国連食糧農業機関(FAO)の屈冬玉・事務局長は3月31日、ロベルト・アゼベド世界貿易機関(WTO)事務局長、テドロス・アダノム世界保健機関(WHO)事務局長と共同で声明を発表。新型コロナウイルス・パンデミックの影響で、食糧を貿易に依存している何百万人の人が食糧リスクにさらされる可能性があると警鐘を鳴らした。国境管理を強化したとしても、食糧サプライチェーンを維持するよう訴えた。
今回の声明では、食品の貿易が阻害されると、食糧に対する安心に不必要な懸念が発生。また農業従事者の移動を制限することは、同じく食糧供給を阻害するとした。仮にこのような事態を招いた場合は、社会的弱者にとって重大な結果をもたらすと警告した。同様に、食糧調達への懸念から各国政府が輸出制限を発動する事態となれば、食糧価格の高騰や乱高下をもたらすとし、国際的な協調とグローバル市場の維持を呼びかけた。
FAOが発信した3月のニュースレターによると、すでに輸出制限が各国で検討されてきている。世界有数の小麦輸出国カザフスタンでは、政府が3月30日、4月から小麦輸出の数量割当管理を実施することを閣議決定した。今後、数量を業界団体と協議の上、決定する模様。ウクライナでも、経済相と小麦貿易大手との間で3月30日、2019年度の輸出を2,020万tに制限することで合意した。国内のパン生産者から国内での価格高騰を防ぐため、輸出制限を求める声が上がっていた。ロシアでも3月27日、4月から6月までの穀物輸出を700万tに制限する方針を示した。
インドでは、米輸出の新規契約が一部停止し始めている模様。原因は、政府による輸出禁止措置ではなく、新型コロナウイルス感染拡大防止のための移動制限による農業生産活動の停止によるもの。一方、政府による輸出制限については、小麦輸出事業者からは「制限されないだろう」との観測が出ている。インドでは前年度非常に豊作な年となり、備蓄が十分にあると見られている。
ベトナムでは政府が3月下旬、米の新規輸出契約を3月28日まで禁止する措置を発動。しかし4月になっても禁止が解除されないままとなっている。米輸出事業者からは、禁止措置ではなく数量割当に移行するよう求める声が上がっている。カンボジアのフン・セン首相も3月30日、精米と未脱穀米の輸出を禁止したと発表した。但し、ジャスミン米は、当面の間、輸出を許可する。
【参照ページ】Mitigating impacts of COVID-19 on food trade and markets
【参照ページ】MNR ISSUE 161
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