HVO(水素化処理植物油)
HVO(水素化処理植物油)は、植物油や廃食油と水素を高温高圧で反応(水素化処理)させて得られる合成燃料。再生可能ディーゼルとも呼ばれ、石油由来の軽油とほぼ同等の性質を持つため、品質が極めて安定しているのが特徴。
HVOの主な利用用途とメリット
輸送用トラック、フォークリフト等の構内運搬車、建機、船舶、自家発電機や非常用発電機等の軽油を燃料とするすべてのディーゼルエンジンで利用可能。
これはHVOが軽油とほぼ同じ成分であり、既存設備を改造せずにそのまま使用できるドロップイン型燃料である。多額の設備投資を必要とせず、温室効果ガス(GHG)排出量の削減に着手することができる。
GHG排出量の削減量は、原料の生産から燃焼までのライフサイクル全体で評価した場合、従来の軽油と比較して最大90%程度削減することが可能。企業の直接排出量を示す温室効果ガス排出量スコープ1の削減に大きく貢献できる。
また、従来のバイオディーゼル(FAME)と異なり、酸化や劣化、低温環境下に強く、軽油と同様に長期保存が可能であるため、BCP対策用の非常用発電機としての燃料としても使用可能。また、硫黄分を含まないため、PM(粒子状物質)の排出が少なくクリーンである。
HVOの課題
HVOの国内供給体制は発展途上である。ENEOSホールディングス傘下のENEOS、コスモ石油、出光興産、太陽石油等の持続可能な航空燃料(SAF)プラントからの連産品として今後HVOの生産が期待されている。
その他の取り組み事例としては、ユーグレナ等9社が2025年2月から8月まで新規HVO混合燃料の開発及びサプライチェーン構築とその社会実装に関する取り組みを開始。これは東京都の「新エネルギー推進に係る技術開発支援事業」に採択された。
海外製品の輸入では、ユーグレナがエコセレス等の海外製品を輸入し、日本の軽油規格や顧客要求に合わせた品質調製を行ったうえで、次世代バイオディーゼル燃料「サステオ」として、日本市場に供給している。
コスト観点では、市場価格はFAMEの約2倍、軽油の3倍から5倍程度。また、グリーンウォッシュを回避するため、原料の持続可能性の担保が重要となる。導入を検討する場合には、サプライチェーンの透明性等が保証されたISCC認証等を取得しているかが重要な選定指標となる。
また、HVOはJIS規格上の取り扱いが決まっていない。軽油に高濃度で混合する際の品質管理が規定できない状況にある。関連税制も未定義のため、軽油と混合した不正軽油とみなされるリスクもあり流通が制限されている。
HVOの将来性と市場動向
国際エネルギー機関(IEA)によれば、液体燃料輸送需要全体に占めるHVOを含むバイオ燃料の割合は、2023年の5.6%から2030年には6.4%に拡大する見通し。国別の需要では、米国、欧州、ブラジル、インドネシア、インドに集中しており、全体の85%を占めている。これらの地域では、バイオ燃料導入を支援するためのGHG排出量原単位目標、財政的インセンティブを強化している。
用途別の需要では、2030年までに航空及び海運が新規バイオ燃料需要の75%以上を占める予測。道路用バイオ燃料の年間需要の伸びは鈍化し、2030年までに0.3%に低下する見込み。EVの普及と燃費効率の向上により、世界的に燃料需要の減少が予測されている。
【参照ページ】東京都の「新エネルギー推進に係る技術開発支援事業」に「新規HVO混合燃料の開発及びサプライチェーン構築とその社会実装」が採択されました
【参照ページ】EcoCeres社とユーグレナ社 日本における持続可能な航空燃料(SAF)と次世代バイオディーゼル燃料(HVO)の普及促進に関する基本合意書を締結
【参照ページ】バイオディーゼルに関する国内外の動向について
【参照ページ】Renewables 2024 Renewable fuels
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