
国連食糧農業機関(FAO)は7月24日、FAO農業委員会第30回会合(COAG)を開催し、「持続可能な畜産変革のためのグローバル行動計画(GPA)」を採択した。畜産部門の持続可能な変革を目的とした行動計画の採択は今回が初。
GPAでは、「食料安全保障、栄養、健康的な食生活」「生計の向上とインクルーシブな経済成長」「ワン・ヘルス・アプローチによる動物の健康」「天然資源の利用、気候変動対策、生物多様性」の4つを優先変革テーマに設定し、戦略的優先事項(SP)と行動内容も固めた。
食料安全保障、栄養、健康的な食生活
- 陸生動物由来食品の安全性確保:コーデックス委員会のリスク分析枠組みの実施促進、食源性病原体およびその他の危害に対する予防、検出、対応能力強化、能力開発プログラムの策定・実施
- 安全で栄養価の高い陸生動物由来食品の供給確保:各ライフステージにおける食事摂取量に関するデータの不足解消、生産・流通データ分析、貿易・アクセスの戦略策定、安全で栄養価の高い食品へのアクセス課題への対処、安全で栄養価の高いTASFの生産支援
- 安全で栄養価の高い陸生動物由来食品の役割理解深化:研究促進、科学的根拠に基づく国家レベルの食事ガイドライン策定・改定、陸生動物由来食品の役割教育
- 畜産サプライチェーンにおける食品ロス及び食品廃棄物削減:食品ロス・廃棄(FLW)の原因究明、戦略策定、法整備、イノベーション促進、ベストプラクティス把握
生計の向上とインクルーシブな経済成長
- 畜産生産者への資源・サービスアクセス確保:「国家の食料安全保障の文脈における土地、漁業、森林の保有権の責任あるガバナンスに関する自主的ガイドライン」活用、政策立案、畜産農家への技術支援、インフラ強化、生産者組織強化、デジタル化、目標設定
- 畜産システムのレジリエンス向上:緊急時対応計画策定、保険制度等のリスク管理メカニズム強化、戦略策定、リスク評価、畜産農家支援、能力開発
- 畜産システムの効率性・生産性向上:家畜識別・トレーサビリティシステムの開発、飼料資源管理強化、家畜育種プログラム確立、ベストプラクティス把握
- 畜産部門における雇用機会促進・適切な労働条件確保:労働慣行改善、児童労働・強制労働排除、社会保障制度整備、ディーセント・ワークへのアクセス改善
- 女性、若者、先住民族、地域社会、脆弱な人々のエクイティ&インクルージョン:能力開発、金融サービス整備、知見共有、若者向け支援強化
ワン・ヘルス・アプローチによる動物の健康
- 動物疾病の予防・制御:ワン・ヘルス及び科学的根拠に基づくアプローチの活用、バイオセキュリティ対策強化、畜産農家啓発、診断法、医薬品、ワクチン、民族獣医学の研究開発促進、優先動物疾病への戦略策定、「4者協議体」を含む関連セクター及びパートナー間の連携強化、獣医療従事者のスキル向上、健康な動物のための家畜育種プログラムを確立
- 抗菌薬の使用方法適正化:抗菌薬の統合的な監視体制強化、畜産場での動物管理慣行推進、コーデックス委員会及び世界動物保健機関(WOAH)の基準啓発、薬剤耐性(AMR)に関する国家行動計画策定、抗菌剤の使用に代わる手段に関する研究・イノベーション促進
- 動物福祉促進:動物福祉対策の多面的な便益理解、世界動物保健機関(WOAH)の「陸生動物衛生コード」に沿った動物福祉の実践促進、情報の記録・共有、外部性に関する研究、築さん条レベルの動物福祉認証制度の利用促進
天然資源の利用、気候変動、生物多様性
- 放牧地・牧草地の保全、再生、持続可能な管理:管理・保全方法の改善、責任ある包括的な放牧地管理政策の策定、天然資源の持続可能な利用と再生の最適化、資金調達メカニズムの利用支援、牧畜の移動促進
- 気候変動適応・緩和強化:ベストプラクティスの把握、遺伝学、育種、栄養、代謝に関する研究強化、デジタル化強化、政府全体の政策に畜産分野を統合、畜産農家に与える炭素市場収入の可能性とリスクの評価、GHG算定能力開発プログラム策定
- 土壌、土地、水資源の持続可能な管理支援:土壌、土地、水資源の統合的管理推進、窒素・リン利用効率向上、家畜排泄物の管理改善、重金属や抗菌剤を含む動物用医薬品の残留物の環境流出防止
- サーキュラーエコノミー、アグロエコロジー、持続可能な集約化、その他の革新的なアプローチ、持続可能なバイオエコノミーへの統合:カバークロップや輪作作物の利用拡大、畜産廃棄物・副生物の有効資源活用、持続可能なバイオエコノミーに関する政策策定、バイオエコノミー・アプローチの利点とトレードオフに関する研究
- 生態系サービスと生物多様性に対する持続可能な畜産システムの価値促進:「動物遺伝資源に関するグローバル行動計画」の実践、研究、ベストプラクティス把握、生態系サービス及び生物多様性に貢献できるようにする政策策定、国内の保護地域における畜産活動による悪影響を軽減・排除するための規制整備
またFAOは、「ワン・ヘルス・アプローチによる動物の健康」に関し、越境性動物疾病に対処するための新たな国際プログラム「越境性動物疾病に関するグローバル・パートナーシップ・プログラム(GPP-TAD)」を創設したと発表した。すでに110カ国以上が参加意向を表明している。
越境性動物疾病に対しては、FAOは従来、越境動物疾病緊急センター(ECTAD)を通じた活動で対策を展開してきたが、主にドナー資金を基にしたFAOの事業に依存していた。そこで今回、各国政府が主導し、FAOは現地のニーズや状況に合わせて調整された技術支援を提供する立場へと転換するスキームへの移行を図る。
GPP-TADは、FAOが動物衛生分野で果たしてきた過去数十年間の主導的役割を基盤としつつ、FAOの調整力、技術的専門知識、疾病情報、世界的なネットワークを活用し、動物衛生の脅威に対処するために必要な知識、ツール、パートナーシップを各国政府に提供。その上で、各国が対策の主体となり、自ら優先順位を定め、投資の機会を特定し、国内の能力を強化していく。
また、GPP-TADには、FAOの「最後の砦」機能も組み込まれており、動物疾病の緊急事態が各国の対応能力を超える場合、FAOは専門知識を迅速に投入し、調整を支援し、資源を動員して、対応努力の維持を支援することができるようにもする。
FAOは今回、GPP-TADの必要性について、アフリカ豚熱、口蹄疫、鳥インフルエンザ、小反芻獣ペスト、塊状皮膚病等の越境性動物疾病は、依然として動物の健康、食料安全保障、生計、貿易、経済発展のダメージを与えていると指摘。同時に、気候変動、環境悪化、生産システムの変化、貿易や家畜の移動の増加、資源の制約により、疾病の予防と制御はますます困難になっていると伝え、将来の発生を防ぐためには、より強固な国家システム、持続的な投資、国際協調が重要になっているとした。
GPP-TADでは、特に、「予防と段階的な疾病対策」「デジタルモニタリング・早期警報・動物衛生イノベーション」「備えとリスク情報を踏まえた早期対応・先制対応」「協調的かつ迅速な緊急対応」「法整備・パートナーシップ・資金調達モデル」の5つを優先分野に設定。ワン・ヘルス・アプローチを通じ、越境性動物疾病及び人獣共通感染症の予防、備え、段階的な抑制に向けた共同行動と共同投資を促進することも狙う。
【参照ページ】FAO’s Global Plan of Action for Sustainable Livestock Transformation is approved
【参照ページ】FAO presents new strategic model to tackle transboundary animal diseases
無料会員に登録すると、
有料記事の「閲覧チケット」を毎月1枚プレゼント。
登録後、すぐにご希望の有料記事の閲覧が可能です。
無料登録してチケットを受け取る
【無料会員向け】有料記事の閲覧チケットの詳細はこちら
または
有料会員プランで
企業内の情報収集を効率化
- 2000本近い最新有料記事が読み放題
- 有料会員継続率98%の高い満足度
- 有料会員の役職者比率46%
有料会員プランに登録する