
欧州委員会は7月8日、「化学産業アクションプラン」を発表。エネルギーコストの高騰、不公正な国際競争、需要の低迷等の主要な課題に対応しつつ、イノベーションとサステナビリティへの投資を促進することを掲げた。
今回のアクションプランは、3月に発表された自動車産業、鉄鋼・金属に続く産業別政策の第3弾。EUの化学業界は、企業2万9,000社、従業員数120万人、サプライチェーン全体での従業員数1,900万人を抱え、製造業の中で4番目の規模を持つ。
【参考】【EU】欧州委、自動車産業アクションプラン発表。自動運転開発やEV導入促進を強化(2025年3月6日)
【参考】【EU】欧州委、鉄鋼・金属アクションプラン発表。系統コスト引下げやリサイクル促進等(2025年3月23日)
まず規制の緩和では、化学品、化粧品、肥料を対象とした「第6次簡素化オムニバス」を採択。まず、有害化学物質の表示を規定するCLP規則に関し、ラベル表示の柔軟性を拡大。化粧品規則の簡素化では、化学物質の健康リスク観点での有害化学物質規制の内容を明確化し、わかりやすくする。肥料製品規則の簡素化では、要件をREACH規則に一致させることで、事務負担を減らす。これらの措置により、化学業界全体で、年間3億6,300万ユーロ以上のコスト削減が可能になるという。
同時に、欧州化学庁(ECHA)基本規則も改正する。ECHAの人員や予算を強化し、2007年の発足以降拡大してきた役割を十分に遂行できるようにする。これにより、ラベル分類・表示、生物由来製品、有害化学物質の輸入・輸出、廃棄物管理、水質管理等の行政能力を強化する。
エネルギーコスト及び原料コストの削減では、欧州委員会が2月に発表したアフォーダブル・エネルギー・アクションプランを迅速に実施するとともに、低炭素水素に関する明確なルールを導入。2025年末までに化学メーカーの電気料金を削減するため、EU加盟国補助金の在り方も見直す。さらに、再生可能エネルギー支援と並行し、回収炭素、バイオマス、廃棄物等のクリーンな炭素源の活用を促進する。
その一環として、使い捨てプラスチック製飲料容器に含まれる再生プラスチックの割合を計算・検証・報告するためのEU統一ルールも定める。今回示した案では、「再生プラスチック」は、消費者使用済み(PCR)プラスチック廃棄物から再生されたものに限定。容器本体だけでなく、キャップ、ラベル、スリーブも含めて再生プラスチック含有量を計算することも必須とする。PETボトルとそれ以外は別々に報告することを求める。
同案では、ケミカルリサイクルでは、マスバランス方式を採用することも決定。但し、異なる施設間での再生材配分は認められない。再生材が燃料になる場合、再生材とはみなされない。飲料容器を販売する事業者は、再生プラスチックの割合に関する証明書(デクラレーション)を第三者検証を受けた上で発行し、5年間保存する義務も負う。統一ルール案に対するパブリックコメントを8月19日まで受け付ける。
公正な競争環境の整備では、EU加盟国及びステークホルダーと協力し、生産能力減少リスクに対応するための「重要化学品同盟」を設立。政策支援が必要な重要な生産拠点を特定し、サプライチェーンの依存関係や偏り等の通商問題を協議する。さらに、経済安全保障の観点から、既存の輸入監視タスクフォースを通じ、化学品の輸入監視を拡大。
PFAS(ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物)に関する措置では、科学的根拠に基づく厳格な制限を導入するコミットメントを再確認した。イノベーションへの投資を促進し、汚染者負担原則に基づく汚染対策を進め、より安全な代替品の開発を優先する。その上で、代替品が利用できない場合には、ECHAの勧告を踏まえ、厳格な条件下で継続使用できるルールを検討する。
その他のサステナビリティ向上では、クリーン化学品の需要を促進するための財政的インセンティブと税制措置を引き続き進める。具体的には、現在立法中の産業脱炭素化加速法により、支援対象となるEU域内原材料基準とサステナビリティ基準の要件を設定。欧州委員会で現在策定中のバイオエコノミー戦略とサーキュラーエコノミー法では、省エネ及び化学品のリサイクルを強化し、化石由来の原料の代替となるバイオ由来やリサイクル素材の市場を拡大する。
【参照ページ】Commission strengthens Europe's chemical industry
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