欧州委員会は12月2日、サーキュラー・エコノミー(循環型経済)の実現に向けたEU共通の枠組み構築を目的とする新提案「サーキュラー・エコノミー・パッケージ」を採択した。ヨーロッパ経済を循環型経済システムへと移行することで、国際競争力の向上、持続可能な経済成長、新規雇用創出などを目指す。
新提案は、リサイクルや再利用などを通じて製品ライフサイクルの"Close the Loop"(ループを閉じる)を実現し、環境および経済の双方に利益を生みだすのが目的だ。ライフサイクル全体においてあらゆる原材料、製品、廃棄物を最大限に活用することで、エネルギーの節約と温室効果ガス削減を促進する。
パッケージプランの実行にあたっては、欧州構造投資基金(ESIF)が財政面の支援を行い、加えてHorizon 2020(多国間研究開発・イノベーション促進プログラム)が6.5憶ユーロ、EU構造基金が5.5億ユーロ拠出する。また、EU加盟各国による投資も財政基盤となる。
今回のパッケージは、欧州委員会の縦割り構造を打開し、気候変動および環境課題に対処すると同時に雇用創出や経済成長、投資、社会的公正などを促進していくことで、EUが抱える広範な政治的課題に貢献することが期待されている。提案された具体的な内容および既存のEU指令に基づく今後の主要な行動計画は下記の通りだ。
- 食品廃棄物の削減に向けた共通の測定手法の開発、賞味期限表示の改善、2030年までに食品廃棄物を半減させるというSDGs(持続可能な開発目標)に沿ったツールの開発
- (EU)単一市場における信頼確保に向けた二次資源の品質基準の開発
- エコデザイン・ワーキング・プラン2015-2017の指令に基づく、製品のエネルギー効率、修理しやすさ、耐久性、リサイクル可能性の促進
- 肥料に関する指令改正の実施、単一市場での有機栽培による食料や廃棄物を利用した肥料への需要に応え、バイオ・ニュートリエンツの利用を支援
- プラスチックに対する戦略として、リサイクル可能性、生物分解性、危険物質の含有に焦点をあて、SDGsの一つとなっている海洋廃棄物の大幅な削減を遂行
- 廃水再利用の指令を最小限の要件に改正することを含む、水の再利用の促進
また、今回の指令改正案で挙げられた、廃棄物に関する主要なEU目標は下記の通りだ。
- 2030年までに加盟国各自治体の廃棄物の65%をリサイクルする。
- 2030年までに包装廃棄物の75%をリサイクルする。
- 2030年までにすべての種類の埋立て廃棄量を最大10%削減する。
今回の欧州委員会の提案は、EUは今後「サーキュラー・エコノミー(循環型経済)」という新たな経済モデルを2030年に向けた成長戦略の核に据えていくという意思の表れだ。常に世界に先んじてルール・メイキングをすることで競争優位を保ってきたEUが、具体的にどのような取り組みを進めていくのか、指令の改正動向や加盟各国の対応も含めて引き続き注目が集まる。
【参照リリース】Closing the loop: Commission adopts ambitious new Circular Economy Package to boost competitiveness, create jobs and generate sustainable growth
【団体サイト】European Commission
【参考サイト】Horizon 2020
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