欧米主要機関投資家18機関が参加する低炭素経済推進イニシアチブ「Transition Pathway Initiative(TPI)」は2月3日、鉄鋼、アルミニウム、セメント、製紙の4業界の上場企業72社の二酸化炭素排出量削減目標を分析した結果を発表した。また、化学業界を加えた5業界の大手100社について、気候変動マネジメントの質についても分析した。
同イニシアチブは2017年1月発足。英国環境保護庁年金基金と英国国教会National Investing Bodiesが主導し、多くの機関投資家が参加。現在の運用資産総額は9.3兆米ドル(約1,030兆円)。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のグランサム研究所がバックアップしている。
今回分析の4業界は、工業からの二酸化炭素排出量の3分の2を占める。4業界の中で二酸化炭素排出量を開示している企業は、2018年の61%から76%に増加。特に中国とロシアの企業が開示するようになったことが大きい。一方、長期的な二酸化炭素排出量削減目標を設定している企業は2018年の5社から、14社に増えたが、依然として非常に20%にも満たない。
4業界の対象企業数の内訳は、鉄鋼24社、アルミニウム8社、セメント22社、製紙18社。その中で改善が大きかったのはセメント業界で、パリ協定に言及した二酸化炭素排出量削減を謳う企業は2018年の2社から5社に増加。製紙企業も10社がパリ協定に言及している。
鉄鋼業界は、パリ協定に言及する企業が24社中わずか6社と非常に少ない。マネジメントの質では2017年中旬の1.8から2.4に上がったものの、二酸化炭素排出量削減についてはアクションが進んでいなかった。マネジメントの質のスコアが最高のレベル4だったのは、韓国ポスコ、インドのJSW Steel、ルクセンブルクのアルセロール・ミタル、スウェーデンSSAB、ドイツのティッセンクルップ、オーストリアのフェストアルピーネ。日本企業では、日本製鐵とJFEホールディングスが、中国鋼鉄、現代製鉄、タタ・スチールと並びレベル3。神戸製鋼所と日鉄日新製鋼はレベル1で、評価企業内で最低だった。
アルミニウム業界は、日本軽金属がレベル3、三井物産とグローバル・アルミニウム・メジャーグループ(UACK)がレベル2と低く、レベル4を取得したアルコア、グレンコア、リオ・ティント、South32に及ばなかった。
セメント業界では、住友大阪セメントと太平洋セメントがレベル1で最低。最高のレベル4を取得した企業は4社あった。
製紙業界では、王子製紙がレベル3、日本製紙がレベル2、大王製紙と北越製紙がレベル1。最高のレベル4を取得した企業は4社あった。
化学業界は、5業界の中で最もマネジメントの質のスコアの平均が高く3.0。BASF、エア・リキード、EcoLabと並び、東レがレベル4を取得。旭化成と信越化学工業はレベル3だった。
【参照ページ】New research finds slow climate progress in high-emitting industries
【レポート】Management Quality and Carbon Performance of Industrials and Materials Companies: February 2020
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