国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は7月13日、今後の水素貿易の展望を分析した報告書を発行した。将来的に世界の水素需要の4分の1はパイプラインは船舶を通じた国際貿易により水素エコノミーが形成されると見通した。
IRENAは、パリ協定に基づく1.5℃目標の達成に向け、世界は2050年までにエネルギーの12%を水素が賄うと見立てている。二酸化炭素排出量削減の状況では、再生可能エネルギーで25%、省エネで25%、電化で20%、水素で10%、炭素回収・貯留(CCS)で6%、BECCSで14%との想定を提示した。
2050年の水素生産コストは、再生可能エネルギー発電のコストに依存し、各地域によって大きく異なる模様。オーストラリア、アフリカ、米国西部、チベット、シベリア等では非常に安くなる。
(出所)IRENA
2050年の水素生産の状況については、IRENAは世界の水素需要の4分の3は国内で生産されるようになると分析。IRENAは、化石燃料エネルギーが国際貿易に大きく依存していることとは異なり、水素は地域ごとの生産が可能になるとした。生産ポテンシャルでは、中国、インド、米国が顕著に大きい。東南アジアもポテンシャルが大きい。
但し、それでも需要の4分の1は国際貿易が不可欠となる。水素の輸送の55%は、既存のガスパイプラインを活用することで、インフラ整備コストが大幅に削減できるとした。残りの45%は、アンモニアの形式で輸送され、大陸間水素輸送の大部分を占めるようになるという。
日本に関しては、膨大な水素需要に対し、国内での水素供給が限られるため、アンモニアでの輸入が必要になる見通し。日本の水素輸入依存度は、世界でも有数な水準となる予測となっている。
(出所)IRENA
IRENAは、水素の国際貿易が進展すれば、水素への投資額が増えると提言。世界の水素需要を満たすには、2050年までに4兆米ドル近い投資が必要となると投資拡大を呼びかけた。
またIRENAは7月8日、中国での戦略的パートナーシップに基づき、中国が政府が掲げる2060年までにカーボンニュートラルを達成するための13重要項目をまとめた報告書も公表した。提言には、石炭火力発電の廃止、再生可能エネルギーへの転換、省エネ向上、電力網改革、最終消費部門の電化促進等が含まれている。
【参照ページ】A Quarter of Global Hydrogen Set for Trading by 2050
【参照ページ】IRENA Presents Plan for China to Reach Carbon Neutrality through Renewables
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