米環境保護庁(EPA)と米司法省は8月18日、米バイクメーカー大手ハーレーダビットソン(ハーレ―)との間で、環境規制に違反する同社製品の販売中止及び販売済製品の自主回収をするとともに、今後は大気浄化法(CAA)基準を満たす認証を獲得した製品のみを販売することで合意したと発表した。さらにハーレーに対して民事制裁金として1,200万米ドルの罰金を科すすとともに、同社との間で、地域レベルでの環境改善策として従来型の薪ストーブを大気汚染の少ない新型ストーブへと買い換える活動に300万米ドルを拠出することで合意した。今回の合意内容はコロンビア地区連邦地方裁判所に提出されており、30日間のパブリックコメント期間を経て、裁判所が受理の可否を判断する。今回の案件は、メーカーに対するEPAの定期検査の中で発覚した。
ハーレーは2008年以降、同社製造の二輪車向けに、二輪車のエンジンパワーやパフォーマンスを向上させるとともに炭化水素や窒素化合物(NOx)の排出量を上昇させてしまう二種類のチューナーを同社及び米国中のディーラーを通じて販売してきた。これらのチューナーは「スーパーチューナー」と呼ばれており、政府の発表によるとすでに約34万個が販売されている。スーパーチューナーを装着した二輪車は、同社が当初EPAに報告した以上の大気汚染物質を排出していたという。大気浄化法では、全ての自動車・二輪車メーカーに対してEPAが定める環境基準に基づく製造を課すとともに、米国内で販売される全ての自動車・二輪車も同様にEPA環境基準を満たさなければならない。また同法の下では、メーカーは環境基準を満たした部品をあとで改変させる装置を製造及び販売することが禁止されるとともに、消費者が独自に環境部品を取り外したり改造したりすることも禁止されている。今後は、環境基準を満たさない二輪車の販売は禁止されるとともに、アフターマーケットでもスーパーチューナーのような二輪車性能改造装置の販売は禁止される。
今回の合意文書に基づき、ハーレーは8月23日までに全ての違法部品の販売を終了させると同時に、過去の購入者に対して全米での買い戻しプログラムをスタートさせる。今後同社が全米で製造及び販売するチューナーには全てカリフォルニア州大気資源局(CARB)が発行する認証の取得を義務付け、EPA基準を満たすことを保証させる。さらに、同社はCARB認証を受けたチューナーを装着した状態での走行試験が義務化され、試験結果をEPAに提出しなければならなくなった。その上、同社が今後米国外で販売するスーパーチューナーに対しては米国内で使用できないことを示すラベル表記が課された。
また、同社が2006年から2008年の間に販売した二輪車1万2,000万台以上が、大気浄化法に基づくEPA基準を満たしていないことも確認された。大気浄化法の制定時にはメーカー各社に対してEPA基準の適合証明書取得のための車種リストの提出が課されていたが、ハーレーはその車種をリストに加えていなかった。今後は米国内向けに販売する全車種に対しては必ずEPA基準証明を取得するよう要求した。
炭化水素や窒素化合物は、有害な地上オゾンの原因となり、さらに窒素化合物はPM被害の原因にもなる。これらの汚染物質は喘息等呼吸器系疾患の重大な健康被害を及ぼす可能性があり、特に子供や高齢者、呼吸器系の既往症のある人々には大きな影響を及ぼす危険性がある。
【参照ページ】Harley-Davidson to Stop Sales of Illegal Devices that Increased Air Pollution from the Company’s Motorcycles
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