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【国際】人間活動により動植物100万種が絶滅危機リスク。気候変動も原因。国際機関IPBES報告

 世界132カ国参加の「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)」は5月6日、世界の生物多様性の現状をまとめた初の包括的な政府間報告書「IPBES Global Assessment Report on Biodiversity and Ecosystem Services(生物多様性と生態系サービスに関するIPBESグローバル評価報告書」を発行。人類活動によって今後数十年間で、史上最大の約100万種の動植物種が絶滅危機リスクに陥ると警告した。

 IPBESは、94カ国の賛同を得て2012年に発足。日本も加盟している。国連環境計画(UNEP)が事務局を務め、国連教育科学文化機関(UNESCO)、国連開発計画(UNDP)、国連食糧農業機関(FAO)も参画している。他の国連機関からの参画も常にオープンにしている。今回の報告書は、第7回の年次総会の中で採択された。報告書の作成には、50ヶ国145人の専門家が過去3年かけて執筆。455人の専門家も協力した。15,000以上の情報源から情報収集した。地球では、自然環境と生物の生存・多様性が、過去1000万年の平均に比べ数十倍または数百倍以上の速度で破壊されている。対策には、現状を少し改善した程度ではもとに戻らず、抜本的な社会全体の変革が必要だと強く警告している。変革がなされない場合は、2050年以降も現在のような状況が続くという

 陸上ではすでに、在来種が1900年以降20%以上も絶滅。現在も40%以上の両生類、約33%のサンゴや海洋哺乳類も絶滅の危機にある。昆虫についてはまだ把握が難しいが、約10%が絶滅危惧にあると推定されている。脊椎動物でも、16世紀からすでに680種が絶滅し、9%を超える家畜哺乳類も絶滅もした。現在も約1,000種の脊椎動物が絶滅の危機にある。

 今回の報告書は、絶滅の危機を増加させる背景には、二酸化炭素排出による気候変動があると指摘。気候変動が生態系サービスの最も大きな破壊となるケースも複数あるという。

人口

 1970年以来、37億人から76億人に増加

エネルギー

 地球全体で、再生可能および再生不可能なエネルギーを毎年約600億トン消費しており、1980年から約2倍に増加

生態系

 野生の哺乳類のバイオマス(生物資源の量)は82%減少

人間による活動で著しく改変された陸地は75%、海域は66%

 自然のエコシステム(生態系)は47%衰退
 動植物は25%の種が絶滅の危機
 具体的には、シダ類60%以上、両生類40%以上、海性哺乳類33%、造礁サンゴ33%
 針葉樹・双子葉植物30%以上、陸生哺乳類20%以上、甲殻類動物20%以上、鳥類10%以上、硬骨魚類約10%、昆虫類約10%等、多くの種が絶滅の危機にある。

気候変動

 2017年の世界の平均気温差は、産業革命前との比較で1℃上昇
 過去20年間の世界の年間平均海面水位は最大で3mm上昇し、1900年以降では平均16〜21cmの上昇
 1980年以降、温室効果ガスの排出量は100%増加した。2℃の温暖化により絶滅の危機に瀕しする種の推定割合は5%。温暖化が1.5〜2℃の場合でも、陸生種の範囲は大幅に減少すると予測されている。

スペース

 都市部は1992年以来2倍に拡大
 土地は全体の4分の3が農地、コンクリート被覆地、ダム貯水池等に変換
 海洋は3分の2を漁業、航路等に利用
 河川・湖沼は4分の3を作物栽培や畜産に使用
 以上のように、多くのスペースが人間によって占領され、結果的に50万種以上が長期的な
 生息地を十分に確保できておらず、絶滅に繋がると予測されている。

森林

 1970年以来、原木の生産量は45%増加
 農地の拡大による森林の消滅は50%

海洋・河川・湖沼の汚染

 80%以上の産業排水等が、海、河川、湖沼へと、何の処理もされずに投棄されている
 この中には重金属、有毒汚泥液その他の専業廃棄物が3~4億t含まれている。
 プラスチック廃棄物は1980年以来10倍に増え、86%のウミガメ、44%の海鳥、43%の海洋哺乳類に影響

食肉と乳製品の生産

 農地全体の83%を使用
 農業関連の温室効果ガスの58%を排出
 水質汚濁原因の57%に相当
 大気汚染原因の56%に相当
 淡水取水量の33%を使用
 しかし結果的には、たんぱく質の35%、カロリーの18%を提供しているに過ぎない。

農業と食糧

 1970年以来、作物生産量は300倍に増加
 23%の土地が、劣化により生産性が減少
 75%の作物類が動物による授粉を通して生産されるため、絶滅・減少により最大で年5,770億米ドル(約63.4兆円)分の損失リスクがある。
 不凍地の12%が作物生産に使われている。
 不凍地の25%が家畜の放牧地として使われている。

 以上のような状況から、2010年に名古屋市で開催された「国連生物多様性条約第10回締約国会議(COP21)」で採択された戦略計画「愛知目標」の内、2020年までの短期目標20項目では、十分な進歩が見られた項目もあったが、全体としては達成できない可能性が高い。さらに国連「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の内、今回評価の対象となった目標の半数が達成できないと見られている。

 報告書では、消費が自然に及ぼす影響についての意識の向上、地域環境の保全、持続可能な地域経済の推進そして劣化した地域の回復のためには、政治的行動と社会的イニシアチブが求められるとし、農業、海洋システム、水、都市、エネルギー・インフラに関する持続可能かつ生物多様性への配慮が優先されうる具体案を挙げている。例えば農業分野では、食料安全保障、生計手段の確保、種の保全および生態学的機能を併せ持つ多機能・横断的な計画や管理を、海洋においては、エコシステムをベースとした漁業や海洋保護区等を例示している。

 さらに政策担当者向けのバージョンでは、経済と金融システムに根本的な改革を行い、貧困や不平等に取り組むことが持続可能な社会のためには不可欠だとしている。また環境・生物多様性保全のための補助金や税金の改革、貿易協定やデリバティブ市場の改革を通しての保全、さらには政府機関の異なる分野にわたる縦断的な取り組みの有効性等を訴えている。

 しかしIPBES議長でありイーストアングリア大学ティンダル気候変動研究センターのロバート・ワトソン卿は、「ローカルからグローバルまでのあらゆるレベル、そしてパラダイム、目標、価値観を含めて、技術的、経済的、社会的要素を網羅するシステム全体の抜本的な再編成が不可欠だ」と述べ、より大規模かつ包括的な変革が必要であると強調した。

【参照ページ】Human society under urgent threat from loss of Earth's natural life
【参照ページ】Nature’s Dangerous Decline ‘Unprecedented’; Species Extinction Rates ‘Accelerating
【報告書】IPBES Global Assessment Summary for Policymaker

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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