【国際】Arabella Advisors「世界ダイベストメント報告書2016」発表。化石燃料ダイベストメントは5兆ドルに 2016/12/27 最新ニュース

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 米国を中心に財団の資産運用やインパクト投資を手掛けるArabella Advisorsは12月13日、化石燃料からの投融資引揚げ(ダイベストメント)とクリーンエネルギー投資の最新動向を世界的視野でまとめた報告書「Global Divestment Report 2016」を発表した。同報告書の発表は今回が3回目。報告書では、パリ協定から1年が経過し、機関投資家および個人の化石燃料企業からのダイベストメントが76ヶ国で総計5兆米ドルに到達。過去15か月間で2倍に増加したと発表した。

メソドロジー(手法)

 Arabella Advisorsは、化石燃料からのダイベストメントを公言している機関投資家をリサーチし、その機関投資家が運用する資産総額全体を足し上げ、世界全体のダイベストメント資産金額とした。そのため、機関投資家の運用資産の内、実際にダイベストメントを行う運用がなされている資産ではなく、機関投資家の保有資産全額が使われている点に注意が必要だ。また、化石燃料からのダイベストメントには、石炭採掘関連企業からのダイベストメント、石炭、石油、天然ガス全てからのダイベストメントなど様々なレベルがあるが、化石燃料絡みで何らかのダイベストメントを宣言していれば、「化石燃料ダイベストメント」として認定した。ダイベストメントを決定したものの実施していない機関等については統計から除外した。一方、今回の調査は、あくまでダイベストメントを公言している機関投資家のみの数値を使っているため、Arabella Advisorsは、公言していない機関投資家のダイベストメントも含めると実際の数値はもっと大きくなるとしている。

 今回の調査では、個人のダイベストメント行動も調査対象としているが、個人については「Divest-Invest Individual」というオンライン調査上で、ダイベストメントをしていると回答した人の数値を用いている。個人の投資金額では、同調査の中で金額を回答する選択肢があったが、多くの回答者が空欄としたため、正確な実態はつかめていない。

世界的なダイベストメント発表動向

 ダイベストメントは、当初は米国の学生団体やNGOによる運動であったが、2016年には76ヶ国の機関投資家や個人投資家がダイベストメントを表明するまでに拡大。このダイベストメント運動に対しては金融業界からは、「化石燃料関連企業を含まないポートフォリオは投資分散が不十分」「資産運用の受託者が受託者責任を果たしていない」などと批判があったが、2015年COP21のパリ会議で気候変動を産業革命前比で2℃に抑制する目標が掲げられてから僅か3ヶ月で新しく22の機関投資家が174億米ドルの化石燃料からのダイベストメントを表明。公的機関においては、気候変動リスクの情報公開に関するフレームワーク構築を検討する動きが出ていたり、ドイツのベルリン、米国カリフォルニア州、デンマークのコペンハーゲンといった地方自治体によるダイベストメント発表等が行われていたりという動きもある。金融商品やツール開発も盛んに行われており、FTSE、MSCI、STOXXといったインデックス会社、ブラックロック、ステート・ストリート、アムンディ等の運用会社が低炭素関連ファンドを欧米にて立ち上げている。

クリーンエネルギー投資の動向

 ダイベストメントを表明する機関の多くは、再生可能エネルギー、省エネの促進、環境技術といった気候変動対策の分野に投資を行なっている。Rockefeller Brothers Fundは南アフリカ、エジプト、セネガル、ガーナにおいて風力、太陽光プロジェクトを実施するMainstream Renewable Power社へ1,000万米ドルを投資。オランダの年金基金PFZWは1,870億米ドルのダイベストメント宣言と同時に、全ポートフォリオの12%に当たる220億米ドル以上を気候変動対策として水資源、食の安全分野に投資すると発表した。

 また、気候変動の影響を受けやすい地域へのクリーンエネルギー投資も公的機関、民間により実施されている。Developing World Markets社が組成したOff-Grid Renewable Energy債は、途上国の送電線網を利用しない電力会社や金融機関に向け7,000万米ドルの資金調達を行った。

 世界的には再生可能エネルギーの発電設備容量は石炭を越え、太陽光等の発電原価は化石燃料のそれに迫っている。クリーンエネルギー投資は急速に規模を拡大しており、2015年の全アセットクラス、全業種における再生可能エネルギー分野の年間新規投資総額は3,290億米ドルに上った。

世界的な化石燃料反対運動の潮流

 化石燃料産業への補助金終了を訴えたキャンペーンは世界を牽引し、政策的にも財務的にも当該産業にとって大きな痛手となった。G7は2025年までに石炭、石油、天然ガス企業への政府補助金を排除する方針を出し、世界銀行やIMFなど国際機関は、発展途上国政府が化石燃料分野に拠出する助成金を削減する支援を行なっている。ソーシャルメディアを利用したキャンペーンではハッシュタグを付し、#StopFundingFosssilsや#ExxonKnewが世界的に活用されている。

 また、大規模掘削案件に対する草の根運動も過去数年いくつか勝利を収めている。オーストラリアでは新規の石炭開発に反対した活動が行われ、数千に上るボランティア等が7つの国際機関の支援を受け活動を展開。銀行による融資を断念させるという実績を上げている。
 

化石燃料業界の傾向

 分析によると、大手石炭100社と大手石油ガス100社の過去十年の累積利回り中央値はマイナス10%。一方、大手クリーンエネルギー企業200社はプラス106%だった。世界的な統計では、まだ年間で1.8兆米ドルが化石燃料分野に投資されているが、累積利回りの過去実績を鑑みると、この資産投下は誤りだとしている。アメリカでは2015年1月から2016年10月までに4つの巨大石炭企業が倒産。原油価格の低迷もありシェールガス分野など石油ガス関連企業では105社が倒産。105社のの有担保・無担保債務は合わせて680億米ドル近くであったという。

 同報告書の作成にあたっては、同分野で活動する国際NGO350.orgやCarbon Tracker Initiative、環境NGO老舗のAs You Sowなど複数のNGOが協力している。日本では、350.org Japanより、同報告書の発表が12月12日になされた。これに関連し、350.org Japanは12月19日、市民が自分の自分が預金を預けている銀行が気候変動リスクを考慮した投資・融資を行っているかを調べられるウェブサイト『MY BANK MY FUTUREキャンペーン』を公開した。

【報告書】Global Divestment Report 2016
【参照ページ】350.org調査報告書「世界に広がる化石燃料ダイベストメントと自然エネルギー投資の傾向」発表

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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