畜産動物の愛護(farm animal welfare)に関する食品関連企業のコミットメントを促進し、諸課題への取り組みを評価するベンチマークを発表しているBBFAW(Business Benchmark on Farm Animal Welfare)は5月23日、世界初となる畜産動物の愛護についての投資家宣言に、英アビバ・インベスターズ、仏BNPパリバ、英コラーキャピタル、蘭Robeco、英スタンダード・ライフ・インベストメンツ等、合計1.5兆ポンドを運用する機関投資家18社が署名したと発表した。
宣言文書では、畜産動物の愛護が食品分野への長期の投資にとって価値を左右する重要な課題だという観点から、投資家に対して食品会社への投資を判断する際に動物愛護を考慮することを求めるとともに、事業会社に対して畜産動物の取り扱いに高いレベルの基準を課すよう推奨している。また、企業および投資家に対して、同団体が提供するベンチマークBBFAWを、畜産動物の愛護という課題に取り組む際のフレームワーク(枠組み)とするよう求めている。
BBFAWは、英国の動物愛護関連NGO、Compassion in World FarmingとWorld Animal Protection、Coller Capitalの3者が運営。毎年8月から9月にかけ、世界の主要な食品関連企業(小売業者・卸売業者・食料生産業者・食品製造業者そしてレストラン等の外食業者)の畜産動物の愛護への取組状況を評価する行い、翌年1月に結果を公表している。
ベンチマークでの評価対象としては、
(1)運営・管理上のコミットメントと方針(34%):全体的な状況に関する調査項目に加え、畜産動物が閉鎖された飼育環境にあるかや長距離輸送を行っているか等の具体的な項目も含まれる
(2)ガバナンスとマネジメント(41%):監督の方法や目標、サプライチェーンの管理監督や実践に関するリポート
(3)リーダーシップとイノベーション(15%):畜産動物に関する調査や改善の方策、顧客の信頼度(満足度)の向上等
(4)業績の報告(10%):サプライチェーンにおける畜産動物の拘束や屠殺の状況、輸送等に関する業績の報告
という4分野にわたる項目が設定されている。
結果は上位から「リーダーシップ:全体の80%超の得点」、「事業戦略での重要な部分を占めている:62~80%」、「取り組みが定着しているが不十分:44~61%」等の6段階にランク付けされる。昨年の評価(今年1月に公表)では参加企業90社の内、最上位として評価されたのはスイスのコープ・グループと、いずれも英国のマークす&スペンサー、ウエイトローズ、ノーブルフーズの4社。2番目のカテゴリーには英国のユニリーバ、セインズベリー、米国のマクドナルド等、7社が挙げられている。5回目となる今年は、参加企業が100社になる予定で、調査項目の内、業績に関する項目に重みづけがなされる。
今回発表された投資家たちの宣言文では、「我々はBBFAWの発展を歓迎する。当ベンチマークは信頼性と透明性があり、かつ他からの拘束を受けない(独立した)ツールであり、畜産動物の愛護という課題についての企業の方針、実践、業績の質を査定するのに有用だ。そして食品分野すべてにわたる畜産動物愛護に関する情報開示の向上につながる重要なツールだと考えている」という記述がなされた。
畜産動物個々の生命を尊重するという視点は、これまで企業より消費者の方が先行してきている。
【参照ページ】First Global Investor Statement on Farm Animal Welfare launched
【宣言文】Investor Statement on Farm Animal Welfare
【ベンチマーク】The Business Benchmark on Farm Animal Welfare 2015 Report
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