カナダの金融情報メディア大手コーポレート・ナイツは7月19日、世界の主要証券取引所45社に上場する大手企業のサステナビリティ情報開示状況を分析し、証券取引所ごとにランク付けした報告書「Measuring Sustainability Disclosure: Ranking the World’s Stock Exchange 2016」を発表した。発表は今年で5年目。機関投資家が投資先決定に当たり非財務情報を重視する傾向が高まっている中、証券取引所ごとのサステナビリティ開示状況を比較する重要な報告書として毎年注目を集めている。報告書の作成に当たっては、保険世界大手の英アビバがスポンサーとなっている。
報告書は、各証券取引所に上場する大手企業(2016年4月末時点での時価総額20億米ドル以上)世界4,469社のみを対象とし、サステナビリティ関連情報の開示状況を評価。それらを証券取引所ごとに合算して、証券取引所全体のランキング付けを行っている。サステナビリティ関連情報として扱われるのは、2014年度の情報開示における、エネルギー使用量、二酸化炭素排出量(スコープ1及び2)、水使用量、廃棄物量、労災従業員割合、離職率、従業員給与の7項目。これら7項目について、情報開示度合い(50%)、情報開示の年間改善率(20%)、会計年度終了から情報開示までの迅速さ(30%)の3点で合計100%として得点化される。
2016年 世界ランキング
- 1位:ユーロネクスト・アムステルダム(オランダ)
- 2位:ユーロネクスト・パリ(フランス)
- 3位:オーストラリア証券取引所(オーストラリア)
- 4位:ストックホルム証券取引所(スウェーデン)
- 5位:コペンハーゲン証券取引所(デンマーク)
- 6位:ヨハネスブルグ証券取引所(南アフリカ)
- 7位:ヘルシンキ証券取引所(フィンランド)
- 8位:ロンドン証券取引所(イギリス)
- 9位:ドイツ証券取引所(ドイツ)
- 10位:SIXスイス証券取引所(スイス)
- 11位:BMEスペイン証券取引所(スペイン)
- 12位:サンパウロ証券・商品・先物取引所(ブラジル)
- 13位:タイ証券取引所(タイ)
- 14位:オスロ証券取引所(ノルウェー)
- 15位:上海証券取引所(中国)
2016年 アジア地域ランキング
- 13位:タイ証券取引所(タイ)
- 15位:上海証券取引所(中国)
- 17位:マレーシア証券取引所(マレーシア)
- 18位:シンガポール証券取引所(シンガポール)
- 24位:香港証券取引所(中国)
- 28位:東京証券取引所(日本)
- 29位:ムンバイ・ナショナル証券取引所(インド)
- 30位:台湾証券取引所(台湾)
- 32位:フィリピン証券取引所(フィリピン)
- 34位:インドネシア証券取引所(インドネシア)
世界ランキングでは、ヨーロッパの証券取引所がほぼ独占する結果となった。ヨーロッパでは、証券取引所が非財務情報の開示義務を課しているところが多く、情報開示レベルが高くなっている。米国では、NASDAQが25位、ニューヨーク証券取引所が26位と振るわなかった。アジア地域の首位はタイ証券取引所。昨年の17位から4位順位を上げた。アジアの金融市場の中心を形成しつつあるシンガポールや香港、存在感を高める上海もアジア地域の中で高いランクとなった。
東京証券取引所は、2013年には世界3位であったがそこから年々順位を落とし、2014年に12位、2015年に21位、そして今年は28位となった。東京証券取引所は、今回の評価対象企業数が412社と多い。これはニューヨーク証券取引所の940社に続く世界2番目の多さで、NASDAQの392社を上回る。東京証券取引所の評価が芳しくない理由は、離職率の情報開示が2%、労災従業員割合が10%と人事関連情報の開示が他の世界主要取引所に比べ著しく低いこと。また、エネルギー、二酸化炭素、水、廃棄物などの情報開示は50%から80%と比較的高いが、世界上位ランクしている企業はそれをも大きく上回っている。さらに、情報開示の年間改善率でも、昨年からの改善が非常に少なく、この項目でも得点できなかった。
対象企業数でNASDQQに続く、世界4位上海証券取引所(358社)、同5位香港証券取引所(264社)は、それでも東京証券取引所を上回る情報開示度となってきている。
今回の報告書のデータ対象は2014年度のもの。それ以降のここ2年ほどで、日本を含むアジア諸国では非財務情報開示に取り組む政策が生まれており、早くも来年のランキングが気になるところだ。
【報告書】Measuring Sustainability Disclosure: Ranking the World’s Stock Exchange 2016
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