英国のオズボーン財務大臣は3月16日の予算委員会で、2018年度から一定量を超える砂糖を含有するソフトドリンクに対し、1リットルにつき24ペニー(ペニー=英ポンドの100分の1、約37円)程度の砂糖税を導入する方針を公表した。
このニュースは、英国予算責任局(OBR)がまとめた、インフレ率が政府の負債に及ぼす将来的な利息の上昇に関連する文書で明らかにされたもので、議論を巻き起こしている。導入には10億英ポンドかかると見積られており、税収は年間で5.2億英ポンドになると予測されているため、初年度は税収の2倍の経費がかかることになる。
現案では課税対象となるソフトドリンクの砂糖含有量基準は2段階に分けられている。1段階目は砂糖含有量が100mlにつき5g超から8gまでの場合は100mlにつき18ペニー、2段階目は100mlに対して8gを超えるものには100mlにつき24ペニーが課される。現在市販されている主なソフトドリンクは2段階目に該当する。国内で生産された商品だけでなく、輸入品も対象とする計画と伝えられ、大きなインパクトが予想される。
財務大臣は、新税の導入として、子どもの肥満対策、そして次世代の健康問題だとした。ソフトドリンクメーカーには2年間の猶予期間内に砂糖のカットを含む自社製品の品質改善を行うべきだとし、税を導入する強行する姿勢だ。新税収の使途としては、イングランド地域では小学校に対するスポーツ関連の助成金を倍増し、全ての子どもたちが朝食をとれるよう「朝食クラブ」の大規模な拡大を図る。また、放課後の補習授業等の助成金にも当てるとしている。一方、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド地域ではまだ使途は決まっていない。
ソフトドリンクメーカーは、この決定に対し詳細はまだ解っていないとしながらも法的措置を取る構えだ。欧州司法裁判所に対し、フルーツジュースやミルクシェーキなど他の飲食品がこの税の対象から外れていることを根拠に訴訟を検討している。新税の導入案発表は株価にも大きな影響を与えており、ロビンソンズを販売するブリトビック社やアイアンブリュのメーカーであるA.G. Barr社など主要なソフトドリンクメーカーの株価が大きく下落した。
4月2日に世界で権威のある医学雑誌「ランセット」で発表された研究によると、世界の肥満人口は1975年比で男性で3倍、女性で2倍にまで増加した。特に肥満傾向は米国と中国で高いという。それにより2014年には世界全体で肥満人口の数が痩せすぎの人口の数を上回った。世界保健機関(WHO)は2025年までに2010年比で肥満人口数を同レベルにする目標を掲げているが、この研究によると達成できる可能性は限りなくゼロに近いという。コカ・コーラを始め世界大手飲料メーカーは健康問題への対応をサステナビリティ戦略として掲げてきたが、今回の法規制にどう反論するか。注目が集まる。
【参照ページ】Drinks makers consider legal action against sugar tax
【参照ページ】Sugar tax legal challenge: George Osborne says 'bring it on'
【参照ページ】More obese people in the world than underweight, says study
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