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【EU】欧州理事会、92兆円の長期経済復興策で合意。初のEU債発行へ。今後欧州議会との協議へ

 EUの最高意思決定機関である加盟国首脳級の欧州理事会は7月21日、EUとして初となるEU債を発行し、7,500億ユーロ(約92兆円)の経済復興政策を実施することで合意した。EU債の発行は、欧州委員会が発行体となり、全額を市場から調達する。

 EUとして起債は、イタリアやスペイン等、新型コロナウイルス・パンデミックにより大幅に経済が落ち込んでいる南欧諸国での経済復興を主な目的としている。欧州理事会は3月の会合で、経済復興では、グリーン転換とデジタル・トランスフォーメーション(DX)を中心とすることで合意。4月のEU財相会議では、EU債の発行も議題となったが、加盟国の財政規律を重視するドイツとオランダが反対に回り、結論が出なかった。

【参考】【EU】欧州理事会、新型コロナからの出口戦略に向け「グリーン転換」への準備で合意(2020年4月3日)
【参考】【EU】財相会議、新型コロナで64兆円の緊急経済支援策で合意。加盟国政府への融資拡大(2020年4月11日)

 しかし5月の欧州議会では、EUとしての自主財源「Own Resources」を持つことを求める決議も出たため、欧州委員会と加盟国は、EU債の発行で調整を進めていた。提案の中心となったのが、フランスとドイツで、調達資金の使途について、当初案では5,000億ユーロを加盟国への補助金、2,500億ユーロを低金利融資としていたが、「倹約(Frugality)4カ国」と呼ばれるオランダ、オーストリア、デンマーク、スウェーデンが、財政規律のため補助金を引き下げるよう要請。フィンランドも同調し調整が難航したため、欧州理事会は7月17日から5日間をかけてようやく合意に達した。最終的には、補助金3,900億ユーロ、低金利融資3,600億ユーロとすることでまとまった。

【参考】【EU】欧州議会、欧州委に230兆円の経済対策長期予算要求。グリーンリカバリー重視(2020年5月18日)

 今回の調達資金は、2021年から2027年までの次期7カ年予算の中に組み込まれる。今回の欧州理事会では、7カ年予算の支出チャネルも決定した。

  • 復興・レジリエンス・ファシリティ(融資):3,600億ユーロ
  • 復興・レジリエンス・ファシリティ(補助金):3,125億ユーロ
  • ReactEU:475億ユーロ
  • Horizon Europe:5億ユーロ
  • InvestEU:56億ユーロ
  • Rural Development:75億ユーロ
  • Just Transition Fund:100億ユーロ
  • RecEU:19億ユーロ

 復興・レジリエンス・ファシリティの補助金分のうち、70%は2022年までに歳出し、残りの30%も2023年までに使い切る。復興・レジリエンス・ファシリティの融資分に関しては、GNIの6.8%が上限。また、7,500億ユーロの全体予算のうち30%以上を気候変動対策に用いることも決議した。支出分野については、デジタル・トランスフォーメーションや、自然資源・環境等、7つの分野での予算枠も定めた。また今回、倹約4カ国は、EU予算から分担分の返還を受ける制度の増額を要求し認めさせた。

 今回決定された予算は、今後、欧州議会との協議に入る。すでに欧州議会は、欧州理事会での合意点のいくつかに意見がある旨を表明しており、多少の難航も予想される。また、今回の決議内容には、EUとして課税や課徴金による独自財源(Own Resources)に関する内容も盛り込まれており、こちらは加盟国での承認プロセスに入る。

【参照ページ】EU summit compromise: positive step for recovery, inadequate in the long-term
【参照ページ】Special meeting of the European Council (17, 18, 19, 20 and 21 July 2020) – Conclusions

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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