風力発電国際業界団体の世界風力会議(GWEC)は3月27日、風力発電に関する年次報告書「Global Offshore Wind Report 2023」を発行した。2022年の風力発電の新規設備容量は過去3番目となる78GWで、合計906GWにまで伸長。課題としてサプライチェーンを挙げた。
風力発電の新規設備容量は、2020年が95.3GW、2021年が93.6GW、2022年が77.6GW。そのうち洋上風力は、2020年が6.9GW、2021年が21.1GW、2022年が8.8GW。
国別では、中国が陸上32.6GW、洋上が5.1GWで合計37.7GWあり、全体の半分弱を占める。欧州全体では陸上で16.7GW、洋上で2.5GW。米国は陸上が8.6GW、洋上ゼロ。ブラジルが陸上4.1GW、洋上ゼロ。アジアでは中国に次いでインドが多く、陸上1.8GW、洋上ゼロ。日本は陸上0.15GW、洋上0.08GWと極めて小さい。
GWECは、今後の予測として、2023年に新規設備容量が史上初めて100GWを超え、2027年まで年率15%で増加するとした。2027年には全体157GW、洋上36GW、2023年から2027年までの累計では680GWと見立てた。また今回、今後の市場見通しで有望度を3段階で色分けした。最高の「緑」は、米国、中国、EU、英国、インド、ブラジル、ウルグアイ、オーストラリア、サウジアラビア、エジプト、モロッコとした。中程度の「黄色」は、日本、韓国、台湾、ベトナム、フィリピン、カナダ、モンゴル、コロンビア、チリ、南アフリカ、アルジェリア、ケニア、カザフスタン等。
現状の課題としては、中国に偏在するサプライチェーンを挙げた。風力発電の本体となるナセルでは中国生産シェアが60%、ブレードでも60%、ギアボックスでは75%を占める。またレアアース採掘でも中国が68%、レアアース加工では94%が中国。2025年から2030年にかけては、重要パーツの供給がボトルネックになると指摘した。そのため、特に北米や欧州では今後の需要増ともに、域内でのサプライチェーンを強化すべきと提言した。
GWECは3月14日、アルゼンチン、コロンビア、インドネシア、エジプト、モロッコの5カ国を例に、風力発電が地域経済や雇用創出に大きく貢献することを示すレポートも発表している。今後5年間で、新規設備容量3.5GW、経済付加価値1,250億米ドル、フルタイム労働が13万人年創出できるとした。
【参照ページ】Policymakers must act now to avoid supply chain challenges stalling record years of new wind energy capacity 【参照ページ】Capturing Economic Opportunities from Wind Power in Developing Economies