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【環境】大規模太陽光発電と環境アセスメント 〜日本エコロジーの釧路湿原メガソーラー事案〜

【環境】大規模太陽光発電と環境アセスメント 〜日本エコロジーの釧路湿原メガソーラー事案〜 2

 日本エコロジーが開発している釧路湿原での大規模太陽光発電(メガソーラー)が大きな社会問題となっている。釧路湿原国立公園に近い私有地で開発されている案件だが、オジロワシやタンチョウ等の希少な動物が生息している生態系のつながる土地での大規模開発のため、環境破壊の懸念が高まっている。

 日本では、発電所建設には、経済産業省が所管する環境影響評価(環境アセスメント)が義務化されており、水力発電所では30MW以上、火力発電所では150MW以上、地熱発電所では10MW以上、風力発電所では10MW以上、原子力発電所では全ての案件に対し、法定環境影響評価の実施が課せられている。また、都道府県知事の意見を勘案しつつ経済産業相が法定環境影響評価を命じられる対象として、水力発電所では22.5MW以上、火力発電所では112.5MW以上、地熱発電所では7.5MW以上、風力発電所では7.5MW以上としている。

 太陽光発電については、以前は環境影響評価の対象ではなかったが、2019年7月に閣議決定された「環境影響評価法施行令の一部を改正する政令」により、設備容量40MW以上の太陽光発電所は、法定環境影響評価が2020年4月1日から義務化。30MW以上の太陽光発電所も、都道府県知事の意見を勘案しつつ経済産業相が法定環境アセスメントを必須にできると定められた。

 さらに環境省は2020年に「太陽光発電の環境配慮ガイドライン」を策定。環境影響評価法の対象とならない規模の事業についても、地方自治体が個別に条例を策定し、規制を課す可能性があることから、考慮すべき環境配慮の内容を示している。

 また、国立公園や国定公園での大規模太陽光発電の建設については、2015年に環境省が「基本的な考え方」を示しており、「限定的に許容すべき」と位置づけ、植生の復元が困難な場所や野生生物の生息地・生育地として重要な地域や、景観上重要な地域、自然草地等は立地から除外すべきと整理。また環境省は2020年に「国立・国定公園内における太陽光発電施設の審査に関する技術的ガイドライン」を策定し、立地として認められる基準を明確にしているが、「高山帯、亜高山帯、風衝地、湿原等植生の復元が困難な地域」については開発が禁止されると整理していた。

 これに対し、日本エコロジーが開発している案件は、釧路湿原国立公園の内側ではなく、付近の私有地で開発されており、27haの土地に太陽光発電パネルを36,579枚設置するものの、設備容量は21MW。その後、1区画約2.5haでオジロワシの営巣木があることがわかったことから、釧路市教育委員会が文化財保護法に基づく通達を発出。日本エコロジーは、開発計画を縮小し、現在は4.2haに6,600枚のパネルを設置すると伝えられている。いずれにしても、国立公園内ではなく、設備容量の外側に位置していることから、法令に基づく開発禁止地区ではなく、法定環境影響評価も不要な案件となっている。

 法定環境影響評価の対象ではない案件に対し、地方自治体が条例で環境影響評価を課すことはできるが、北海道や釧路市はまだ条例を制定していない。釧路市は目下、「釧路市自然と太陽光発電施設の調和に関する条例」の制定に向けた準備を進めており、先行して2025年8月に「釧路市自然と共生する太陽光発電施設の設置に関するガイドライン」を策定。設備容量10MW以上の大規模太陽光発電については、自然環境等に与える影響を十分に考慮し、計画の中止を含め抜本的な見直しを検討することを要請。さらに、市の関係部局及び関係行政機関と事前に相談、協議を行い、必要な手続等を行うものとすると定めている。

 現在、釧路市の対応としては、策定したガイドラインに基づき、タンチョウやオジロワシ等の生態系に問題がないか等を調査し、希少生物を保護し監督する釧路市立博物館に報告するよう求めている状況にある。これに対し、日本エコロジーは、認定NPO法人タンチョウ保護研究グループに調査を依頼し、タンチョウやその他の希少生物の生息地への影響に関する調査を依頼。調査結果は、影響がないというもので、釧路市立博物館に報告されている。但し、釧路市立博物館側は、調査が不十分として再調査を要請したが、再調査されないまま工事が始まったという。しかし、日本エコロジー側は、必要な手続を得ていると主張しており、事業者側と行政側の意見は食い違っている。

 文部科学省文化庁は8月26日、文化財保護法に基づき、同開発案件には違法性があり、罰則が科される可能性があると事業者に伝えるよう釧路市教育委員会に通達している。

 同案件からの教訓としては、法定環境影響評価の範囲を見直し、30MW未満であっても法定環境影響評価を必須にできるようにする経済産業省が対応することと、地方自治体が必要と認識する手続を踏まない事業者に対しては自治体側が迅速に裁判所に提訴する体制を構築していくことにあるのではないか。

【参照ページ】太陽光発電事業に関する環境影響評価について 【参照ページ】国立・国定公園内における大規模太陽光発電施設設置のあり方に関する基本的考え方 【参照ページ】国立・国定公園内における太陽光発電施設の審査に関する技術的ガイドライン 【参照ページ】太陽光発電の環境配慮ガイドライン 【参照ページ】釧路市自然と共生する太陽光発電施設の設置に関するガイドライン

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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