今、世界では約30億人が魚介類を主要な蛋白源としており、約2億6千万人の人々が漁業関連の仕事で生計を立てている。食料と仕事の確保だけでなく、漁業関連市場は世界のGDPに占める割合も大きいものの、乱獲の影響などにより漁業を取り巻く経済の将来の見通しは暗いという見方が大半だった。
しかし、将来像はそんなに悲惨でもないようだ。6月4日に米国のEnvironmental Defense Fund(環境保護基金、以下EDF)がカルフォルニア大学サンタバーバラ校、ワシントン大学の研究者らと公表した研究結果"The Potential For Global Fish Recovery"によると、世界がもし「持続可能な漁業」へと転換することができれば、漁業セクターは現在との比較で今後10年以内に年間510億米ドル(115%)もの増益を期待できるという。さらに2050年までには年間740億米ドル(168%)の増益が見込まれるとのことだ。
逆に、もし持続可能な漁業への転換を実行せず、現状のまま乱獲を続けるならば、海洋資源の状況は悪化の一途をたどることになる。この現状維持シナリオと持続可能な漁業へ転換した際のシナリオを比較するとギャップは更に大きくなり、後者のシナリオを実現できた場合、野生の魚類を年間で1700万トン増加させ、利益を年間900億米ドル増やすことができるとしている。
この「上昇」モデルは世界の漁獲量の77%に相当する約4300の漁業関連企業からのデータに基づく研究結果で、回復の選択肢、推定される利益、タイミングなどに関する情報を提供している。最終的な研究結果は今夏に発表される予定だ。
EDFは「持続可能な漁業」の具体的な方策として、乱獲防止のための政策、漁業資源が減少した際の対策、違法漁業に対する法的措置などを挙げている。このまま短期的な利益を重視して乱獲を進め、漁業経済を縮小させるのか、それとも持続可能な漁業への転換により長期的な利益を増やすのか、どちらを選択するかで将来の漁業と人々の生活は大きく変化することになる。
【レポートダウンロード】The Potential For Global Fish Recovery
【参照リリース】Upside-Model Report: The Potential for Global Fish Recovery
【団体サイト】Environmental Defence Fund
(※写真提供:jethuynh / Shutterstock.com)
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