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【国際】電気自動車バッテリー原料のリチウム・コバルトが抱える価格高騰リスク。英研究所分析

 英国王立国際問題研究所の研究機関、ホフマンセンターの研究者Daniel Quiggin氏は、この程、電気自動車(EV)の推進に欠かせないリチウムとコバルトの価格動向を分析し発表した。国際的に電気自動車推進の風が吹く中、リチウムイオンバッテリーのリサイクルフローを確立していく必要があるという。

 中国政府は全自動車メーカーに対し、来年までにEVの売り上げを全車の8%、2020年までに12%にするよう要請。インドでも2030年までにはEVのみを販売すると公約している。また欧州では、英国、フランス、ドイツ、オランダが、2040年までに全てのディーゼル車とガソリン車の販売を禁止する方向で検討を進めている。

 一方、EVの普及に欠かせないのが、ガソリン車やディーゼル車と少なくとも同等のコストと製造できる体制だ。2016年のEVの販売額は55%増加し、従来車の伸び率の20倍となったが、価格面では、例えばテスラのモデル3は35,000米ドルと高く、中型車の購入を希望する消費者の予算を遥かに超えている。

 EVの価格低減の鍵を握るのが、バッテリー価格だ。リチウムを原材料とするリチウムイオンバッテリーの価格は、製造技術の改善により、過去6年間で4分の3にまで下がり、現在はkW当たり273米ドルが相場だという。従来車と同等のパリティ(等価)を実現するには、リチウムイオンバッテリーの価格がkW当たり100米ドルとなる必要があると言われているが、今後10年でこの水準は達成すると見通されている。テスラによると、6カ月前にコンサルティング世界大手マッキンゼーが予測した2020年の予想価格基準は、すでにモデル3で達成されたという。2020年までに製造能力が6倍になると、リチウムイオンバッテリーの価格はさらに30%下落する可能性との予測もある。

 一方で、リチウムイオンバッテリーの価格動向には、原材料となるリチウムの価格高騰の影がつきまとう。過去2年間でリチウム価格は2倍に高騰。リチウムは供給が落ち込んでいくことが予測されている一方、需要が急増することで需給は非常に逼迫するとの見方も根強い。リチウム資源の採掘は、世界的に寡占状態にあるため不透明性が高いことも価格高騰の一因。採掘世界最大手アルベマールの株価は、2015年9月以来、3倍に高騰しており、中国企業がオーストラリアのリチウム鉱山を、11カ月前の水準に比べ2,000倍もの価格で購入したという事態も生まれているという。
 
 EVバッテリーとして使用されるコバルトも同様の傾向にある。投資ファンドの中には、コバルトの備蓄に対して年間20%の成長予測を立てているところもある。2015年から2017年の間に、リチウム価格が2倍以上に上がり、同様にコバルトも60%上昇した。コバルトの多くは、銅やニッケル採掘時に副産物として採掘されるため、供給量の予測が難しい。また、世界のコバルト採掘の約半分は、紛争の多いコンゴ民主共和国で生産されている点もリスク要因。中国は、コバルト輸入の約80%を同国に依存しており、2016年に中国企業は同国のテンケ・フングルメ(Tenke Fungurume)鉱山を購入している。コンゴ民主共和国での採掘が不安定になれば、コバルト価格が上昇する大きな原因となる。

 Daniel Quiggin氏は、EVの価格低減の方策として、リチウムイオンバッテリーの生産効率の向上と、バッテリーリサイクルを挙げている。生産効率向上策としては、産学連携を提示した。揮発性の高いリチウムイオンバッテリーは、資源回収が進んでおらず、現在回収率は約5%ほど。さらに、低濃度のリチウムはリサイクル資源からの材料回収が難しく、再利用は1%未満に留まっている。今後、リサイクルからの材料回収向上のための研究開発も不可欠だとした。また、リチウムやコバルトに依存しない、金属空気電池にも期待を寄せた。
 
【参照ページ】Scrapping the combustion engine: the metals critical to success of EVs

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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