途については、グリーンビルディングと再生可能エネルギーのそれぞれで適格要件の基準を設定しています。グリーンビルディングでは、LEED、BREEAM、CASBEE、DBJグリーンビルディング認証のそれぞれで上位2ランクまで取得している物件のみが対象となります。さらに、適格不動産の中でも、当社のグループ企業である三菱UFJリサーチ&コンサティングが、JCR(日本格付研究所)の協力を受け開発した独自のJ-REITのESG評価制度で上位3ランクである「S」から「B+」までの高い評価を得たものに優先的に資金を充当します。

 再生可能エネルギーでは、セクター観点では、太陽光、太陽熱、風力のみを適格案件とし、地熱、水力、バイオマス等は対象としません。また、再生可能エネルギープロジェクトには赤道原則(エクエーター原則)に基づくカテゴリー分類を実施し、カテゴリーC(リスクがない)またはカテゴリーB(リスクが小さい)に分類されたもののみを対象とします。カテゴリーA(リスクが大きい)は対象としません。

 これらの適格要件のチェックと使途選定は、グリーンビルディングでは融資主体となる三菱UFJ銀行のソリューションプロダクツ部不動産ファイナンスグループのREITチームが、再生可能エネルギーでは同じくソリューションプロダクツ部のプロジェクト環境室が実施し、最終的にMUFGが判断します。

 発行後の毎年のレポーティングでは、資金充当状況レポーティングと、グリーンボンドによるインパクトレポーティングの双方を実施します。資金充当状況レポーティングでは、不動産タイプ別及びグリーンビルディング認証プログラム別での資金充当状況を報告します。再生可能エネルギーでは、再生可能エネルギー・セクター別と、アジア・オセアニア、北米・中南米等の地域別での報告を行います。

 インパクトレポーティングでは、グリーンビルディングと再生可能エネルギー双方で、二酸化炭素排出量削減効果を測定し開示。加えて、再生可能エネルギーでは発電量も測定し、開示します。

欧州の機関投資家に耐えられるよう工夫した点は?

小林氏

 当社が過去に欧州でグリーンボンドを発行した際に、私自身も欧州の投資家に説明に行きました。やはり細かい内容にまで関心を持っているという印象を受けました。例えば、グリーンボンドの使途。日本のグリーンビルディング認証であるCASBEEやDBJグリーンビルディング認証は、欧米の機関投資家にはあまり知られていません。ですので、まず認証そのものの内容や基準等を説明し、グリーンボンドの使途として適切であることを丁寧に伝えました。レポーティングについても、二酸化炭素排出量削減効果の算出方法に関する計算式一つ一つにまで説明が求められることもありました。幸い、当社はフレームワーク策定時にかなり拘りましたので、欧州の投資家からも理解が得られましたが、そうでないと質問に窮する発行体もあると思います。

 そうしたこともあり、MUFGグリーンボンド・フレームワークは非常に高い基準を設定しています。例えば、グリーンビルディングでは、他の発行体では各認証基準の上位3ランクまでを対象としているところもありますが、当社では上位2ランクまでと、非常に高い基準を課しています。

 またレポーティングでも、資金充当状況レポーティングでは、CFOによるマネジメント・アサーションを表明するとともに、サステイナリティクスによるコンプライアンスレビューも取得します。さらに、インパクトレポーティングも毎年開示しています。

今回、外貨建て国内債のグリーンボンドを発行するに至った背景は?

小林氏

 まず当社は、金融庁から、国際的な大手金融機関に課す健全性基準「総損失吸収力(TLAC)」の適応企業に指定されています。同規制基準を満たすべくTLAC適格のシニア債の発行を2016年より行っており、その全てが外貨建てとなっています。その背景は、当社グループの外貨建てバランスシートの強化にあります。2018年9月末時点で、当社グループの外貨貸出金は3,620億米ドル。一方、外貨顧客性預金はその6~7割に止まります。残る不足分を通貨スワップや社債・借入金、有担保調達等で支えております。外貨建てシニア債はTLAC規制を満たすと同時に、外貨のバランスシートを支える安定性の高い外貨調達手段でもあることから、これまで発行の強化を進めてきました。そして更なる調達手段の拡充を目的とし、今回の外貨建て国内債の発行に至ったというわけです。

 また、当社初の国内発行を実施した背景は別のところにもあります。現在、米中貿易摩擦の悪化懸念等によりグローバルに金融市場が不安定な動きをする中で、欧米の社債市場でも、社債発行を見送るケースも散見されています。このような難しい局面でも起債を成功させるため、当社のクレジットをより高く評価して頂ける日本国内での発行は安定的に保有頂ける投資化層を増やす重要なオプションとなります。また、更に同社債をグリーンボンドとすることで、そうした安定的な投資家層をより多様化させることを狙いました。

山田潤世氏

 海外発行との違いという点では、国内発行のほうが柔軟性が高いという観点もあります。例えば、発行手続きは全て日本語で可能ですし、各業務・事務についても時差を気にする必要もありません。金融市場が不安定で起債に厳しい局面では、国内発行による高い機動性が活きてきます。今回、当社が無事に起債できたことは、その点でとても大きいと思います。

国内外貨建て発行の特徴は?

小林氏

 国内での円建て発行と外貨建て発行の大きな違いは、外貨建て決済では、ほふり(証券保管振替機構)でのDVP決済(証券の引渡しと代金の支払いを同時に行うことを条件づけた決済)がシステム化されていないため、購入者となる投資家に通常とは異なる決済フローをお願いしなければならない点です。そのため、国内での外貨建て発行ではこれまで私募債が中心でした。

 今回当社としても初の国内外貨建て公募債の発行となりましたが、国内の投資家からも外貨建て債に対する高い需要が確認できました。また、市場全体でも、国内外貨建て公募債の発行は、野村総合研究所が2018年に史上初の発行をして以降、静岡県、そして当社が3番目の発行となります。今後は、当社としても国内での外貨建て公募債や国内での外貨建てグリーンボンド発行をリードしていきたいと思っています。

資金使途の一つである再生可能エネルギー市場をどのように見ていますか?

小林氏

 当社では以前から再生可能エネルギー向け融資を積極的に実施しており、プロジェクトファイナンス等のアレンジ額でも世界トップです(図1)。リーマン・ショック後等に海外の大手銀行が再生可能エネルギーへの融資を少し控えた際に、その需要をうまく取り込む形で当社の融資額も伸びてきました。融資残高でも、過去4年間で年率平均9.1%で伸びています。

 地域別では、北米・中南米が56%と多く、欧州・中近東が23%、アジア・オセアニアが21%。アジア・オセアニアのうち10%〜13%程度が日本国内のものです。セクター別では、風力が64%と多く、太陽光・太陽熱が31%。尚、バイオマス・水力・地熱の融資実績はありますが、グリーンボンドの資金使途とはしていません。

 今後も特に海外では再生可能エネルギー市場は大きく成長していくと見ています。

図1

(出所)MUFG

MUFGが石炭火力発電へのファイナンスを続けていることに否定的な見方もあります

小林氏

 気候変動に対する関心の高まりの中、石炭火力発電についても厳しい見方が出てきていることは非常に理解しています。そのため、今年7月から適用を開始したMUFG環境・社会ポリシーフレームワークでは、石炭火力発電セクターはファイナンスに際して特に留意する事業と位置づけました。特に高効率ではない石炭火力発電方式については、原則ファイナンスしない方針としています。また高効率の案件でも、事業理由を確認しています。

 海外の金融機関では石炭火力発電セクターへのファイナンスを一律禁止する「Flattery No」 の方針を定めているとこもありますが、総合的な判断のもと、当社では「Flattery No」とはしていません。

 過去欧州でグリーンボンドを発行した際、石炭火力発電へのファイナンスについて欧米の投資家から指摘を受けたことも確かにありましたし、それを理由に当社のグリーンボンドを購入できないと言われた投資家も僅かにいました。ただ、だいたいの欧州の投資家には購入いただけましたので、ある程度はご理解をいただけたと思っています。

グリーンボンド発行の追加コストをどのように受け止めていますか?

小林氏

 グリーンボンド発行では、セカンドオピニオンの取得コストだけでなく、当社のみならず主幹事証券会社のリソースも相応に必要となりますので、確かに追加コストはあります。しかし、それ以上のメリットを感じています。

山田氏

 まず、足許の金融市場のように社債発行が厳しい環境下でも、グリーンボンドには旺盛な需要がありますので、社債の発行のそのものに大きなサポート材料となります。また、欧州にはグリーンボンドを専門とする“グリーン投資家”と言われる投資家も多く、彼らの旺盛な需要に対し、発行が追いついていない状況です。この様な環境下、グリーン投資家需要を取り込むことで発行価格を抑制出来るグリーニアム(greenium)の享受が可能と言われています。例えば数百億円規模の起債を行う際、利率を0.01%抑えられただけでも数千万の発行コスト削減効果があります。これだけでもグリーンボンドに関わる追加コストを十分回収できます。今回の発行時にも、実際に利率をタイトに抑えることができたと感じています。日本のグリーンボンドはまだまだ発展途上ですが、今後は欧州と同じような状態になっていくと見ています。

小林氏

 さらに、グリーンボンド発行を機に、当社グループでも新たな事業領域が生まれてきています。三菱UFJ銀行では、グリーンビルディングや再生可能エネルギーへの融資という事業が成長してきましたし、さきほど紹介したように、三菱UFJリサーチ&コンサティングでは、J-REITのESG評価サービスも誕生しました。

 初回発行時のコストと、2回目以降のコストでは、初回のフレームワーク作りをどこまできっちりやるかで、2回目以降のコストが変わってくると思います。当社では、初回発行時にフレームワーク作りハードル高く行い、IRも非常に丁寧に実施いましたので、2回目以降は非常にスムーズにいきました。

著者プロフィール

夫馬 賢治

株式会社ニューラル 代表取締役CEO

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