世界経済フォーラム(World Economic Forum、以下、WEF)は1月14日、2016年度版のグローバルリスク報告書を公表した。同報告書は、約750名の専門家が29種類のグローバルリスクの潜在的影響および今後10年間における発生可能性を分析したもので、20~23日にスイスのダボスで開催される年次総会に先立ち、マーシュ・アンド・マクレナン・カンパニーおよびチューリッヒ・インシュアランス・グループの支援により作成された。
今年の報告書では環境問題から国際安全保障、第4次産業革命に至るまで多岐にわたるリスクが取り上げられており、その中でも2016年に最も潜在的影響が大きいグローバルリスクは「気候変動の緩和・適応の失敗」リスクだと特定された。
潜在的影響において環境関連のリスクが最上位となるのは同報告書の発行が始まった2006年以来初となり、気候変動リスクによる潜在的な被害規模は、大量破壊兵器(2位)や水危機(3位)などを上回った。一方で、2016年に最も発生可能性のあるリスクとしては「大規模な非自発的移住」が1位となり、極端の気象(2位)、気候変動の緩和・適応の失敗(3位)が続いた。
WEFは、今年の報告書の特徴として、かつてないほどリスクが多岐に渡っている点を指摘している。今年の分析では潜在的影響が大きいリスク上位5つの中に、環境、地政学、社会、経済という4つの異なる分野のリスクが含まれている。また、各リスクの発生可能性も高まっており、2014年から評価対象となっている24のリスク全てにおいて発生可能性スコアが過去3年間で上昇しているという。
さらに、今年の報告書では、リスクの潜在的影響および発生可能性の評価に加え、リスク同士の相互連関についても検証された。その結果、2016年にリスク同士の相互連関性において上位を占めた5組全てが、2015年と比較して連関度合いを強めていることが分かった。2016年のリスクで最も相互連関性が強かったのは、「深刻な社会不安」と「構造的な失業または不完全就業」だった。
このリスク同士の連関性は、リスクが及ぼす影響の予測をより複雑かつ困難なものにしている。特に気候変動リスクは水危機や食料不足、エネルギー供給の不安定性、低経済成長、移住や安全保障などと密接に結びついており、最終的にどのような形で自社の事業やサプライチェーンに影響を与えるのか、その特定は非常に難しくなっている。このような状況を踏まえると、リスク緩和策だけではなくいかにそのリスクに適応するかという観点もさらに重要性を増していると言える。
【レポートダウンロード】Global Risks Report 2016
【参照リリース】More Walls, More Warming, Less Water: A World at Risk in 2016
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