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【中国】ウォルマート、食品安全研究センターを設立。ブロックチェーン活用の流通追跡システムも

walmart

 小売世界最大手ウォルマートは10月19日、中国・北京に「ウォルマート食品安全協働センター(Walmart Food Safety Collaboration Center)」を設立したことを発表した。同センターは、中国で以前から問題となっている食品の安全性に関する分野を他の企業や機関とともに研究をしていくための施設。食品の安全性を確保するためのサプライチェーン体制や、食品由来の病気に関する研究を進めていく。既に中国の現地食品企業との共同プロジェクトの立ち上げも行った。さらに、ウォルマートとウォルマート財団は、中国の食品安全性の応用研究、教育、コミュニケーションの分野に今後5年間で2,500万米ドル(約26億円)を投資することも発表した。これらの発表は、北京で開催されたイベントにてウォルマートのダグ・マクミロンCEOが直接会場で行った。

 それに続き、ウォルマート、IBM、清華大学の3者は同日、中国全土での食品の流通、販売をトラッキング(追跡)するためのシステムを共同開発していくことを発表した。トラッキングにより流通を可視化していくことで、食品の安全性を高める仕組みを検討する。トラッキングシステムには、フィンテック分野での応用が始まり話題を読んでいる「ブロックチェーン」の技術が用いられる。ブロックチェーンは、データ改竄ができない手法で記録を永久に保持していくことができるため、従来の書類ベースのトラッキングや検査などより高いトレーサビリティ能力が期待されている。新システムでは、ブロックチェーンに、農作物生産者情報、出荷個数、工場での加工情報、消費期限、保管温度、輸送情報などが記録され、流通過程や小売企業にとって大きなデータの可視化につながり、問題が起きたときの原因究明も容易になる。

 ウォルマートは現在、巨大な中国市場を攻略しようと相次いで手を打っている。ウォルマートは1996年に中国に初進出したが、現地の商品ニーズなどを捉えきれず苦戦を強いられてきた。2011年には、現地のオンラインスーパーYihaodian(1号店)の株式を取得し、中国での宅配事業に参入したが、Yihaodianの当初からのシェアが高くなく、成功できていなかった。そのため、今年6月、同社は中国Eコマース市場で巨人アリババに次ぐシェアを持つJD(京東商城)との戦略的提携を発表、Yihaodianの株式をJDに売却するのと引き換えに、JDの普通株式5.9%(議決権は5%)を取得し、JDの大株主となた。両者は多くの共同施策を発表しており、ウォルマートの会員制小売店であるSam’s Club China(山姆会員商店)をJD上に旗艦店を設置、JDのO2Oクラウドソーシング型配達プラットフォームの「Dada」上でもウォルマートの中国ストアを優先小売店舗として取扱うことを開始した。

 今回の「食品安全協働センター」の設置も、このような中国小売市場とEコマース市場攻略に向けた布石と言える。中国の消費者の中でも、食品の安全性に対する意識は高まってきており、安全な食品の提供という分野でブランドを確立していきたい様子だ。この発表の前の10月5日、ウォルマートはJDの持ち株比率を5%から10.8%に上昇させたことを発表。さらに10月20日には、ウォルマートは、JDとDadaの合弁企業である「New Dada」社に追加で5,000万米ドル(約52億円)の投資を行い、資本参加することを発表。New Dadaのシステムとネットワークを活用し、中国のウォルマート店舗から半径3km圏内で、注文から2時間以内の宅配サービスを実現させる。

 物流網がまだ未整備の中国では、Eコマース市場は物流が鍵を握ると言われており、Eコマース首位のアリババも物流構築に戦略の重点を置いている。今後ウォルマートが経営に加わるNew Dada社が運営するオンデマンド物流プラットフォームの「Dada」では、現在中国の300主要都市をカバーし、小売企業50万社と配送業者社がこのプラットフォームを活用している。繁忙期の日次配送量は200万個を超える。また、New Dada社の日用品O2OEコマースプラットフォームである「JD Daojia(京東到家)」では、地域の小売店3万店とパートナーシップを結び、中国18都市25万人以上に日用品や医薬品などを配送している。

 ウォルマートとJDが10月に具体的な提携内容を発表したことは、中国での一大的なセール・イベントである11月11日「独身の日(光棍節)」に照準を合わせたものと見られている。アリババは昨年の独身の日に、この1日だけで売上912億元(約1兆7000億円)を達成しており、今年も活況が予想されている。中国を戦略的市場と位置づけたウォルマートは、サステナビリティ戦略を事業戦略に融合させ、激しい市場競争を勝ち抜こうとしている。

【参照ページ】Walmart, IBM and Tsinghua University Explore the Use of Blockchain to Help Bring Safer Food to Dinner Tables Across China
【参照ページ】http://www-03.ibm.com/press/us/en/pressrelease/50816.wss
【参照ページ】Walmart and JD.com Announce Strategic Alliance to Serve Consumers across China
【参考ページ】Wal-Mart to Invest $25 Million in China Food Safety Research

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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