EU加盟国財相は4月9日、緊急のオンライン会談を実施。新型コロナウイルス・パンデミックに対応するため、総額5,400億ユーロ(約64兆円)の緊急経済支援策で合意した。
内訳は、まず、中小企業向けローンが2,000億ユーロ。欧州投資銀行(EIB)が今後、中心となり詳細設計を行い、EU加盟国の政府系銀行を通じて融資を実行することを想定している。EUとしては、同ローンの保証ファンドとして250億米ドルを用意する。
2つ目は、加盟国での雇用保険を支えるため、加盟国政府に最大総額1,000億ユーロの優遇融資を実施する。3つ目は、経済危機対策用に2012年に設立された欧州安定メカニズム(ESM)から、加盟国政府向けの融資枠を設定する「拡大信用枠(ECCL)」を発動する。EUの発表によると、設定額は最大2,400億ユーロ。ECCLは、これまで一度も発動されたことがなく、今回始めて活用されることとなる。2,400億ユーロは、ユーロ圏GDPの2%に相当する。
EUでは先に、欧州議会とEU理事会が4月1日、EU予算のうち370億米ドルをパンデミック対応に回すことを承認している。また、自然災害用の支援ファンド「EU連帯ファンド」から8億ユーロを各加盟国政府支援に活用することも4月1日から始まった。
また、欧州委員会は4月1日、公共調達基準を緩和するガイダンスを発表しており、今回財相会議を同ガイダンスを支持した。新型コロナウイルスにより、サプライチェーンが寸断される事態が起きており、暫定的に調達確保を優先する。今後、加盟国政府予算に課している基準等の緩和も進めていくことで合意した。EUでは、欧州中央銀行(ECB)による金融支援策が発表済み。
【参考】【ヨーロッパ】ECBと英銀、新型コロナで市中銀行への優遇融資と資産買入プログラム増額を発表 2020/04/10
一方、イタリア、スペイン等9カ国が提案している共通債(通称コロナ債(Coronabond))発行に対しては、ドイツ、オランダ等が反対しており、合意に至らなかった。シャルル・ミシェル欧州理事会議長(EU大統領)は、議論を継続する考えを示しているが、フランスからも「発行に固執すべきでない」との意見も出ている。
今回の緊急支援策は、政府への融資が中心。そのため、日本で報道されるような「真水」に該当する額はゼロ。加盟国政府へ資金を供給した後、各加盟国毎に対応策を進めていくことになる。
【参照ページ】Report on the comprehensive economic policy response to the COVID-19 pandemic
【参照ページ】Klaus Regling on the European response to the corona crisis
【参照ページ】Guidance from the European Commission on using the public procurement framework in the emergency situation related to the COVID-19 crisis
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