【金融】世界と日本のESG投資「GSIR 2020」の統計。世界のESG投資割合は35.9%に伸長 2021/07/15 体系的に学ぶ

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 世界のESG投資額の統計を集計している国際団体のGSIA(Global Sustainable Investment Alliance)は7月14日、ESG投資の統計報告書「Global Sustainable Investment Review(GSIR)」の2020年版統計を発表した。GSIAは、同報告書を2年に一度発行しているが、2020年統計の発表は2021年に遅延した。

 GSIAには現在、世界各地域のESG投資協会7団体が加盟。加盟団体は、米国のUSSIF、欧州のEurosif、英国のUKSIF、オランダのVBDO、カナダのRIA Canada、オーストラリアのRIAA、日本のJSIF(日本サステナブル投資フォーラム)。その中で、英国のUKSIFとオランダのVBDOは、欧州全体をカバーするEurosifの加盟団体であるため、報告書「GSIR」の発行は、米国のUSSIF、欧州のEurosif、カナダのRIA Canada、オーストラリアのRIAA、日本のJSIFの5団体が共同で作成している。いずれの地域協会も、関連機関投資家に調査票を送り、回収する形で情報収集をしている。

 また、南米では2013年にLatinSIFが組成されたが、まだ地域統計を収集できるまでには成長できていない。中東アフリカ地域ではまだ地域協会が誕生していない。

ESG投資の種類

 GSIAは、ESG投資を以下の7つに分類している。前の6つが投資ポートフォリオを作るためのESG投資の戦略。最後の「エンゲージメント・議決権行使型」は、投資前後の投資(候補)先企業へのエンゲージメントや議決権行使を積極的に行う、いわゆる「アクティビスト(物言う株主)」型の戦略。7つの戦略は重複しても用いられることも多く、特に前6つと「エンゲージメント・議決権行使型」は重複することが多い。

1. ネガティブスクリーニング(Negative/exclusionary screening)
 1920年代に米国のキリスト教系財団から始まった最も歴史の古い手法。今では欧州でも広く普及している。武器、ギャンブル、たばこ、アルコール、原子力発電、ポルノなど、倫理的でないと定義される特定セクターの企業を投資先から除外する戦略。

2. ポジティブスクリーニング(Positive/best-in-class screening)
 1990年代に欧州で始まった手法。同種の業界の中でESG関連の評価が最も高い企業に投資する戦略。ESG考慮の高い企業は中長期的に業績が高くなるという発想に基づく。ポジティブスクリーニングをすると、投資ユニバース(投資先企業リスト)が非常に小さくなると言われることもあり(一説では30%から70%小さくなる)、下の規範に基づくスクリーニングを推奨する専門家も少なくない。

3. 規範に基づくスクリーニング(Norms-based screening)
 2000年代に北欧で始まった比較的新しい手法。ESG分野での国際基準に照らし合わせ、その基準をクリアしていない企業を投資先リストから除外する手法。ポジティブスクリーニングに比べ投資ユニバースを大きくすることができると評価する専門家もいる。

4. ESGインテグレーション型(ESG integration)
 最も広く普及しつつある手法。投資先選定の過程で、従来考慮してきた財務情報だけでなく非財務情報も含めて分析をする戦略。特に年金基金など長期投資性向の強い資金を運用するファンドなどが、将来の事業リスクや競争力などを図る上で積極的に非財務情報(ESG情報)を活用し、アルファ(市場平均よりも大きなリターン)を目指すために用いられることが多い。

5. サステナビリティテーマ投資型(Sustainability-themed investing)
 サステナビリティを全面に謳ったファンドへの投資。サステナビリティ関連企業やプロジェクト(特に再生可能エネルギー、持続可能な農業等)に対する投資が有名。太陽光発電事業への投資ファンド、グリーンボンドなどもこのカテゴリーに属する。

6. インパクト投資型(Impact/community investing)
 社会・環境に貢献する技術やサービスを提供する企業に対して行う投資。比較的小規模の非上場企業への投資が多いため、このタイプのファンドの運用はベンチャーキャピタルが行っていることも多い。最近では個人投資家からも資金提供を募ることも増えてきた。インパクト投資の中で、社会的弱者や支援の手が行き届いていないコミュニティに対するものは、コミュニティ投資と呼ばれる。

7. エンゲージメント・議決権行使型(Corporate engagement and shareholder action)
 株主として企業に対してESGに関する案件に積極的に働きかける投資手法。株主総会での議決権行使、日常的な経営者へのエンゲージメント、情報開示要求などを通じて投資先企業に対してESGへの配慮を迫る。近年は、気候変動関連や役員報酬(SAY ON PAY)に対して声を上げることが多い。このタイプの手法をとる株主は「アクティビスト」「物言う株主」とも呼ばれる。

世界のESG投資額

 2018年から2020年までの2年間で、世界全体のESG投資額は15.1%増加し、35兆3,010億米ドル(約3,900兆円)となった。年平均(CAGR)にすると7.3%成長しました。過去の年成長率では、2012年から2014年が61%成長、2014年から2016年が11.9%成長、2016年から2018年が15.6%、2018年から2020年た7.3%成長と、一度鈍化した成長が再び加速した。

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(出所)GSIR 2020

 但し、今回の統計では、前回の2018年から欧州とオーストラリアに関しては、大幅に定義が修正され、過去との比較が難しくなっている。特に欧州に関しては、EUサステナブルファイナンス・アクションプランでの「サステナブル」の定義が採用され、ギャンブルやアルコール等での倫理基準での単純なネガティブスクリーニングが「ESG投資」とは見做されなくなった。同様の修正がオーストラリア・ニュージーランドについてもなされた。これにより、欧州とオーストラリア・ニュージーランドのネガティブスクリーニングの数値が大幅に下がり、グローバル全体の数値にも大きな影響を与えている。

ESG投資が全体に占める割合

 今回の報告で目立つのは、米国の急成長。2018年の11兆9,950米ドルから2020年には17兆810億米ドルへと42.4%も増加した。一方、欧州は、前述の定義変更の影響で、2018年の14兆750億米ドルから2020年には12兆170億米ドルへと13%減少。これにより、GSIR史上初めて米国が欧州を抜き、米国が世界で最もESG投資が盛んな地域となった。

 同様にカナダも2018年の1兆6,990億米ドルから2020年は2兆4,230億米ドルへと42.6%伸長。日本も、2018年の2兆1,800億米ドルから2020年は2兆8,740億米ドルへと31.8%増えた。

 各地域での運用資産全体に占めるESG投資割合では、カナダが61.8%でトップ。米国が33.2%、日本も24.3%まで伸長。一方、定義変更の影響を受け、欧州は41.6%、オーストラリア・ニュージーランドは37.9%へと下がった。

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(出所)GSIR 2020

各手法ごとのESG投資額

 手法別の統計では、GSIR史上初めて、「ESGインテグレーション」が歴史のある「ネガティブスクリーニング」を抜きトップとなった。ここにも前述の定義変更の影響が出ている。

 ESGインテグレーション型は、前回の17兆5,440億米ドルから2020年は25兆1,950億米ドルへと43%も増えた。ネガティブスクリーニング型は、前回の19兆7,710億米ドルから今回は15兆300億米ドルへと24%減少した。同様に規範軸スクリーニングも、2018年の4兆6,790億米ドルから2020年は4兆1,400億米ドルへと12%減少した。

 エンゲージメント・議決権行使型も、前回の9兆8,350億米ドルから今回は1兆504億米ドルへと7%増えた。サステナビリティ・テーマ投資型も、1兆180億米ドルから1兆9,480億米ドルへと91%も増えた。

 地域別の特徴では、欧州ではネガティブ・スクリーニング全体の61%、規範軸スクリーニングの74%を占め、除外手法が多いことがわかる。一方、米国は、ESGインテグレーション全体の64%を占め、ESGインテグレーションが中心。日本で、エンゲージメント・議決行使全体の17%を占め、エンゲージメント・議決権行使型が多いことがわかる。

 個人投資家と機関投資家の比率では、前回と同様、個人投資家が25%、機関投資家が75%を占め、ESG投資は依然として機関投資家が主導している状況。

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(出所)GSIR 2020

【機関サイト】GISA
【参考】【金融】世界と日本のSRI・ESG投資最前線(2014年6月30日)
【参考】【金融】世界と日本のESG投資 〜Global Sustainable Investment Review 2016まとめ〜(2017年3月29日)
【参考】【金融】世界と日本のESG投資「GSIR 2018の結果」。日本のESG投資割合18.3%と大幅飛躍(2019年4月2日)

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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