食品・消費財・小売大手160社以上は12月上旬、ブラジルの大豆生産大手に対し、生物多様性に富んだブラジルのカンポ・セラード地域で、2020年以降に開拓した農地からの大豆調達を一切禁止するよう要求し、従わない場合は制裁も辞さないとの共同書簡を送付したことが明らかとなった。それに対し、ブラジル政府が反発する等、事態がエスカレートしてきている。
今回の共同書簡に加わったのは、マクドナルド、テスコ、ユニリーバ、Lidl等。これら企業は、食品・消費財大手や小売大手が加盟する国際的な業界団体コンシューマー・グッズ・フォーラム(CGF)に加盟しており、CGFの動きとも連動している。CGFは現在、投資家の畜産業関連イニシアチブ「Farm Animal Investment Risk and Return(FAIRR)が運得しているブラジルのカンポ・セラード地域での森林破壊ゼロを宣言する「Cerrado Manifesto(セラード・マニフェスト)」に賛同しており、CGFの加盟企業にも、セラード・マニフェストの遵守を呼びかけている。
【参考】【国際】世界大手70社以上、ブラジルのカンポ・セラードでの森林破壊阻止で結集。FAIRR主導(2018年8月2日)
セラード・マニフェストには現在136社が署名。署名企業は、ウォルマート、カルフール、テスコ、セインズベリー、マークス&スペンサー、ウェイトローズ、メトロ、イケア、ヒルトン・フード・グループ、マクドナルド、ユニリーバ、ロレアル、コルゲート・パーモリーブ、ダノン、ジボダン、ネスレ、ケロッグ、マース、モンデリーズ・インターナショナル、バリーカレボー、アルディ英国・アイルランド、アルディ・オランダ、LidL、BNPパリバ・アセット・マネジメント、Robeco、ABP、Mirova、AVIVA Investors、アリアンツ・グローバル・インベスターズ等。日本企業では味の素が署名している。
共同書簡の送付先は、カーギル、ADM(アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド)、バンジ、中糧集団(COFCO)の商社子会社COFCO International(中糧国際)、ルイ・ドレフュス、バイテラ(旧グレンコア・アグリカルチャー)の6社。6社は「ソフト・コモディティ・フォーラム(SCF)」を形成し、12月に2020年度の進捗レポートを発表していた。
【参考】【ブラジル】カーギル等SCF加盟6社、カンポ・セラードでの大豆生産で進捗報告。100%のトレーサビリティ実現(2020年12月27日)
カンポ・セラードでの森林破壊については、緩いブラジルの法規制が関係しているとみられている。ブラジルの法律「Brazilian Forest Code」では、アマゾン地帯では農家に対し、土地の80%を原生林のまま保護することを義務付けているのに対し、カンポ・セラードでは保護義務化対象が土地の20%から35%と緩い。そのため、森林を大豆農地に換える農家が絶えないという。マクドナルド等は、このブラジル法そのものが緩すぎると見ている。
この動きに対し、ブラジルの駐英大使は12月18日、フィナンシャル・タイムズ紙で反論を展開した。同大使は、ブラジルは、大豆生産性の向上で、世界の食料事業に大きな貢献をしており、Brazilian Forest Codeに関しても、農家に対し森林保護を義務付けているのは、世界でブラジルぐらいと反発。現行の政策でも、英国国土の23倍ものアマゾン熱帯雨林を保護できており、政府は農家の所得と環境保護を十分にバランスと採りながら進めているとした。
その上で、ブラジル農家は義務を果たすことで他国よりも負担を強いられており、その上、グローバル規模の購入企業からは財務的支援もなくさらなる難題を突き付けていると非難。先に発表された共同書簡の内容は、極めてステークホルダーの一面だけを見、農家を見ていないと義憤を示した。
この反発に対し、国際環境NGOマイティ・アースは12月22日、同じくフィナンシャル・タイムズ紙上で反撃。ブラジル宇宙庁の最新のデータからは、森林破壊の面積が過去12年で最大となっており、ブラジル政府が自ら現行政策が不十分であることを物語っていると主張した。
また農家に課題を押し付けているとした大使の反発に対しては、グローバル規模の購入企業は、農家の森林保護アクションに対し、すでに2,000万米ドル(約21億円)もの資金拠出を行っており、NGOとの協働を進めながら、ステークホルダー全体の観点からスキームを構築していると反論した。現在の論点は、ブラジル農家が持続可能な大豆生産を行い、その努力がきちんと報われるかどうかではなく、大豆商社がいつ目の前の機会を活用し、ブラジルの農家に持続可能な未来を提供するかどうかだと語った。
さらにマイティ・アースは12月20日、カーギル、ADM、バンジ、中糧国際、JBS、マルフリグ、ミネルバ・フーズ、ALZ、AMAGGI、LDCの10社を対象に、人工衛星画像等を活用した大豆サプライチェーンでの森林破壊モニタリングシステム「Rapid Response system」を活用し、関与度のランキングを示した。面積の大きい企業が悪いスコアとなりやすい評価体系で、最もスコアが低かったのはJBSだった。
【参照ページ】Retailers and food groups demand soya traders halt Brazil deforestation
【参照ページ】Supporting the Cerrado Manifesto
【参照ページ】Letter: Brazil’s farmers should be paid not penalised
【参照ページ】Sustainable Soy in Brazil is Possible – Why are Soy Traders Blocking it?
【参照ページ】SOY & CATTLE DEFORESTATION TRACKER
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