【国際】世界のアルコール消費量、東南アジアや西太平洋の中低所得国で急増。研究者論文 2019/06/07 最新ニュース

【国際】世界のアルコール消費量、東南アジアや西太平洋の中低所得国で急増。研究者論文 1

 医学誌ランセットに掲載されたドレスデン工科大学のヤコブ・マンシー臨床心理学研究員らが調査・執筆した論文「Global alcohol exposure between 1990 and 2017 and forecasts until 2030: a modelling study」が注目を集めている。世界189カ国の調査を基にした(一部は149・118カ国が対象)データによると、1990年から2017年の世界の年間アルコール消費量は、209億9,900万lから356億7,600万lへと約70%増加。飲酒者は45%から47%へと増加する一方、生涯非飲酒者は46%から43%へと減少した。この傾向は今後も続き、2030年には飲酒者は50%、生涯非飲酒者は40%へと推移すると予測されている。

 同期間に(非飲酒者も含む)成人1人が消費した純アルコール量は、年間5.9lから6.5lへと増加。さらに2030年には7.6lに達すると予測されている。国立国際医療研究センターによると、ビール中ビン1本には約20gの純アルコールが含まれるという。従って、2017年には世界中の成人1人当たり約325本分相当の量を消費したことになり、2030年には約380本になる予測される。

 1990年以前には、ほとんどのアルコールは欧州をはじめとする高所得国で消費されていた。しかしこの状況は大きく変化し、1990年から2017年間に東南アジアでの消費量は104%、西太平洋地域では54%の急増となった。世界保健機関(WHO)によると、毎年300万人が不適切なアルコール摂取により死亡している。

 地域別では、2010年から2017年間には、インド、ベトナム、ミャンマーを中心とした東南アジアの中・低所得国で34%の増加。その一方で欧州では12%減少し、主としてアゼルバイジャン、ウクライナ、キルギス、ロシア等、旧ソ連をはじめとする地域での減少が顕著となっている。同期間に米国、中国では微増、アフリカや東地中海では大きな変化は見られなかった。2017年時点で最も消費量が多かったのは中東欧諸国であり、最も少ないのは北アフリカおよび中東だったが、欧州の消費は減少し続けると予測されている。

 研究者たちは、観光客による消費も加味しているものの、アルコール消費量の全体的な増加は飲酒者数の増加よりも比率が大きいことにも注目。2017年に月に1回以上の多量飲酒(60g以上の純アルコール摂取)者は全体の20%だったが、2030年には23%へと推移し、飲み過ぎによる疾病や事故等の拡大に繋がる恐れがあると警告している。また、今回のような調査の場合には過小に報告する傾向があることや、特に中低所得国では記録外の消費の可能性が高いことにも注意を促している。さらに、高所得国と異なり、中低所得の国々の中には予防医療や医療へのアクセスが不十分な地域もあり、そのことにも留意する必要がある。

 今回の調査を総括して、マンシー研究員らは、非感染性疾病、特にアルコールによる害の10%削減を掲げた「WHO Global Action for the Prevention and Control of NCDs 2013-2020」および国連持続可能な開発目標(SDGs)の目標3.5の達成は極めて困難な状況だと述べている。

 WHOの「Global status report on alcohol and health」に基づき2014年に発表された2010年(一部は2012年)のデータと2018年発表の2016年のデータを比較してみると、インドでは生涯非飲酒者が2010年には男性59.3%、女性90.0%だったが、2016年にはそれぞれ39.1%、68.8%に減少。2016年の多量飲酒者は55.1%、21.4%となった。同国では2010年、2016年共に、アルコールに起因する損失生存年数(YLL)は、最大5レベルの内、4に位置づけられており、健康への悪影響が非常に大きいことが顕著となっている。

 ベトナムでは、2010年に生涯非飲酒者が男性34.9%、女性62.9%だったが、2016年にはそれぞれ24.1%、52.4%に減少。2016年の多量飲酒者は50.2%、17.7%に。同国のYLLは2012年には最大のレベル5、2016年には4とされており、飲酒者、純アルコール摂取量共に増えているが、YLLレベルが下がっていることが注目される。疾病予防対策や医療へのアクセス向上、飲酒運転防止対策等が要因と考えられるが、健康への悪影響はまだ非常に大きい。

 ミャンマーでは、2010年に生涯非飲酒者が男性76.5%、女性91.1%だったが、2016年にはそれぞれ34.7%、64.6%に。2016年の多量飲酒者は42.5%、13.8%。2012年にレベル2だったYLLは2016年にはレベル4に達している。

 損失生存年数だけに焦点をあててみると、韓国は2012のレベル5から2016年にはレベル2へ、同期間に中国は4から2へ、米国は4から3へ、英国は4から2へ、ドイツは4から3へ、フランスは5から4へと下がった。アルコール合法化年齢は、米国の21歳を例外として、ベトナム、ミャンマー、フランス等は18歳以上としており、ドイツではビール・ワインは16歳以上が購入できる。

 日本のデータを見ると、2010年の生涯非飲酒者は男性5.0%、女性18.5%で、2016年にはそれぞれ4.3%、13.7%へと減少。非飲酒者を除外した飲酒者1人あたりの純アルコール摂取量は、2010年の男性13.7l、女性6.7lから、2016年には19.0l、6.6lとなった。2016年の多量飲酒者は男性53.0%、女性20.3%だが、2012年にレベル3だったYLLは、2016年にはレベル2になった。

 国税庁が公表しているデータによると、日本のアルコール販売量は1996年の約966万klをピークとして2017年には約837klへと縮小。厚生労働省は1日あたりの純アルコール摂取量が男性40g以上、女性20g以上を「生活習慣病のリスクを高める飲酒者」としており、この半分程度を適切としている。リスクの高い割合は、男性では20代8.5%、30代14.5%、40代21.4%、50代21.2%、60代17.4%、70代以上6.9%であり、女性では20代5.5%、30代11.3%、40代15.2%、50代12.8%、60代9.6%、70代以上2.1%だという。若い世代の方が適切な飲み方をしているようだ。
 
 オーストラリアのラトローブ大学アルコール政策リサーチセンターのセーラ・カリナン研究員は、特に今後も消費の拡大が予測されている中低所得国では、アルコール類の値上げ、販売時間や場所の制限、広告その他のマーケティング活動の規制、飲酒運転防止対策の強化等の重要性を強調している。

【参照ページ】Global alcohol exposure between 1990 and 2017 and forecasts until 2030: a modelling study
【参照ページ】Global Status Report on Alcohol and Health 2018
【参照ページ】Global Status Report on Alcohol and Health 2014
【参照ページ】Global Action Plan for the Prevention and Control of NCDs 2013-2020
【参照ページ】Harmful use of alcohol kills more than 3 million people each year, most of them men
【参照ページ】Alcohol:fact-sheets
【参照ページ】厚生労働省:飲酒のガイドライン
【参照ページ】国税庁:酒のしおり

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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