ロシアから事業撤退する企業が6月後半から相次いだ。背景には、米欧日のロシア経済制裁が長期化しており、事業運営が困難となってきていることが背景にある。多くの企業は一時的な停止を決めていたが、株主総会も意識し、このタイミングでの無期限の停止へと発展した形。
ホテル世界大手英インターコンチネンタル・ホテルズ・グループ(IHG)は6月27日、ロシアでの全事業の停止を発表。モスクワ支社も閉鎖した。IHGの各ブランドで展開しているホテル28ヶ所のオーナーとは、契約関係についての協議を進めているという。
タイヤ世界大手仏ミシュランは6月28日、2022年末までにロシアの全事業の譲渡を計画しており、現地の経営者に移管する意向を表明した。ミシュラン・ロシアは現在、ダビドボ工場を含め750人を含む約1,000人を雇用しており、グループ全体の売上の2%、乗用車向けタイヤ生産量の1%を占めている。
同じくフィンランドのタイヤ大手ノキアン・タイヤも6月28日、取締役会でロシアからの事業撤退を決定。代替として、フィンランドと米国の工場で生産能力を増強し、欧州でも新工場建設の投資を決定した。
仏シュナイダーエレクトリックは7月4日、ロシア事業を現地首脳陣に売却することを決定したと発表。ロシア事業はグループ売上の2%を占めていた。
ファーストフード世界大手米ヤム・ブランズは7月5日、ロシアでのファーストフード事業は全てフランチャイズ契約もしくはライセンス契約で実施していることを明らかにした上で、新たな店舗開発と投資を中止すると発表。ロシア事業からの利益を全て人道支援に回す予定とした。ロシアには、ケンタッキーフライドチキン(KFC)が約1,000店舗、ピザハットが約50店舗ある。
自動車世界大手独フォルクスワーゲンも、ロシアの2工場のうちロシア西部ニジニーノブゴロド工場の閉鎖を検討している模様。
ロシアからの事業撤退に関しては、事業売却もしくは企業売却に苦慮している企業が多い。背景には、買い手を見つけることが容易ではないだけでなく、経済制裁違反リスクをおそれ、欧米の金融機関がM&Aに関与していないことも大きな理由。
ロシアでは6月26日、政府が外貨建て国債の利子約1億米ドル分を支払わなかった模様で、1918年以来初のデフォルトとなったと報じられた。5月27日までの支払分に関し、30日の猶予期間があったが、不履行だったという。しかし、ロシアのペスコフ大統領報道官は6月27日、デフォルト報道には「同意できない」と拒否。5月に支払は完了しており、債権者に着金していないのは、ロシア政府の問題ではないと一蹴した。
【参考】【国際】クレジット・デリバティブ決定委員会、ロシア国債の支払不履行を認定。デフォルトリスク(2022年6月2日)
ロシアが国際送金・決済システムSWIFT(国際銀行間通信協会)から排除されている事案では、ロシア中央銀行のナビウリナ総裁は6月29日、独自に構築した国内決済手段「SPFS」に12ヶ国の金融機関70社が加盟したと発表。決済時間が平日の営業時間に限られ、取引メッセージ容量も少ない等の問題はあるものの、多くの銀行が加盟した模様。加盟銀行の名前は非公表。4月発表の52社から大幅に増えた。
連邦証券保管振替機関(NSD)に対し欧米が経済制裁を発動している問題に対しては、モスクワ取引所は7月1日、NSDとの間で顧客保護のクラブを設立すると表明。発行体から投資家への資金移動手段を構築するという。ロシア下院でも、ロシア発行体が海外で発行した外貨建て債券を、ロシア株式やユーロ債に強制的に転換する手続きを導入する法案を可決しており、海外投資家への支払代替手段の整備を進めている。
【参照ページ】IHG update on Russia
【参照ページ】Michelin announces its intention to transfer its activities in Russia to local management by the end of 2022
【参照ページ】NOKIAN TYRES’ UPDATE ON THE WAR IN UKRAINE
【参照ページ】Schneider Electric signs binding agreement for the divestment of Schneider Electric Russia to local management
【参照ページ】Yum! Brands Pausing Investment and Development in Russia; Redirecting Profit to Humanitarian Efforts
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