Skip navigation
サステナビリティ・
ESG金融のニュース
時価総額上位100社の96%が
Sustainable Japanに登録している。その理由は?

【アメリカ】連邦議会、トランプ政権導入の反ESG規則撤回で不承認決議。大統領拒否権へ

 米連邦上院は3月1日、労働省が12月に制定した年金基金でのESG投資に関する新ルールを、行政手続を規定している合衆国法典第5編第8章に基づき不承認とする共同決議案を賛成50、反対46の賛成多数で可決した。2月28日に連邦下院でも賛成216、反対204で可決しており、バイデン大統領が署名すれば成立する。但し、バイデン大統領は署名しない模様。

 今回の事案は、労働省が2020年に表明した新規則「プラン投資の選択と株主の権利行使における慎重さと忠実さ」を、2022年11月に改正することに関するもの。同規則は、前トランプ政権時代の労働省が発表したエリサ法(従業員退職所得保障法)に基づく受託者責任の解釈を取り消し、さらに修正を加える内容だった。規則の対象は、約1.5億人が加盟する年金基金の運用資産約12兆米ドル。同ルールは12月1日に連邦官報に掲載され、1月20日に発効している。連邦議会の共同決議は、新ルールを法的に無効にし、トランプ政権時代のルールを継続させようとしている。

【参考】【アメリカ】労働省、エリサ法改正案を発表。ESG投資への支持を鮮明。議決権行使も促進(2021年10月15日)
【参考】【アメリカ】労働省、職域年金のESG投資の追加分析義務化のエリサ法解釈案を撤回。機関投資家は歓喜(2021年1月7日)
【参考】【アメリカ】労働省、ESG投資と受託者責任の関係で新規性案発表。PRIは「混乱招く」と批判(2020年7月13日)
 
 トランプ政権時代に制定されたルールでは、年金基金がESG投資を行う場合には、他の同類の投資手法と比べて投資パフォーマンスが下がらないことを証明し、書面で当局に提出することを義務付けている。2020年6月に原案が発表され、11月に最終決定された。さらに同12月には、「議決権行使と株主の権利に関する受託者責任」も発布し、議決権行使では受益者の金銭的利益のみを考慮し、行使の根拠となる重要事実を事前評価することを義務付けていた。こちらのルールも2021年1月15日に発効している。

 しかし、バイデン大統領は、2021年1月20日の大統領就任と同時に、大統領令に署名し、上記2つの労働省規則の改正作業に着手。大統領府(ホワイトハウス)主導で検討が進められ、労働省に対し、2021年9月までに2つの労働省規則の取消や改正の案を示すよう命じていた。やや遅れて2022年11月には、取消や改正の手続きとなる規則性低通知(NPRM)が公表されている。新ルールでは、トランプ政権のルールで課されたESG投資を行う際の追加の書面提出義務を撤廃。積極的な議決権行使は不要としていた規定も撤回した。同様に、議決権行使を委託する場合にも特別な監督義務が課されるとした規定も撤回した。

 とりわけ、年金基金は、慎重な検討の末に、非金銭的利益を追求することも可とされた点は大きな修正といえる。労働省は、ESG投資は金銭的利益をもたらす場合でも不当に制限されているとコメントしたが、非金銭的利益の追求という道も最終的に作る形となった。同ルールは、連邦官報に掲載後60日後に自動発効されるため、1月20日に発効。但し、議決権行使規定の一部は官報掲載から1年後の発効としていたため、まだ発効されていない。

 今回の連邦議会での共同決議は、共和党議員が主導した。連邦下院では共和党議員全員が賛成。民主党議員は1人が賛成し、残り全員が反対したが、共和党が多数派の連邦下院は想定通り通過した。棄権も共和党で6人、民主党で7人いた。一方、民主党が2議席だけ上回っている連邦上院では、民主党議員2人が賛成に回り、賛成多数となった。棄権は共和党1人、民主党3人だった。
 
 共同決議を大統領が署名しない場合、決議案は起草した上院や下院に差し戻される。上院と下院は3分の2以上で再び可決すれば、大統領の署名有無にかかわらず成立する。大統領は、10日以内に拒否しない場合には、署名無しで成立する。

 民主党の中で、賛成票を投じたモンタナ州のジョン・テスター上院議員とバージニア州のジョー・マンチン上院議員は、年金加入者の利益の追求が損なわれることを懸念したという。非金銭的利益の追求に道を開いた点が反対のポイントとなったと言える。

【参照ページ】H.J.Res.30 - Providing for congressional disapproval under chapter 8 of title 5, United States Code, of the rule submitted by the Department of Labor relating to "Prudence and Loyalty in Selecting Plan Investments and Exercising Shareholder Rights".
【参照ページ】US DEPARTMENT OF LABOR ANNOUNCES FINAL RULE TO REMOVE BARRIERS TO CONSIDERING ENVIRONMENTAL, SOCIAL, GOVERNANCE FACTORS IN PLAN INVESTMENTS
【参照ページ】Final Rule on Prudence and Loyalty in Selecting Plan Investments and Exercising Shareholder Rights
【参照ページ】Fiduciary Duties Regarding Proxy Voting and Shareholder Rights

author image

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

この記事のタグ

Sustainable Japanの特長

Sustainable Japanは、サステナビリティ・ESGに関する
様々な情報収集を効率化できる専門メディアです。

  • 時価総額上位100社の96%が登録済
  • 業界第一人者が編集長
  • 7記事/日程度追加、合計11,000以上の記事を読める
  • 重要ニュースをウェビナーで分かりやすく解説※1
さらに詳しく ログインする

※1:重要ニュース解説ウェビナー「SJダイジェスト」。詳細はこちら

"【ランキング】2019年 ダボス会議「Global 100 Index: 世界で最も持続可能な企業100社」"を、お気に入りから削除しました。