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【アメリカ】政府、クリーン水素ガイダンス発行が大幅遅延。労働基準は発表。インフレ抑制法

 米財務省と内国歳入庁の「クリーン水素」ガイダンスの発行作業が遅れている。当初は8月16日が期限だったが、期日を過ぎても発表がなく、そのまま約1ヶ月半が経過しようとしている。

 クリーン水素に関するガイダンスは、インフレ抑制法及びインフラ雇用促進法に基づき設定されている水素分野への支援対象となるプロジェクトの要件を定めるもの。インフレ抑制法では、水素税額控除ルール「45V」で、今後10年間のクリーン水素生産に対し1kg当たり最大3米ドルの減税措置が規定されている。現時点でのプロジェクト規模を想定すると、今後10年間で700億米ドル(約10兆円)を超える減税措置となる可能性がある。

クリーン水素の要件では、EUでは3月、再生可能エネルギー指令の改正で欧州議会とEU理事会が政治的合意に達しており、11月23日に開始される再生可能水素オークション実証の入札条件として、支援対象となる水素スペックが固まっている。

【参考】【EU】EU理事会と欧州議会、再エネ指令改正で政治的合意。イエロー水素は2級品扱い(2023年3月31日)
【参考】【EU】欧州委、再生可能水素オークションの入札基準発表。RFNBOに限定。11月23日開始(2023年9月20日)

 米国政府のクリーン水素ガイダンスの策定では、「追加性(アディショナリティ)」「時間的相関性」「地理的相関性」の3つが大きな論点となっている。追加性は、クリーン水素を製造するための電力等は、新たに設置された発電所等から供給されることを課すもので、既存のエネルギーを横スライドさせるだけの行為を防ぐ。

 時間的相関性は、特にグリーン水素生産のための電力が、再生可能エネルギー電力で供給されていることの同時性を証明するルール。同時性には、時間単位、日単位、年単位等の幅がある。

 地理的相関性は、グリーン水素を生産する電解槽が、使用するクリーンエネルギー発電所からの近接性に関するルール。再生可能エネルギーから近い電解槽で水素を生産されることを課す。

 これら3つはいずれもEUでは厳しい要件が設定されたことで、米国でも同様のルールを求める声が、主に環境NGO側からあがっている。一方、要件を厳しくすると、水素価格が上昇し、水素エコノミー化が進まないことを危惧する声もある。地理的相関性が厳しく設定されると、原子力発電電力を活用したクリーン水素生産が不利になることも、原子力発電推進派からは懸念されている。

 これに対し、3つの要件を段階的に導入する案で調整が図られている。米国クリーンパワー協会(ACP)は、2028年末までは時間的要件に関し年単位でのルールを導入し、2029年からは時間単位で一致させることを提案している。

 またブルームバーグ・ニューエナジー・フィナンス(BNEF)は9月21日、時間的相関性に関しては、2027年までは月単位、それ以降は時間単位での導入を提案。地理的相関性については、送電網キャパシティを考慮し、混雑を防ぐための一定のルールが必要とした。追加性については、水素生産開始の36ヶ月前以降に稼働した発電所からの調達を提唱し、さらに停止中の発電所を稼働する場合にも追加性を認めるべきとしている。

 一方、米財務省と内国歳入庁は8月29日、インフレ抑制法で規定された幅広いクリーンエネルギーへの減税や補助金措置に課す労働関連基準ガイダンスは発表済み。賃金水準と、見習い従業員に関する基準を設け、インフレ抑制法が高賃金労働の創出につながるようルールをはめた。

【参照ページ】US Hydrogen Guidance: Be Strict or Be Damned
【参照ページ】U.S. Department of the Treasury, IRS Release Guidance on Inflation Reduction Act Provision to Ensure Good-Paying Clean Energy Jobs, Expand Clean Energy Workforce

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