
BRICS12ヶ国は7月6日と7日、ブラジルのリオデジャネイロで第17回BRICSサミットを開催。126のコミットメントを盛り込んだ文書「より包括的で持続可能なガバナンスのためのグローバルサウス協力の強化」を採択した。米国の孤立政策によりG7やG20が存在感を示せなくなっている中、BRICSの結束力が目立っている。
BRICSは、2009年に中国、インド、ロシア、ブラジルの4ヶ国でスタートし、2010年に南アフリカが加盟し5ヶ国体制となった。さらに2024年1月からは、新メンバー国として、アルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)の6ヶ国が、2025年にはインドネシアが加盟し現在12ヶ国体制となっている。今回のサミットでは、イランからはアラグチ外相が出席したが、それ以外は首脳級が出席した。
さらに今回の会合では、ベラルーシ、ボリビア、カザフスタン、キューバ、ナイジェリア、マレーシア、タイ、ベトナム、ウガンダ、ウズベキスタンがパートナー国として認定された。
同文書では、「相互尊重と理解、主権平等、連帯、民主主義、開放性、包摂性、協力、合意」をBRICSの精神として再確認。「政治・安全保障」「経済・金融」「文化・人的交流」の3つの柱の下、BRICSにおける協力をさらに強化し、国際社会でのグローバルサウスの発言力を高めていくことで合意した。また合意した126のコミットメントは、グローバルガバナンス、金融、保健、AI、気候変動と多岐にわたる。
気候変動に関しては、パリ協定の目的と目標の達成に向けて団結することで一致。全ての国に対し、パリ協定の締約国としての既存のコミットメントを堅持し、気候変動対策の努力を維持・拡大するよう求めた。さらに今冬に開催される国連気候変動枠組条約第30回ベレン締約国会議(COP30)の議長国となるブラジルを全面的に支持。またCOP31議長国となるオーストラリアの後には、COP32にナイジェリア、COP33にインドが立候補していることも歓迎している。
その一環として、発展途上国に対し、アクセス可能で、適時かつ手頃な気候変動資金を確保し、公正な移行(ジャストトランジション)を実現してくことの重要性を主張。特に先進国が発展途上国に対して責任を負っていることを強調した。その上で、経済力とイノベーションを活用し、野心的な気候変動対策が全ての人の繁栄とより良い未来を推進できることを示すため、「気候変動ファイナンス首脳宣言」を採択した。
また、BRICSは5月に「BRICS公正・包摂的・透明なカーボン会計原則」を採択し、今回のサミットでも同原則を歓迎した。同原則では、地域毎に現実的なベンチマークやデフォルト値を設定することや、MRV(測定・報告・検証)を簡素でアクセス可能な方法で行うこと、カーボン会計に社会・環境・地域経済への貢献も反映させること等を打ち出している。
加えて、気候変動関連技術(CrTs)における知的財産(IP)の在り方を整理、提言した報告書も発行した。同報告書では、クリーン技術の普及促進と国際技術協力の強化に向けた知的財産の活用オプションとして、複数の権利者が共同ライセンス供与する「特許プール」、脆弱に向けた無償または低価格での提供「人道的ライセンス」、標準化された条件のもとで非排他的にCrTs特許をライセンス供与する「オープンライセンス」の3つを提唱した。
一方、気候変動政策を理由とした貿易障壁の構築には反対を表明。特に、EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)、森林劣化・破壊規制(EUDR)、企業サステナビリティ・デューディリジェンス指令(CSDDD)には強く反対した。同時に、「意図的にグローバルな供給・生産チェーンを混乱させ、競争を歪める一方的な保護主義的措置にも反対する」として、米国のトランプ関税にも反発した。反対に貿易と環境政策の相互に補完的なアプローチに関する協力を促進するためのプラットフォームとして「BRICS貿易・気候変動・持続可能な開発に関するラボ」を設立することも歓迎した。さらに、気候変動の科学的な研究でも「BRICS気候研究プラットフォーム」の活動を本格化させる。
関連して、エネルギー安全保障については強化する必要性を強調。化石燃料が世界のエネルギーミックスにおいて依然重要な役割を果たすとの立場を採り、特に新興市場と発展途上国において、公正で、秩序があり、公平で、包摂的なエネルギー転換を求めた。同分野に対するファイナンス拡大でも一致した。重要鉱物が果たす重要な役割も認識した。
生物多様性に関しては、生物多様性の保全と持続可能な利用、遺伝資源の利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分、生物多様性条約と昆明・モントリオール生物多様性枠組の効果的な実施の重要性を強調した。その上で、先進国に対し、発展途上国に対し、生物多様性の保全、持続可能な利用、および生物多様性の利用から生じる利益の公正かつ公平な分配のための、十分かつ効果的、予測可能、適時かつアクセス可能な資本、キャパシティビルディング、技術移転を確保するよう促した。さらに、熱帯林を含むすべての種類の森林が、生物多様性の保全、水系と土壌の保護、経済部門に高価値の木材と非木材林産物の提供、水循環の調節、砂漠化防止、重要な炭素吸収源としての役割を果たす点で、極めて重要な役割を果たしていることを強調した。COP30では「熱帯林永久基金」も創設していく考え。
プラスチック汚染については、適切な実施手段の必要性を含め、海洋環境を含むプラスチック汚染に関する公正で効果的かつバランスの取れた法的拘束力のある国際枠組の交渉に、「協力と合意形成の精神、緊急性と連帯感を持って継続的に参画」すると表明。各国の国内事情、能力、コミットメントを考慮しつつ、能力強化と知識・技術の移転を通じた適切なプラスチック廃棄物管理に焦点を当て、特に発展途上国の経済に悪影響を及ぼさないよう確保するとした。
保健分野では、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の実現と、医薬品、ワクチン、診断薬等の必須の保健用品及び保健医療サービスへの公平かつタイムリーなアクセスを確保することを目指し、レジリエントで公平でインクルーシブな保健システムを進めていくことを再確認。薬剤耐性(AMR)対策、感染性及び非感染性疾患の予防能力の強化、伝統医療システム、デジタルヘルスを含む保健課題でも協力していくことを謳った。
貿易・金融協力分野では、プロジェクトの準備態勢の改善と民間投資の拡大を目的とし、為替リスク軽減と気候レジリエントなインフラプロジェクトの準備に関する「BRICS PPP・インフラタスクフォース」の成果を強調。BRICS諸国を対象とした「BRICS多国間保証(BMG)イニシアチブ」の設立も打ち出した。「BRICS決済タスクフォース(BPTF)」により、決済システムの相互運用性の向上も進める。
食料分野では、技術とイノベーションの導入を通じて持続可能な農業と農村開発を促進し、中小零細農家・漁業水産養殖労働者を発展させることで、食料安全保障を確保し、BRICS諸国と世界全体での飢餓と貧困の根絶につなげていく考えを示した。その中で、小規模農家への支援、公正な価格の保証、持続可能でレジリエントな農業バリューチェーンの育成を柱とした。国家食糧備蓄制度や価格安定メカニズムとしての「BRICS穀物取引所」の構築検討も継続する。
外交・安全保障面ではG7への対抗姿勢を鮮明にした。まず、イランに対する軍事攻撃を、国際法と国連憲章の違反に相当するとして非難。パレスチナのガザ地区に対するイスラエルの継続的な攻撃の再開と、人道支援の地域への入域妨害にも懸念を表明した。シリアについては、シリアの主権、独立、統一、領土の不可侵性を再確認し、シリア主導でシリアが所有し、国連が仲介する政治プロセスを支持した。「アフリカの課題はアフリカで解決する」という原則も再確認した。ロシアのブリャンスク州、クルスク州、ヴォロネジ州の各地域で民間人を意図的に標的とした橋や鉄道インフラに対する攻撃が行われたことにも強い非難を示した。ウクライナ戦争については、対話と外交を通じた紛争の平和的解決を支持した。
【参照ページ】BRICS Summit Signs Historic Commitment in Rio for More Inclusive and Sustainable Governance
【参照ページ】BRICS leaders take global lead on fair climate finance in historic Rio declaration
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