民間航空分野の国連機関・国際民間航空機関(ICAO)は10月11日から13日、メキシコシティで「航空・代替燃料ハイレベル会合(CAAF)」を開催。化石燃料由来のジェット燃料に替わる代替燃料を2050年までに「顕著な割合に」にまで広げるとしたビジョンを採択した。今後、政府、国際機関、環境NGO等で構成するICAOタスクフォースを設置し、代替燃料として認められるサステナビリティ基準を設定していく。しかし、化石燃料からバイオ燃料等の代替燃料への転換を、環境NGOが猛烈に反対したことが話題を呼んでいる。
ICAOには1947年に発足し、本部はカナダ・モントリオール。現在、世界191ヶ国・地域の政府が加盟している。ICAOが、代替燃料に関する会合を開くのは今回が2回目。前回の第1回は2009年11月に開催され、航空分野の二酸化炭素排出量を削減するため、代替燃料の利用を拡大する大きな方向性が確認され、「ICAO Global Framework for Aviation Alternative Fuels(GFAAF)」が採択された。2回目となる今回は、2050年までの長期ビジョンを定めるために開催され、加盟国のうちドイツ、フランス、イタリア、スペイン、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、ロシア、日本、韓国、中国、シンガポール、インドネシア、インド、パキスタン、サウジアラビア、UAE、オーストラリア、米国、カナダ、メキシコ、ブラジル、アルゼンチン、グアテマラ、ニカラグア、パナマ、ドミニカ、タンザニアの29ヶ国と、EU、国際航空運送協会(IATA)等の関連機関が出席した。
2050年ビジョンの原案は、ICAO事務局が作成し、今年8月に公表。その中には、航空機燃料に占める代替燃料の割合を、2025年までに5%、2040年までに32%、2050年までに50%とするとし、2050年の年間代替燃料使用量を285Mtにする数値目標も盛り込まれていた。これに環境NGOが一斉に反発。ハイレベル会合の場でも、最終的にこの数量目標は撤回され、「顕著な割合に」するという文言に変更された。
環境NGOが今回のビジョンに反対するポイントは、代替燃料してバイオ燃料が大量生産されると、燃料となるパーム油やサトウキビ等の農地確保による森林破壊、化学肥料や農薬散布による健康・環境被害、水源汚染、食糧価格の不安定化等、多くの問題が引き起こされるということにある。ハイレベル会合が開催される直前の10月6日、世界の環境NGO96団体が、2050年ビジョンの数値目標に反対する共同声明を発表。有力な国際NGOであるオックスファム・インターナショナル、FoEインターナショナル等もこれに参加していた。
ICAOのハイレベル会合は、数値目標を撤回したものの、それ以外の2050年ビジョンの内容は承認。ICAOタスクフォースを中心に研究や議論を継続し、2025年までに第3回航空・代替燃料ハイレベル会合を開催し、2050年ビジョンの数値目標の具体化を図ることで合意した。
【参照ページ】ICAO Conference on sustainable alternative fuels agrees on new 2050 Vision to guide future development and deployment
【参照ページ】ICAO’S AVIATION BIOFUELS PLANS: A DANGEROUS DISTRACTION
【参照ページ】
Second ICAO Conference on Aviation and Alternative Fuels (CAAF2)
【参照ページ】Countries reject plans for the expansion of aviation biofuels
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