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【アメリカ】労働省、エリサ法改正案を発表。ESG投資への支持を鮮明。議決権行使も促進

 米労働省は10月13日、年金基金の受託運用会社が、投資先の選定や議決権行使で、ESGを考慮することに対する障害を取り除くためにエリサ法(従業員退職所得保障法)を改正する立法案公告を発表した。60日間パブリックコメントを募集する。

【参考】【アメリカ】労働省、職域年金のESG投資の追加分析義務化のエリサ法解釈案を撤回。機関投資家は歓喜(2021年1月7日)

 今回の改正案は、「Prudence and Loyalty in Selecting Plan Investments and Exercising Shareholder Rights」。バイデン大統領が5月20日に署名した大統領令14030に基づく措置。同大統領令では、米国の労働者や家族の生命保険や年金基金を脅かす可能性のある気候関連の金融リスクから、米国の家族、企業、労働者の経済的安定を守るための政策を実施するよう連邦政府機関に命じていた。

 同改正案は、投資意思決定で気候変動を考慮することは、投資リスクを低減し、年金資産に対する長期的な経済リスクを軽減することで、ポートフォリオに有益な効果をもたらしうるとの立場を採用。その上で、受託運用会社のプルーデンス義務として、気候変動の物理的リスクや移行リスクが投資のリスクやリターンに与える影響を考慮することがエリア法上認められることを明確にした。さらに、受託運用会社が、「気候変動やその他のESG要素が検討中の投資や投資方針にとって重要であると結論づけた場合、他の重要なリスク・リターン要素に関する場合と同様に、受託運用会社はそれを検討し、それに従って行動することができ、またそうすべき」とも言及した。また「投資義務」としてきた文言も「投資プルーデンス義務」に修正する。

 一方、忠実義務として、投資リターンを犠牲にしたり、追加の投資リスクを負ったりしてはならないことを再度確認。但し、受託者は、個人の選択の範囲で、投資リターン以外の付随的利益に基づいて投資先や投資行動を選択してもよいことを明確にした。例えば、個人年金基金のファンドに置いて、投資リターン以外のインパクトを追求することを容認しつつ、開示資料について付随的利益の特徴を目立つように表示することは義務付ける。ESG投資ファンドを、確定拠出(DC)型年金基金のデフォルトオプションとすることが禁止されているか否かも、エリサ法の重要な論点となっていたが、今回の改正案では、デフォルトとすることが可能ということも明確にした。

 投資のリスクやリターンに影響を与えうるESG要素としては、気候変動要因として「気候変動の物理的・移行リスクへのエクスポージャーや、気候変動を緩和するための政府の規制・政策のプラス・マイナスの影響等の気候変動の現実的・潜在的な経済的影響に対する企業のエクスポージャー」、ガバナンス要因として「取締役会の構成、役員報酬、企業の意思決定における透明性と説明責任、企業の刑事責任の回避、労働・雇用・環境・税務欧の関連法規のコンプライアンス」、労働慣行要因として「従業員ダイバーシティ&インクルージョン、その他従業員の雇用・昇進・定着を促進する上での進捗状況、従業員のスキル向上のための研修への投資、雇用機会均等、労使関係」を例示した。

 それに関連し、エリサ法について、解釈課題となっていたいわゆる「タイ・ブレーカー基準」についても、受託運用会社が「制度の財務上の利益に等しく役立つ」と結論づけるものと非常に幅広く定義し、ESG投資の障壁を大幅に撤廃する。タイ・ブレーカーでは、非金銭的な要素を採用するときに、金銭ベースでのリスク・リターンが同等となることを義務付ける概念で、タイ・ブレーカーの要件が厳しくなるほど、運用会社は非金銭的なファクターが与えるリスクやリターンを考慮しづらくなる。さらに今回の新規制では、金銭的要因だけでは決定要因として不十分であると受託者が結論づけた場合に、受託者がその分析を文書化することを義務化する現行のルールも撤廃し、通常の善管注意義務でカバーできるとした。

 議決権行使に関する義務も大幅に転換する。従来のエリア法の文言では、受託運用会社は、議決権行使を受託者の義務としないと解釈できる内容だったが、議決権行使を受益者の利益を保護するための受託者の義務として位置づける。これにより議決権行使の積極化を狙う。但し、議決権行使が、受益者の最善の利益とはならないと判断した場合には、行使しなくてもよい。州法や年金基金の規程も優先される。

 また、費用の観点から、議決権行使助言会社のサービスを活用すること可能との立場を明確にした。議決権行使助言会社に対する特別な監視義務の現行規定も撤廃し、通常の監督義務でカバー可能とした。セーフハーバーとして例示していた2つの内容に関しても、活用条件を狭く解釈される危険性があるとし、削除する。

【参照ページ】US DEPARTMENT OF LABOR PROPOSES RULE TO REMOVE BARRIERS TO CONSIDERING ENVIRONMENTAL, SOCIAL, GOVERNANCE FACTORS IN PLAN MANAGEMENT

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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