インドのナレンドラ・モディは5月12日、テレビ記者会見の中で、新型コロナウイルス・パンデミック対策として、同国GDPの10%に相当する20兆ルピー(約28兆円)の経済復興予算を発表した。「大胆な改革を実施」「インドの世紀を実現する」と伝えた。続いて5月17日、ナーマラ・シサラマン財相は、具体的な予算の内容を発表した。
インドでは、外出禁止策(ロックダウン)が8週間も続いており、経済活動が停滞するとともに、移民労働者を含む1.4億人が失業する人道的な危機も生じている。3月の経済生産量は前年比で17%も減少し、4月と5月の統計はさらに落ち込むと見込み。新型コロナウイルス・パンデミックの感染者は9万人を超え、死者も2,800人を突破した。
財相の発表では、経済復興予算は5つの内容で構成。1つ目は、中小企業、ノンバンク債権者、給与所得者向けの支援策。中小企業向けではまず、無利子ローンを3兆ルピー(約4.2兆円)用意し、事業規模は45ルピー(約64兆円)。また、劣後融資2,000億ルピー(約2,400億円)、必要な場合には5,000億ルピー(約7,000億円)の出資も行う。国有企業等は、中小企業からの売掛金を45日間猶予する。
ノンバンク債権者に対しては、ノンバンク(NBFCs)、住宅金融会社(HFCs)、マイクロファイナンス機関(MFIs)の投資適格債を対象とした3,000億ルピー(約4,200億円)の流動性スキームを導入。全額インド政府の信用保証を付ける。さらに、ノンバンクに対しては4,500億ルピーの信用保証も付け、20%の損失まではインド政府が信用保証提供者となる。小売事業者には、売掛金総額9,000億ルピーまでは緊急融資を提供し、インド政府の信用保証を付ける。
給与所得者向けには、合計720万人が加盟している従業員積立基金(EPF)に対し、従業員からの保険料を3ヶ月間政府が肩代わりする。これで250億ルピーを拠出。また、10%から12%の保険料の減額措置も行う。源泉徴収額も2021年3月31日までは25%減額する5,000億ルピー規模の減税も打ち出した。
2つ目は、移民労働者、小規模農家、貧困層の社会的保護。約8,000万人いる移民労働者に対しては、2ヶ月毎に小麦または米を一人5kg、魚を1世帯1kgを支給。不動産会社にはコンセッション契約で政府助成金のインセンティブを付け、移民労働者向けの低額賃貸住宅を提供する。ストリートベンダーには500万円ルピーまでの融資を実施。部族コミュニティに対しては、林業や生態系保護の緊急雇用を提供する。小規模農家にも低利子融資を用意した。
施策の3つ目から5つ目は、全て産業政策。食品関連企業には、今後の危機に備え、インフラ増強で助成金を提供。農家についてはサプライチェーンの強靭化や透明性の強化で予算を付けた。石炭採掘では、海外産の依存度を下げ国産石炭を増やすために5,000億ルピー(約7,000億円)を投資。航空産業では、産業振興のために空域規制を緩和する。原子力発電振興にも予算を付けた。教育分野では、トップ100の大学に対してはオンラインでの授業実施を許可し、また小学校から高校までは各学年向けの教育テレビ・チャンネルを設ける。またインドの企業が、外国の証券取引所に直接上場することも解禁した。
【参照ページ】Summing up Modi's Covid stimulus: Big takeaways from the big Covid package
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