【国際】川砂の過剰採掘という新たな環境課題。地下水低下や社会不安問題も引き起こす 2019/07/23 最新ニュース

【国際】川砂の過剰採掘という新たな環境課題。地下水低下や社会不安問題も引き起こす 1

 コロラド大学ボルダー校極地・高山研究所(INSTAAR)のメルテ・ベンディクセン研究員らは7月2日、川砂の過剰採掘に警鐘を鳴らす論文を学術誌「ネイチャー」に掲載した。

 砂はどこにでもあると思われがちだが、砂漠の砂粒は滑らかすぎて実用的ではない。さらに砂は重量があり、遠方からの輸送費は高額となる。このような背景から、産業に最も適している砂の多くは河川から採っている。しかし河川での砂や砂利の採掘は、流域に暮らす30億人の人々の生活に広範な影響を及ぼす。例えば、中国の珠江での砂の採掘は地下水位を下げる原因となり、飲料水の抽出を困難にしている。

 現在、砂や砂利は、コンクリート、ガラス、電子機器の製造に不可欠な材料として世界中で年間約320億tから500億tが消費されている。年間約133億tを消費する石油、石炭、天然ガス等の一次エネルギーを大きく上回る。特に中国、インド、アフリカでの都市化や人口増を背景とした需要の急増は、自然再生のペースを遥かに超えている。ベトナム建設省は、2020年までに国全体が砂不足に陥ると2017年12月時点で予測したほどだ。

 しかし、砂の取引のほとんどは文書化されていない。例えば、2006年から2016年に、シンガポールは8000万tの砂をカンボジアから輸入したと報告。しかし輸出国のカンボジアでは、その4%以下しか報告されていなかったという。違法な砂の採掘は約70カ国で発生しており、特にインドでは、砂が莫大な利益を生むことに着目したマフィアが暗躍しているケースもあると報じられている。

 日中だけでなく夜間の採掘もあり、浚渫船や吸引ポンプからシャベルや素手で採掘する方法まである。需要が最も多い発展途上国では、主に小規模でインフォーマルな産業であり、監視と管理が困難。インドやケニア等では、市民、警察官、政府関係者等、過去10年間に数百人が砂をめぐる戦いで殺害されたという。

 ベンディクセン研究員らは、このような状況を看過すべきでないとして、国連環境計画(UNEP)と世界貿易機関(WTO)に砂資源のための世界規模の長期的な監視プログラムを設立し、監督するよう要請した。現在、河川堆積物に関するほとんどの研究は、ダムがどのように流れを妨げるかに焦点を当てており、商業的な採掘にはほとんど学術的な注意が払われていない。河川への砂の流入及びそこからの砂の採掘に関するデータが必要だとした。

 但し、自然界で採掘された天然砂について国連が発表している国際貿易データは、金属類を含有しているかどうかにより分類されており、採掘場所等は特定されていない。確かに、砂が川に沿ってどのように移動または堆積するかを定量化することは技術的に難しい。

 さらに多くの大河川流域は数カ国にまたがっているため、データアクセスや透明性、さらには国際法による報告義務や執行を難しくしている。例えば、メコン川は中国、ミャンマー、ラオス、タイ、カンボジア、ベトナムを流れている。ベトナム政府は、メコン川デルタでの砂の採掘の結果として崩壊している川岸から50万人近くの人々を移住させる必要があると推定しているが、他国との関係性については言及していない。

 今回、ベンディクセン研究員らは、持続可能な砂の抽出には、次の7つの要素が不可欠となると主張した。

  • 採掘場所の特定:河川およびその周辺環境に悪影響を及ぼさない、持続可能な砂の供給源を特定し、採掘を認証する制度の導入
  • 代替材料の利用:中央政府や地方自治体は、砕石、産業スラグおよび廃棄物(銅、飛散灰、鋳物砂を含む)および再生プラスチックなどの砂の代替品の利用拡大を奨励すべき
  • 再利用:砂ベースの材料は可能な限り再利用する。コンクリートは粉砕してセメントに混ぜることができるし、瓦礫は建物の基礎や道路、穴埋め用、歩道、庭園、防音壁、および堤防用の砂利として使用できる
  • 削減:新しい建造物に必要なコンクリートの量を減らすと砂の需要も少なくなる。より効率的な資材の使用の工夫と共に、材料の品質に関する業界標準の制定が必要
  • 管理:砂の採取を規制および管理するための国際的または多国間の枠組みの設定。UNEPとWTOは、砂の採掘に関する世界的なグッドプラクティスガイドラインを確立する必要がある
  • 教育:政界、産業界そして科学者等が先導し、砂の採掘問題に関する情報を広めなければならない。問題の範囲は社会、政治等、あらゆる分野に及び、問題提起だけでなく、解決策も提示される必要がある
  • 監視:データを収集し、共有するための世界規模のプログラムが不可欠。採掘の場所と範囲、さらには世界の河川における砂の流れの自然な変動を定量化する

 最優先されるのは詳細なデータ。米航空宇宙局(NASA)が2021年に予定している地球全体の地表水および海の地形についての調査が実現すれば、持続可能な砂の採掘に向けた大きな一歩となるという。

【参照ページ】Time is running out for sand
【参照ページ】Sand mafias and vanishing islands: How the world is dealing with the global sand shortage
【参照ページ】UN Comtrade

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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