環境NGOのグリーンピース・東アジアは5月23日、台湾水産商社大手の豊群(Fong Chun Formosa Fishery Company:FCF)を含む、台湾の企業や漁業関係者が関わる人権侵害を示した報告書「Misery at Sea(海上の悲惨)」を発表した。台湾政府が人身売買と労働虐待への適切な対処を怠っている実態を明らかにした。FCFは、静岡県に同社子会社豊群インターナショナル(FCN)があり、同社も関与が指摘されている。
今回発表された報告書によると、台湾とニュージーランドの調査員が、有罪判決を受けた人身取引売買組織「ジャイアント・オーシャン」に関わる5人が、台湾に公然と住んでいることを発見。逃亡者の身ながら、このうち数人は台湾の漁船向けに、主に東南アジアからの移住労働者の人材斡旋に引き続き関与している。台湾当局は、この実態を完全に把握しているにも拘らず、黙認しているという。
さらに、台湾人労働組合の宜蘭縣漁工職業工會(Yilan Migrant Fishermen Union(YMFU)が提供した証拠により、不審死を遂げたインドネシア人青年乗組員スプリヤント氏の死に関する新たな画像と動画による証拠を追跡。同氏は、台湾漁船「Fu Tsz Chiun」での勤務開始わずか4ヶ月後に亡くなった。同氏が虐待されていたこを示す画像があるにもかかわらず、台湾当局は本件を適切に調査せず不起訴処分を下したという。同氏の状態が悪化した日や死亡直後の日も含めて、Fu Tsz Chiunが漁を続けていたことが衛星データからも示された。一方、台湾漁業局は、スプリヤント氏は病気で亡くなったと主張している。
また、バヌアツ籍船で台湾人所有の漁船「Tunago61号」の船長が2016年に殺害された事件では、有罪判決を受けた乗組員6人を対象とした聞き取り調査によって事実関係が解明された。船長の殺害に至るまでの数カ月間、乗務員たちは1日20時間、週7日働くことを頻繁に強要され、身体的な暴力と言葉による暴力を受けていた。睡眠時間も削られ、十分な食事も与えられずに、命が脅かされる日々を送っていたとグリーンピースの調査員に語ったという。
今回の報告書は、違法・無報告・無規制(IUU)の漁業、人権侵害および労働者への虐待が日常的に行われる土壌となっている台湾の低コストビジネスモデルと、法および規制の枠組みにおける不備が常態化している状況を映し出している。台湾政府も、国際基準に反するIUU漁業への対策が不十分だとして、2015年にEUの「イエローカード」警告を受けた。2018年9月には、EU関係者が台湾の状況を再調査し、警告レベルを引き上げるかどうか決定することになっている。台湾政府は2017年初めに漁船乗組員保護の規制を強化したが、事態は改善していない模様。
グリーンピースのサプライチェーン分析によると、FCFとFCNは、東洋冷蔵、八洲水産 、伊藤忠商事、カネトモ、日本水産、丸文水産等が取引関係があるという。
【参照ページ】Taiwanese seafood giant linked to human rights violations – Greenpeace
【参照ページ】Regulations on the Authorization and Management of Overseas Employment of Foreign Crew Members
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