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【エジプト】スエズ運河座礁の船舶が離礁。足止め422隻が通過完了。残るは事故解明と損害・保険処理

 スエズ運河で座礁していた台湾エバーグリーン・ライン(長栄海運)が運航するパナマ船籍「Ever Given」が3月29日、離礁した。7日間、航行不通に陥っていたスエズ運河が再開した。滞留していた船舶は422隻以上だった。船主は愛媛県の正栄汽船。

【参考】【エジプト】エバーグリーンの超大型コンテナ船、スエズ運河で座礁。運河機能が完全停止(2021年3月25日)

 座礁時の責任は、国際法により船主企業が負うことになっており、今回も正栄汽船は、座礁直後から現地関係当局と船舶管理会社のドイツのベルンハルト・シュルテ・シップマネージメントと協力しながら離礁作業を開始。離礁作業は、船舶サルベージ会社世界大手のオランダSMITサルベージと、日本の日本サルヴェージが請け負った。当初は、タグボートを使った船体移動や、掘削機を使った浚渫作業を通じて、離礁を試みたが、20,000TEUの超大型コンテナ運搬船の離礁は思うように進まなかった。

 サルベージ会社は、その後も、浚渫作業とタグボードによる牽引を続け、浚渫は3万m3、タグボートは最終的に13台にも及んだ。運河に対し垂直に座礁した船体を、船首方向からはタグボートで牽引し、船尾ではタグボートで押すことで、船体を運河の航行方向に位置を修正していった。3月26日夜には、底に接触していた舵部分が底から離れたが、それでも船は動かず、最終的には満潮による水量増が決め手となり、離礁した。当局は途中、軽量化のためにコンテナの積み下ろしも検討していたが、最終的に必要はなかった。

 離床したEver Givenは、グレートビター湖に移送され、本船の損傷状態を確認。4月2日には、ダイバーによる水中検査が行われ、その後、船級のABSによって必要な修理方法が決定される予定。その間、Ever Givenの積荷も全て輸送が遅れる状態となっている。エジプト政府スエズ運河庁のラビア長官は3月31日、運河や運河周辺に足止めされていた422隻全てが運河を通過したことを明らかにした。

 離礁後も、正栄汽船には、損害賠償や保険手続きの作業が残る。スエズ運河庁(PCA)によると、今回のエジプト側の損害と救出費の総額は約10億ドル(約1,100億円)。それ以外にも、Ever Givenの輸送遅延の損害賠償、足止めされた422隻の損害賠償等を抱える。オペレーターのエバーグリーン・ラインは、積荷主に対し、到着次期を保証する契約ではなかったため、今回の遅延損害金の一切の責任を否定している。

 海難事故に関しては、国際法により、事前にP&I保険(船主責任保険)に加入することが原則となっているため、実際には正栄汽船の負担分、P&I保険でカバーされる。船主が負う賠償上限額は海事債権責任制限条約(LLMC)で規定されている。LLMCには、1976年条約と1996年議定書(2015年改正)の2つがあり、1976年条約によると賠償上限は、現在の円レートで35億円、1996年議定書では128億円。どちらの条約が適用されるかは、管轄裁判所の判断となり、事故発生のエジプト、船主の登記国の日本、船籍国のパナマの各条約の加盟状況で判断されるとみられる。現在、スエズ運河庁は、保険会社とともに事故原因調査も進めている。

 英海運専門紙ロイズ・リストは、事故の損害の総額は1日当たり96億米ドル(約1兆500億円)と推計している。P&I保険の再保険を引き受けているロイズ・オブ・ロンドンは3月31日、損失は1億ドル(約110億円)以上になる可能性があると語った。

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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