近年では特定の商品・サービスの購入を売上の一部の寄付などを通じて環境保護や社会貢献活動などの”Cause”(社会的大義)と結びつけることで拡販を実現しようとする「コーズ・マーケティング(コーズ・リレーテッド・マーケティング)」が徐々に一般的になってきているが、一方でその手法の限界について指摘する声なども挙がっている。
実際には"Cause"は価格面のハンディキャップを覆すほどのフックにはならないという声や、安易なコーズ・マーケティング設計によるグリーン・ウォッシュへの懸念などである。
このコーズ・マーケティングに関する考察として、米国サンフランシスコに拠点を置くクリエイティブエージェンシー、SchoolのCEOを務める Max Lenderman氏が、ブランドのマーケティングを支援する代理店の立場からCampaign USに”Cause vs. purpose: What's the difference?”と題して非常に興味深い記事を寄稿している。
同氏が記事内で紹介しているCone Communication社が2013年に行った調査” 2013 Cone Communications/Echo Global CSR Study”によれば、今日の消費者の93%はCauseに関連した商品を購入する意思があり、65%は過去一年以内に実際にCauseに関連する商品を購入したことがあるという。
Lenderman氏は、企業のマーケティング担当者や広告代理店はCauseを大きな販売機会だとみなしており、実際に同氏も含む多く人々が、自分の関心のあるCauseのためなら多少多くを支払ってもよいと考えていると説明している。
一方で、同氏がCauseに対峙する概念として紹介しているのが”Purpose”(目的)だ。同氏は、最近の消費者の動向には明白な変化が見受けられ、人々はCauseよりPurposeに対してより敏感に反応するようになってきていると指摘している。
”Purpose”とは一体何なのだろうか?Purposeの概念はCauseの概念との比較で考えると分かりやすい。Lenderman氏によれば、Causeは多くの場合何らかの社会問題に対する(反対の意味を込めた)キャンペーンなのに対して、Purposeは将来作りたい世界、望ましい状況など何らかを支持するものである傾向があるという。
例えば、多くのブランドはCauseとして環境汚染に反対している一方で、Seventh Generation社(米国の一般消費財メーカー)は「人々がより自然で化学物質のない生活を送れるように手助けすること」をPurposeにしている。また、大手小売企業らがSierra Club(米国の自然保護団体)の森林破壊の撲滅に向けた取り組みを支援している一方で、Patagonia社はそもそも「豊かな自然を守る」ことを自社のミッションとしている。
このように、Causeは特定の社会的課題を解決するためのキャンペーンとして位置づけられるのに対して、Purposeとはその企業のそもそもの存在目的に沿ったものであるというのが同氏の指摘するCauseとPurposeの最も大きな差異だ。
コーズ・マーケティングは歴史的に企業からの寄付に依存してきたのに対し、Patagonizaに代表されるような先進企業のいくつかは、Purposeを全社のビジネスモデルの根幹に据えているのだ。
同氏は、PurposeはCauseよりもより包括的な概念だと主張する。また、コーズ・マーケティングはTVや紙媒体などの従来型メディアに頼りがちなのに対して、Purposeに基づくマーケティングはソーシャルメディアやデジタル、体験型のものなどよりヒューマン・セントリック(人間中心)な手法が使われる傾向があると語る。
そして、人々が自発的にシェアし、参加し、行動してくれるようにそれらのチャネルを最適化することが、ブランドや企業のPurposeを理解してもらうために必要なことだという。
Purposeに基づくブランドや企業にとっては、コーズは既にビジネスに織り込まれているものであり、そのメッセージのAuthenticity(信頼性、本物であるかどうか)こそが、コーズ・マーケティングとの一番の違いであり、人々がまさに求めているものだと同氏は主張する。
いかがだろうか?消費者が環境・社会の観点からブランドを選択するようになってきている昨今において、Lenderman氏の記事からは企業は売上を伸ばすためにうわべだけの大義を語るのではなく、そもそもの企業としての存在目的から見直すことの必要性を感じさせられる。
【参考サイト】Campaign US "Cause vs. purpose: What's the difference?"
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