【金融】世界と日本のESG投資「GSIR 2018の結果」。日本のESG投資割合18.3%と大幅飛躍 2019/04/02 体系的に学ぶ

 世界のESG投資額の統計を集計している国際団体のGSIA(Global Sustainable Investment Alliance)は3月28日、ESG投資の統計報告書「Global Sustainable Investment Review(GSIR)」の2018年版統計を発表した。GSIAは、同報告書を2年に一度発行している。

 GSIAには現在、世界各地域のESG投資協会7団体が加盟。加盟団体は、米国のUSSIF、欧州のEurosif、英国のUKSIF、オランダのVBDO、カナダのRIA Canada、オーストラリアのRIAA、日本のJSIF(日本サステナブル投資フォーラム)。その中で、英国のUKSIFとオランダのVBDOは、欧州全体をカバーするEurosifの加盟団体であるため、報告書「GSIR」の発行は、米国のUSSIF、欧州のEurosif、カナダのRIA Canada、オーストラリアのRIAA、日本のJSIFの5団体が共同で作成している。いずれの地域協会も、関連機関投資家に調査票を送り、回収する形で情報収集をしている。

 また、南米では2013年にLatinSIFが組成されたが、まだ地域統計を収集できるまでには成長できていなし。中東アフリカ地域ではまだ地域協会が誕生していない。日本以外のアジア地域は、前回は国連責任投資原則(PRI)がデータ収集を担当したが、今回は実施されていない。

ESG投資の種類

 GSIAは、ESG投資を以下の7つに分類している。前の6つが投資ポートフォリオを作るためのESG投資の戦略。最後の「エンゲージメント・議決権行使型」は、投資前後の投資(候補)先企業へのエンゲージメントや議決権行使を積極的に行う、いわゆる「アクティビスト(物言う株主)」型の戦略。7つの戦略は重複しても用いられることも多く、特に前6つと「エンゲージメント・議決権行使型」は重複することが多い。

1. ネガティブスクリーニング(Negative/exclusionary screening)
 1920年代に米国のキリスト教系財団から始まった最も歴史の古い手法。今では欧州でも広く普及している。武器、ギャンブル、たばこ、アルコール、原子力発電、ポルノなど、倫理的でないと定義される特定セクターの企業を投資先から除外する戦略。

2. ポジティブスクリーニング(Positive/best-in-class screening)
 1990年代に欧州で始まった手法。同種の業界の中でESG関連の評価が最も高い企業に投資する戦略。ESG考慮の高い企業は中長期的に業績が高くなるという発想に基づく。ポジティブスクリーニングをすると、投資ユニバース(投資先企業リスト)が非常に小さくなると言われることもあり(一説では30%から70%小さくなる)、下の規範に基づくスクリーニングを推奨する専門家も少なくない。

3. 規範に基づくスクリーニング(Norms-based screening)
 2000年代に北欧で始まった比較的新しい手法。ESG分野での国際基準に照らし合わせ、その基準をクリアしていない企業を投資先リストから除外する手法。ポジティブスクリーニングに比べ投資ユニバースを大きくすることができると評価する専門家もいる。

4. ESGインテグレーション型(ESG integration)
 最も広く普及しつつある手法。投資先選定の過程で、従来考慮してきた財務情報だけでなく非財務情報も含めて分析をする戦略。特に年金基金など長期投資性向の強い資金を運用するファンドなどが、将来の事業リスクや競争力などを図る上で積極的に非財務情報(ESG情報)を活用し、アルファ(市場平均よりも大きなリターン)を目指すために用いられることが多い。

5. サステナビリティテーマ投資型(Sustainability-themed investing)
 サステナビリティを全面に謳ったファンドへの投資。サステナビリティ関連企業やプロジェクト(特に再生可能エネルギー、持続可能な農業等)に対する投資が有名。太陽光発電事業への投資ファンド、グリーンボンドなどもこのカテゴリーに属する。

6. インパクト投資型(Impact/community investing)
 社会・環境に貢献する技術やサービスを提供する企業に対して行う投資。比較的小規模の非上場企業への投資が多いため、このタイプのファンドの運用はベンチャーキャピタルが行っていることも多い。最近では個人投資家からも資金提供を募ることも増えてきた。インパクト投資の中で、社会的弱者や支援の手が行き届いていないコミュニティに対するものは、コミュニティ投資と呼ばれる。

7. エンゲージメント・議決権行使型(Corporate engagement and shareholder action)
 株主として企業に対してESGに関する案件に積極的に働きかける投資手法。株主総会での議決権行使、日常的な経営者へのエンゲージメント、情報開示要求などを通じて投資先企業に対してESGへの配慮を迫る。近年は、気候変動関連や役員報酬(SAY ON PAY)に対して声を上げることが多い。このタイプの手法をとる株主は「アクティビスト」「物言う株主」とも呼ばれる。

世界のESG投資額


(出所)GSIA “2018 Global Sustainable Investment Review”

 2016年から2018年までの2年間で、世界全体のESG投資額は34%増加し、30兆6,830億米ドル(約3,418兆円)となった。年平均(CAGR)にすると15.6%成長しました。過去の成長率では、2012年から2014年が61%成長、2014年から2016年が11.9%成長、2016年から2018年が15.6%成長と、一度鈍化した成長が再び加速した。

ESG投資が全体に占める割合


(出所)GSIA “2018 Global Sustainable Investment Review”

 今回の報告で目立つのは、日本の急成長。2014年時にはアジア全体に包括されておりデータがないが、前々回の2012年時には0.2%だったものが、2016年は3.4%にまで増加。そして今回、18.3%にまで一気に飛躍した。絶対額でも4,740億米ドルから2兆1,800億米ドルに増えた。背景には、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2015年にPRIに署名し、2017年からESG投資を開始したことにより、日本でESG投資が一気に広がったこと大きい。世界全体でのESG投資割合は26.3%から35.4%へと伸びた。

 他の地域でも、米国、カナダ、ニュージーランド・オーストラリアでもESG投資割合が増加。カナダも5割を超えた。欧州は、割合は下がっているが、絶対額では増えている。ESG投資ではないどのような手法が増えているかについては、報告書の中では説明がない。私見だが、オルタナティブ運用の成長に対し、オルタナティブでのESG投資割合がまだ高くないことが影響しているのではないかと考えられる。

各手法ごとのESG投資額


(出所)GSIA “2018 Global Sustainable Investment Review”

 手法別の統計では、歴史のある「ネガティブスクリーニング」が最多。次いで急成長している「ESGインテグレーション」。そして組み合わせで行われることの多い「エンゲージメント・議決権行使型」が3番目。


(出所)GSIA “2018 Global Sustainable Investment Review”

 前回比では、「規範に基づくスクリーニング」以外で伸びていることがわかる。絶対額が小さいため存在感が小さく見えるが、「サステナビリティテーマ投資型」は3.7倍、「インパクト投資型」も80%成長となった。サステナビリティテーマ投資型は、グリーンボンド・ファンドや低炭素投資ファンド、もしくはSDGsファンド等の影響が多いと言える。一方、「規範に基づくスクリーニング」は減少したが、スクリーニングだけでなく幅広くESGを顧慮する「ESGインテグレーション」や「ネガティブスクリーニング」に移行したと考えられる。

【報告書】Global Sustainable Investment Review 2016
【機関サイト】GISA
【参考】【金融】世界と日本のSRI・ESG投資最前線(2014年6月30日)
【参考】【金融】世界と日本のESG投資 〜Global Sustainable Investment Review 2016まとめ〜(2017年3月29日)

著者プロフィール

夫馬 賢治

株式会社ニューラル 代表取締役CEO

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