米労働省(DOL)は12月11日、ESG投資とフィデューシャリー・デューティー(受託者責任)に関し、6月に発表していた職域年金基金向けの新規制案を撤回する最終決定を下した。発表していたESG投資に関する追加規制を全て撤回した。
【参考】【アメリカ】労働省、ESG投資と受託者責任の関係で新規性案発表。PRIは「混乱招く」と批判(2020年7月13日)
今回の新ルールは、従業員退職所得保障法(エリサ法)に基づく解釈に関する内容で、最終決定では3つの規定が盛り込まれた。
- 議決権行使意思決定や他の株主権利の行使は、受益者の利益のためだけに行わなければならず、関連するコストも考慮しなければならない
- 年金制度の受託者は、受益者の利益を最優先しなければならない
- 議決権行使助言会社の選択とモニタリングに関するフィデューシャリー・ディーティを改善しなければならない
今回決定の最終ルールは、12月16日の官報掲載の30日後に発効する。但し、記録保持義務に関する規定と議決権行使ポリシー制定の義務化については、2022年1月31日に発効する。
一方、原案に盛り込まれていたESG投資に関する追加規制に関する内容は、最終決定ルールから全て削除された。発表直後から、ESG投資を進めている機関投資家からは大きな反対の声が上がっていた。今回ESG投資に関する追加の分析義務が撤回されたことで、労働者が原案での前提としていた「ESG投資は投資パフォーマンスを犠牲にし、受益者の利益に反する」という考え方そのものが撤回されたことで、機関投資家からは勝利宣言の声も上がっている。
労働省は今回、発表していた規制案に対しては、コメント文書が約300通、意見書が6,700通届いたことを明らかにし、様々な意見が寄せられていたことを伝えた。
【参照ページ】U.S. DEPARTMENT OF LABOR ISSUES FINAL RULE ON PROXY VOTING AND SHAREHOLDER RIGHTS BY EMPLOYEE BENEFIT PLANS
【最終ルール】Fiduciary Duties Regarding Proxy Voting and Shareholder Rights
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