ケンブリッジ大学の投資関連諮問委員会が今年5月に発表した答申書が物議を醸している。ケンブリッジ大学では、気候変動に大きな関心を寄せる学生や教授陣らが大学当局に対して化石燃料全体からのダイベストメントを要求していたのに対し、諮問委員会の答申書では、大学当局に対してダイベストメントを要求せず、むしろ株式を保有したままでの化石燃料企業への対話(エンゲージメント)を促す内容となっていたためだ。ダイベストメントを求める嘆願書には2,000人以上の署名が集まっていた。学生たちは、この決定に納得せず、非難の声を挙げている。
ケンブリッジ大学では、嘆願書が集まったことを受け、規定に基づき「慈善・渉外・法務に関する諮問委員会」に案件を付託、諮問委員会が嘆願に関する答申書を作成していた。諮問委員会は、2008年に大学が制定した「投資責任宣言」の内容や、大学としての使命・倫理、英国法など幅広い観点から、今回の案件を精査。結果、市民社会との幅広い接点が大学の使命であるとの観点から、投資先企業とのエンゲージメントを重視する考えをまとめた。そのため、答申書に記載された大学への推薦事項として、ESG観点の重視、ファンドマネージャーへの積極的な働きかけが盛り込まれた。
また、答申書によると、現在、ケンブリッジ大学は、環境被害が大きいとされるタールサンドや石炭に対する直接的投資はなく、運用会社に一任しているポートフォリオにおいても、タールサンドへの投資はなく、燃料炭への投資は微々たるものだという。答申書は、タールサンドや燃料炭に対しては今後も大学が投資をすることは極めて少ないとまとめた。
ダイベストメントこそが気候変動への解決策だと考える学生たちは、石油・ガス企業が気候変動を悪化させる活動から大きな利益を挙げていると指摘し、大学当局がダイベストメントをしなければそれに加担することになると主張している。学生たちは引き続き活動を続けていく考えだ。
【参照ページ】Cambridge University draws criticism for not divesting from oil and gas industries
【答申書】REPORT OF THE WORKING GROUP ON INVESTMENT RESPONSIBILITY
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