米国テネシー川流域の総合開発を手掛けるテネシー川流域開発公社(TVA)は10月19日、テネシー州東南部レイ郡に位置するワッツバー原子力発電所2号機(1,218MW)の運転を開始したことを発表した。アメリカで新たな原子力発電所が運転開始したのは、1996年に同発電所1号機(1,121MW)が運転開始して以来20年ぶり。完成した2号機は、1号機と同じ加圧水型原子炉(PWR)で、ウェスティングハウス製。1970年代に建設が開始していたため、最先端の第3世代原子炉ではなく、第2世代の原子炉。
同機の建設が始まった1973年、アメリカは原発建設の最盛期を迎えていた。しかし、1979年のスリーマイル島での原発事故、1986年のチェルノブイリでの原発事故を受けて、アメリカの原子力産業は停止状態に。規制強化に伴って原発にかかる費用が急上昇し、TVAは経営破綻寸前まで追い込まれた。そのため、ワッツバー原子力発電所2号機の建設計画は、1980年代後半に一時中止となった。
しかし2000年代、環境規制の強化を受けて、石油や石炭などの化石燃料の代替として再び原子力が着目されるようになった。連邦政府のローン保証を用意して原発を推進したブッシュ政権の動きは「原子力ルネサンス」と呼称された。この潮流に乗り、TVAは2007年にワッツバー原子力発電所2号機の建設を再開。2011年に福島第一原子力発電所の事故が発生したことを受け、連邦政府の原子力発電規制当局である米原子力規制委員会は、原発設計に関し9ヶ所を修正し、そのうち2ヶ所は建設中のワッツバー原発2号機建設にも該当し、設計のやり直しがなされた。昨年末に2号機は米原子力規制委員会から40年間の運転許可を得、この日の完成に至った。
当初の予算をはるかに上回る47米ドル(約4,900億円)という費用を要したワッツバー原子力発電所2号機だが、TVAは同機が今後40年以上にわたって低コストで環境負荷の低い電力を供給するとしている。同発電所の2機によって発電される電力は、アメリカ南部複数州の130万世帯分にあたる予定。
米国では、福島第一原子力発電所事故の後も、原子力発電所は稼働を続けているものの、ここ20年間で原子力発電の新規稼働はなく、原子力発電割合は20%に留まっていた。運営主体のTVAは、原発稼働により温室効果ガス削減効果が期待できるとしている。
【参照ページ】Watts Bar Unit 2 Complete and Commercial
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