【金融】鉄道・運輸機構が「サステナビリティファイナンス・フレームワーク」策定 〜仕組みと狙い〜 2019/04/16 事例を見る

 国土交通省の所管で、鉄道施設の建設や、国内旅客船及び内航貨物船の建造等を行っている独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)。同機構は2017年、神奈川県央エリアから都心へのアクセスを改善する神奈川東部方面線の建設資金の調達のためグリーンボンドを発行。これが、環境省の「グリーンボンド発行モデル創出事業に係るモデル発行事例」の第1号案件となり話題を呼んだ。神奈川東部東部方面線のうち、相鉄とJRを結ぶ相鉄・JR直通線は2019年11月の開業が決まっており、相鉄と東急を結ぶ相鉄・東急直通線は2022年度下期の完成を予定している。

 その鉄道・運輸機構が、再び新たなアクションを発表した。2019年1月、ボンドだけでなくローンまで含めた「サステナビリティファイナンス」フレームワークを策定。ノルウェーの第三者評価機関DNV GLから環境インパクトと社会インパクトの両面で検証を受けるとともに、気候変動インパクトについては、厳格な基準を設ける気候債券イニシアチブ(CBI)からプログラム認証も獲得した。プログラム認証については、世界15例目でアジア初、鉄道分野では米国、フランスに次ぐ3番目の取得になる。このアクションには、数多くの日本初が含まれている。まず、単発の債券発行や借入だけでなく、今後の負債性資金調達に対し包括的に適用するフレームワークを策定し、国際的な評価機関から検証を受けたのが日本初。さらに、CBI認証を取得したのも日本初で、これまで単発のグリーンボンド発行でもCBI認証を取得した日本の発行体はなかった。

 今回、CBI認証を取得したことについて、鉄道・運輸機構の村松功一・資金企画課課長は、「最近では、欧州を中心にタクソノミーの必要性、その原則や判断基準について厳格化する動きが高まっている」と背景を説明する。「当機構は、将来的にも多額の資金調達を予定しており、発行体としてこうした規制強化の動きを意識したファイナンスが求められている」と村松氏は続けた。また、みずほ証券の香月康伸シニアプライマリーアナリストも「同機構の画期的な取り組みは、ESG投資に注力する市場関係者から良い意味でサプライズの声が聞こえる。厳格性を求める動きは今後強まる方向にある」と言う。

 今回、鉄道・運輸機構は、「サステナビリティファイナンス・フレームワーク全体」で「検証」や「認証」を受けたことには、大きな意味がある。今回は同機構の中心事業で自らが資金調達を行う「鉄道施設の建設」と「船舶共有建造」の2つに対して、DNV GLから環境インパクトと社会インパクトが高いという検証、すなわち「お墨付き」を得た。結果、同機構が資金調達して実施する全業務は、グリーンとソーシャルの適格性があるということになり、同機構が今後発行する財投機関債(ボンド)と実施する市中借入(ローン)は全て、サステナビリティボンドやサステナビリティローンというラベルを貼ることが可能となった。ちなみにサステナビリティボンドとは、グリーンボンドとソーシャルボンドの両方の性質を持つものを指す。また5つのSDGs目標の達成にも貢献することが確認されている。

  • 目標8:働きがいも経済成長も
  • 目標9:産業と技術革新の基礎をつくろう
  • 目標11:住み続けられるまちづくりを
  • 目標13:気候変動に具体的な対策を
  • 目標14:海の豊かさを守ろう


【参照】DNV GL 検証報告書

 「検証」というスタイルでサステナビリティボンドを発行したのも日本の発行体として初。国際資本市場協会(ICMA)が定めるグリーボンド原則(GBP)、ソーシャルボンド原則(SBP)、サステナビリティボンド・ガイドライン(SBG)では、外部レビューの手法として、「セカンドパーティー・オピニオン(SPO)の取得」「検証(Verification)」「認証(Certification)」「レーティング(Rating)」の4 つが認められている。このうち「検証」は、発行体が定める自主基準や自主フレームワークに対し、独立した観点で外部基準と整合性があるとお墨付きを与えるもの。今回、同機構はDNV GLからこの検証を受けた。さらに本来ならばこれだけでも十分なのだが、厳格なCBI からもグリーン性に対してCBI自身が定める基準をクリアしたという「認証」を得ることで、別のお墨付きも得た。

 DNV GLが検証時に参照した外部基準は、CBIの「気候債券スタンダード(CBS)」、ICMAのGBP、SBP、SBGと「持続可能な開発目標へのハイレベルマッピング」、環境省の「グリーンボンド・ガイドライン」、LMA とAPLMA が策定した「グリーンローン原則」の7つ。気候変動や大気汚染、地域社会に必要な交通インフラの確保、コスト性(Affordability)等の観点でチェックされた。

 今回の検証及び認証の取得により、同機構が発行する財投機関債とローンは、今後全て「サステナビリティボンド」及び「サステナビリティローン」となる。資金調達の規模は、2019年度だけでボンドが1,170億円、ローンが487億円を予定している。サステナビリティローンはすでに3月にシンジケートローンとして実施。みずほ銀行がアレンジャー・エージェントを務め、滋賀銀行、農林中央金庫、野村信託銀行、八十二銀行、武蔵野銀行等の銀行が応じた。ボンドだけでなく、ローンでも「サステナビリティ」ラベルを取りに行ったことについて、村松氏は「負債性資金調達にはボンドだけでなくローンもあり、ローンでも同様にサステナビリティとすることが自然と考えた」と語る。また、狙った効果としては「投資家層の拡大を期待した」と説明。実際に、今回のローンには、これまで同機構に融資を実施していなかった銀行も参加した。

著者プロフィール

夫馬 賢治

株式会社ニューラル 代表取締役CEO

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