世界銀行は10月19日、気候変動対策の肝となる世界規模の適正なカーボン・プライシング(炭素価格付け)に向けて、国家や都市・州、大手企業のリーダーらによる史上最大規模の連携が実現したと発表した。連携を呼びかけたのは世界銀行のカーボン・プライシング・パネルで、各国や企業のリーダーらはパリで行われる国際気候変動会議に先立ち更なる迅速な行動が取られることを要望するとともに、温暖化を招く炭素が危険な水準に達しないよう炭素に価格を設定し、生産的で競争力のある低炭素型のグローバル経済の実現を目指すよう呼びかけている。
本パネルはOECD事務総長アンヘル・グリア氏の協力の元、世界銀行総裁ジム・ヨン・キム氏、世界通貨基金専務理事クリスティーヌ・ラガルド氏により招集されたもので、ドイツ首相アンゲラ・メルケル氏、チリ大統領ミチェル・バチェレ氏、フランス大統領、フランソワ・ホランド氏、エチオピア首相ハイレマリアム・デサレン氏、フィリピン大統領ベニグノ・アキノ3世、メキシコ大統領エンリケ・ペニャ・ニエト氏、カリフォルニア州知事ジェリー・ブラウン氏、リオデジャネイロ市長エドゥアルド・パエ ス氏が参加している。
また、民間企業からは米国機関投資家のCalPERS、フランスのENGIE、インドのマヒンドラ・グループ、オランダの化学メーカーロイヤルDMSが参加している。これらの企業は11月末に発足予定のCarbon Pricing Leadership Coalition(炭素価格リーダーシップ連合)を通じ、産業界と政策レベルの連携を支援する。
世界銀行総裁のジム・ヨン・キム氏は「炭素の価格設定に向けてこれほどまでの世界的な動きがなされたことはない。低炭素型成長に必要な経済システムに関する議論から、雇用創出やクリーンな成長、繁栄のために政策や価格メカニズムの実行段階へと移る転換点となる」と語る。
また、国際通貨基金の専務理事クリスティーヌ・ラガルド氏は「各国財務省は、労働や資本に対する課税から炭素燃料に対する課税に切りけることを考える必要があり、炭素税導入に向けた評価を実施してほしい」としている。
現在世界では約40か国と23の都市が排出量取引制度や炭素税などカーボン・プライシングを実施しており、世界の排出量の約12%をカバーしている。既に実行されているもしくは計画中のカーボン・プライシング制度の数は2012年以降約倍増しており、その市場規模はおよそ500億米ドルに達する。
日本でも東京都をはじめ低炭素社会に向けた制度が整いつつある一方、ドイツの環境NGO、Germanwatchが毎年発表しているClimate Change Performance Indexでは、日本の温暖化対策の取り組みは61ヶ国の中53位 となっており、非常に厳しい状況だ。日本がこの分野におけるリーダーシップを発揮できるよう期待したい。
【参考サイト】Carbon Pricing Panel
【参照リリース】Leaders Unite in Calling for a Price on Carbon Ahead of Paris Climate Talks
【団体サイト】World Bank
【団体サイト】IMF
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