
経済協力開発機構(OECD)は6月17日、「Global Drought Outlook(世界旱魃見通し)」報告書の2025年版を発行した。同報告書の発行は今回が初。過去120年間で、旱魃の影響を受ける陸地面積が2倍に増加していることがわかった。
過去数十年間で、世界全体の旱魃リスクにさらされている土地の割合は、1900年10%強から、2020年には20%以上へと2倍にまで増加。1900年から2000年の平均と、2000年から2020年の平均を比べると40%増加しており、頻発かつ激しい旱魃を経験する陸地面積が増加傾向にあることもわかった。メキシコの20年間にわたる旱魃や、2022年の欧州と米国を襲った壊滅的な旱魃等、記録的な旱魃の多くも近年に発生している。
旱魃リスクが増加している要因には複数あるが、気候変動の影響が大きい。気温上昇により、蒸発を増加させ、降水パターンを乱し、雪解け水や氷河の貯水量を減少させている。気候変動は2022年の欧州旱魃の発生確率を最大20倍に高め、北米で現在進行中の旱魃の発生確率を42%増加させている。予測によると、4℃上昇シナリオでは、旱魃の頻度と強度が気候変動のないシナリオに比べて最大7倍に増加する可能性があるという。他の要因としては、森林伐採、都市化、持続可能でない農業、持続可能でない水消費などが挙げられる。
今回の分析では、1980年以降、世界の土地の37%で土壌水分量が大幅に減少。同様に、地下水位は世界的に低下しており、監視対象の地下水層の62%が減少傾向にある。多くの河川でも流量が大幅に減少しており、水供給の変化は土壌の劣化を加速し、森林や湿地等の生態系に悪影響を及ぼし、植物の生物量や分布に影響を与える。これにより、生態系サービスが大きく混乱する可能性が出てくる。また破壊的なフィードバックループを通じて、将来の旱魃リスクがさらに悪化していくおそれもある。
さらに今回の分析では、旱魃の社会経済コストが急激に増加していることも明らかとなった。損失・損害は、世界的に年間3%から7.5%のペースで増加。2025年の平均的な旱魃イベントのコストが2000年の2倍以上に上昇。2035年までに現在比で35%以上増加すると予測されている。そのうち、農業が最も影響を受けるセクターとなり、特に乾燥した年では作物の収量が最大22%減少する可能性が出てきた。旱魃の期間が2倍になると、大豆やとうもろこし等の主要作物の生産量が最大10%減少する可能性があると予測された。
例えば、米カリフォルニア州では、2021年の旱魃だけで農業損失が11米億ドル(約1,500億円)に達し、先進国でも影響が大きくなっている。一方、旱魃の経済的影響は農業をはるかに超え、河川水量の最大40%の減少、水力発電量の25%以上の減少となり、物流やエネルギー供給も脅かされるようになっている。今後、さらにデータ分析を深める考え。
直接的な人への影響でも、旱魃は自然災害の6%を占める程度だが、旱魃は全災害関連死亡者の34%を引き起こし、特にサハラ以南のアフリカで移住と移民を悪化させることになるという。「アフリカの角」地域では、2023年に5年連続の降水量不足により、2,300万人が深刻な飢餓に直面しており、これらの影響が複合すると、政治的不安定、社会的混乱、希少な資源を巡る地政学的緊張を招く可能性があるとした。
対策の提言としては、気候変動適応・レジリエンスに向けた投資の拡大。OECDは今回、旱魃予防に1米ドル投資すると、2米ドルから3米ドルの便益が得られると強調し、レジリエンス投資の収益率は初期コストの10倍に達する可能性があると伝えた。
また、旱魃リスクへの適応には、効果的な水政策が不可欠とし、統合的な水資源管理により、水の使用効率化、節約、水資源の公平な配分を確保しつつ、供給のレジリエンス向上と水採取と再生のバランス回復を提唱した。さらに、長期計画に気候変動の影響を組み込み、生態系を重要な水源として保護するアクションを促した。
加えて、水対策だけでは不十分とし、持続可能な土地利用、生態系の再生、適応型農業は、土壌への水保持、水循環の調節を提唱した。エネルギー、交通、建築等での気候変動適応を検討すべきともした。
【参照ページ】Rising economic and human costs from droughts worldwide require effective policies to limit losses and damage
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