【エネルギー】世界の風力発電導入量と市場環境 〜2017年の概況〜 2018/02/20 体系的に学ぶ

風力発電は再生可能エネルギーの中で最大規模

 大きな風車が象徴的な風力発電。風力発電は気象現象として気圧差から発する風力を、風車で捉えてタービンを回し、その動力エネルギーを電力エネルギーに変える発電手法です。従来の化石燃料エネルギー型発電と比べ、二酸化炭素の排出量が著しく小さく、気候変動を抑制する効果が大きいと言われていまう。


(出所)IEAのデータをもとに、ニューラル作成

 一般的に再生可能エネルギーには、太陽光発電、太陽熱発電、風力発電、地熱発電、潮力発電、バイオマス発電、廃棄物発電の7種類がありますが、過去の導入量実績は大きく異なります。再生可能エネルギーの中で最大規模の発電量を誇るのは風力発電。2015年の世界全体での風力発電電力量は年間84万GWh、世界の年間総発電量の3.4%を占めています。また、再生可能エネルギー発電量全体を分母とすると、約半数の49%を占めています。風力発電の特徴のひとつに海上での発電が可能だというものがあります。そのため、洋上風力発電は、世界の広大な海を発電所に変えることができるため、候補地となる面積が広大。風力発電は、今後、再生可能エネルギーの中で最も伸びる分野だとも言われています。

風力発電の増加率は過去20%以上を超え、今後も増加傾向は続く


(出所)GWECのデータをもとに、ニューラル作成

 世界の風力発電に関する統計は、世界風力エネルギー会議(GWEC)がデータを集めています。GWECの報告書によると、風力発電の設備容量は、2001年から平均20%以上の年間成長率で増加してきました。また今後も2020年まで約13%の成長率で伸びるという予測も立てています。風力発電設備が20%成長を続けているということは、産業としても20%伸びているということです。つまり、風力発電の設備メーカー、建設事業者も同様に業績が拡大し、雇用も創出されています。

中国が世界を牽引


(出所)GWECのデータをもとに、ニューラル作成

 世界の風力発電を牽引しているのは中国です。風力発電の歴史を辿ると、2000年前後から米国、ドイツ、スペイン、デンマークの4カ国がリードしてきました。特にドイツ、スペイン、デンマークは環境政策の一環として再生可能エネルギーに注力、風力発電の建設が急速に進みました。2005年からはそれに加え、英国、イタリア、フランス、ポルトガル、スウェーデン、オランダといった他のEU諸国も追随。またこの頃から経済発展に応じて急速に電力需要が増加した中国とインドでも導入量が増えていきます。

 日本は2004年時はイギリスに次ぐ世界8位の風力発電国でした。しかし、その後は新規導入量が停滞。2017年時点では世界19位に転落しています。現状の速度だと、急速に追い上げているアイルランド、ルーマニアにすぐに抜かれそうです。

 今日、風力発電はEU諸国と北米、そして世界の人口大国である中国、インドが牽引しています。また、ブラジル、トルコ、ポーランド、南アフリカ等の新興国も積極的に風力発電を伸ばしています。

欧州では風力発電が広く浸透


(出所:GWEC、IEAのデータをもとに、ニューラル作成)

 これまで風力発電の中心地域は欧州でしたが、2015年に中国がEU28カ国全体の風力発電設備容量を超え、世界のリーダーとなりました。2017年では、中国は、世界の全ての風力発電容量の3分の1以上を有しています。IEAによる2015年の風力発電割合は中国は3.2%。EUの9.3%には及びませんが、日本の0.5%より遥かに高い水準です。同じく風力発電導入量が増えているインドは、2015年にスペインを抜き世界第4位となりました。

 洋上風力の分野では、世界の9割以上の設備はEU諸国に偏在しています。特に英国が牽引しており、英国だけで世界の4割弱を占めています。また、英国の風力発電設備容量に占める洋上風力の割合も36%と高く、洋上風力に注力している様子が見て取れます。初期に風力発電を牽引したデンマークでは、昨今は伸びが低下しているように思えますが、すでに風力発電だけで国の発電総量の48.8%を占めていると言われれば納得がいきます。デンマークの洋上風力割合も23.2%と高く、洋上風力を推進しています。英国とデンマークにドイツを足した3ヶ国の洋上風力世界シェアは約70%、洋上風力は北海・バルト海に集中しています。米国でも洋上風力発電所第1号が誕生し、今後の動向が期待されています。

世界の風力発電メーカーの顔ぶれ

 風力発電と太陽光発電の違いは、機器の構造にもあります。太陽光発電は太陽光パネルとバッテリー、それを支えるフレームという非常にシンプルな構造をしているのに対し、大型化が進む風車設備は、電気機器、制御装置、駆動部、ブレードなどが凝縮された電気工学・機械工学の結晶。大型風車一基あたりの部品は1万点近くにものぼり、自動車産業にも匹敵すると言われています。そのため、風力発電産業は産業としても大規模となり、多数の雇用を生むと言われています。


(出所)Wind Power Monthly、2016年の数値


(出所)Wind Europe、2017年の数値

 世界の風力発電メーカーの競争は激化しています。上位を占めるのは欧州勢で、1位は老舗デンマークのヴェスタス。1945年に農機具メーカーとして誕生し、1979年に風力発電機を製造開始。2016年時点で累積で82.9GWの風力発電機を設置。2014年には世界最大8MWの風力タービンV164の試験発電を開始し、歴史・技術力ともに高い実績を誇っています。2位は独シーメンス。洋上風力で特に強い存在感を示しており、欧州の洋上風力の約3分の2はシーメンス製です。シーメンスの風力事業部門は、スペイン大手ガメサを吸収合併し、シーメンス・ガメサ(SGRE)となっています。

 3位は、世界的な総合電機メーカーのGE。2002年のエンロン事件を機にEnron Windを買収し風力発電分野に参入しました。4位は中国Goldwind、高まる中国内需を後ろ盾にしつつ、低コスト戦略で海外市場でも力を伸ばしています。5位には独エネルコン、7位独Senvion、8位中国United Power(聯合動力)と風力発電の導入量が多い国の企業が並びます。最近ではドイツのNordexも伸びてきました。新興国からは、9位中国のEnvison Energy(遠景能源)、10位のインドSuzlonの姿もあります。

 風力発電ビジネスは、より効率的に発電ができる大型化の時代に突入しています。日本で大型風力発電基を手がけているのは、三菱重工業、日本製鋼所、日立製作所の3社。三菱重工業はかつて10位以内にランクインしていましたが、三菱重工業と日本製鋼所はすでに新規販売を停止しています。近年は欧米勢に引き離されるとともに、中国勢にもおされ、残念ながらマーケットシェア上位企業から姿を消してしまいました。日本国内の風力発電にも海外製のものが多数採用される状況が続いていましたが、2011年以降は日本製の採用割合が半数を超えています。日本企業が生き残るためには、海外での販売力の強化や、海外M&Aが必要となります。実際に、三菱重工業は世界トップのヴェスタスと洋上風力発電事業に特化した合弁会社「MHI Vestas Offshore Wind A/S」を2014年4月にデンマーク・オーフス市に設立。両社の洋上風力発電設備事業を分割集約しました。最近では戸田建設も浮体式洋上風力発電の分野に参入しています。

 それとは別に、小型風力発電に市場もあります。こちらは、非常に多くの企業が参入しています。

風力発電と証券化ビジネス

 繰り返しになりますが、風力発電は太陽光発電と異なり、大規模投資事業となります。そのため、風力発電の建設は、従来は国家予算がサポートして実現していました。しかし欧米ではすでに新たな時代に突入しています。民間資金の活用です。世界には国家予算の何倍もの投資資金が運用されています。投資家にとって、魅力的な投資先とは、長期にわたって安定的にキャッシュを生み、リターンをもたらしてくれる事業。人間社会にとって今後数十年は電気が必要であることは確実で、電気料金が大きく減少するリスクも少なく、売電事業は投資家にとって魅力的に映る事業です。さらに、近年、投資家たちは社会にとって価値のある事業を投資先に選定する傾向があり(証券化の仕組み)、売電事業は投資先としてますます魅力的になっています。

発電事業の証券化
(出所:環境省)

 大規模な風力発電事業の資金調達には、証券化という金融手法が活用されています。証券化とは、プロジェクト単位で資金調達を行う手法のことです。発電事業を運営する企業(例えばソフトバンク)とは切り離された特別目的会社(SPV)を設立して倒産リスクを隔離し、SPVが発電事業を行います。こうすることで、今後発電事業を運営する企業がどうなろうとも、投資家は安心して発電事業からの収益を期待できます。SPVには、事業を運営する企業の他、投資銀行や商社、ファンドが出資し、さらに銀行がシンジケートローンを組んでレバレッジドファイナンスを実施します。こうして、年間キャッシュフローの何倍もの大規模な資金調達が可能となっています。近い将来、国内でも再生可能エネルギーを対象とした上場ファンドが誕生するとも予想されます。

著者プロフィール

夫馬 賢治

株式会社ニューラル 代表取締役社長

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