運用会社米大手のTIAAグローバル・アセット・マネジメント(TIAA)は5月31日、米国での責任投資に関する調査結果を発表した。TIAAは、1918年に大学教授の年金資産運用を行う機関として設立され、現在では教育関係者、宗教団体、慈善活動家を含む幅広い富裕個人資産の運用に従事、運用資産額では全米でも指折りの運用機関となっている。今回の調査は、全米の富裕個人投資家とファイナンシャル・プランナーの双方対象に行われた。米国の富裕個人投資家の77%は保有資産を通じ社会にプラスの影響を与えたいと考えていることが明らかとなる一方、米国での責任投資の基本的課題が浮かび上がってきた。
調査によると、富裕個人投資家のうち74%は、社会にプラスの影響を与える投資を通じて高いリターンを上げられると説明するファイナンシャル・プランナーから助言を得たいと考えている。また、65%は、責任投資について議論できるアドバイザーを選び続けたいとしている。一方ファイナンシャル・プランナー側の状況では、36%のファイナンシャル・プランナーは、責任投資のパフォーマンスを的確に評価できないと回答した。結果、45%のファイナンシャル・プランナーは、投資家に対して責任投資の選択肢を話さなかったとし、また61%の投資家は、ファイナンシャル・プランナーから過去1年間に責任投資の話題が出なかったと答えている。この両者の間のギャップについて、TIAAのAmy O’Brien責任投資チーム・マネージングディレクターは、「責任投資が成長している一方で、個人投資家とファイナンシャル・プランナーは未だポートフォリオへの反映の仕方が分からないでいる。」と語る。
今回の調査からは、責任投資に関する誤解も明確に表れた。責任投資への関心が高い一方で、51%のファイナンシャル・プランナーは、責任投資は通常の投資に比べリターンが低いと考えており、25%の富裕投資家とアドバイザーは、責任投資はポートフォリオ選択の幅を小さくするのではないかと疑問を持っていることも明らかとなった。この誤解は、責任投資に対する教育や理解が進んでいない実態も表しており、74%のファイナンシャル・プランナーは、責任投資についてもっと学び、顧客により良いサービスを提供したいと回答した。
米国では、資産を預金ではなく金融資産として保有する割合が多く、個人経営を行うファイナンシャル・プランナーは主要な職業として普及しており、従事者の数も多い。そのため、責任投資という手法に対する正しい理解が、ファイナンシャル・プランナー全体に行き届くまでには時間を要する。ESG投資に関する商品が増加しているのに対し、個人投資家にその商品を届ける仲介者である、ファイナンシャル・プランナーへの啓蒙活動が必要である実態が浮き彫りとなった。
【参照ページ】Investors and Their Financial Advisors Need More Education, More Communication about Responsible Investments
【企業サイト】TIAA Global Asset Management
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