化学世界大手独バイエルは6月24日、除草剤ラウンドアップの発がん性を巡る訴訟問題で、100.5億米ドル(約1兆700億円)から108.5億米ドル(約1兆1,600億円)の和解金を用意し、関連訴訟の大半を一斉に解決すると発表した。但し発がん性そのものは否定し、販売は継続する。
ラウンドアップは、モンサントの製品だったが、2018年にバイエルがモンサントを企業買収したため、関連訴訟の被告がモンサントからバイエルに移っていた。今回の和解案は、現在未提訴のものも含めて12.5万件ある訴訟案件のうち75%をカバー。具体的には、広域係属訴訟(MDL)及びカリフォルニア州で実施されていたウェザーベル・トライアルの全件、及び提訴済案件の95%をカバーしているという。今回の和解は、カバーされていない案件でも、重要情報として参考にされる見込みという。
和解金の内容は、既存の訴訟案件(未提訴含む)の和解に88億米ドルから96億米ドル。また将来訴訟に備えた事前の集団合意に12.5億米ドル。すでにドイツの二層制コーポレートガバナンス機関である同社のマネジメント・ボードとスーパーバイザリー・ボードの双方で承認済み。事前集団合意は、連邦地方裁判所で承認されば、将来訴訟に対して効力を持つ。手法としては、独立機関の「Class Science Panel」を創設し、同社の否の有無や、責任の範囲を決定する。
一方、すでに控訴裁判所で争われている訴訟3件については、今回の和解対象にはせず、裁判を続ける。そのうちの1件では、地方裁判所が6月、カリフォルニア州当局に対し、ラウンドアップに発がん性物質が含まれることを示す警告文の表示を禁止する命令(Preemption)を発しており、バイエル側の主張が認められた形となっている。
【参考】【アメリカ】EPA、グリホサートの「発がんのおそれあり」ラベル表示を禁止。カリフォルニア州に対抗(2019年8月14日)
【参考】【アメリカ】サンフランシスコ地裁、除草剤ラウンドアップに発がん性有りと判断。2件目訴訟(2019年3月25日)
和解金の支払は、2020年と2021年に各々約50億米ドル。2019年に動物用薬品事業をエランコ・アニマルヘルスに売却した76億米ドルの売却益を支払に回す。一方、ラウンドアップに発がん性はないとの主張は変えず、販売もそのまま継続する。
同社は今回の発表の中で、旧モンサントの別の除草剤ジカンバでの和解でも4億米ドル、旧モンサントのポリ塩化ビフェニル(PCB)水汚染訴訟での和解では8.2億米ドルを支払うと表明した。
【参照ページ】Bayer announces agreements to resolve major legacy Monsanto litigation
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