国連責任投資原則(PRI)は3月27日、新型コロナウイルス・パンデミックの状況において、機関投資家が危機を乗り越えるために採るべきアクションをまとめたレポートを発表した。スチュワードシップの観点から公衆衛生、景気下落、社会の不平等の深化、それらによるメンタルヘルスというポイントを挙げ、提言を行った。
今回の発表では、パンデミックによって、機関投資家の運用資産残高(AUM)と運用報酬が減少していることが大きなダメージになっているが、公衆衛生や長期的な経済パフォーマンスの観点からサステナブルな企業を支援するために、短期的なリターンを後回しにしても、企業、政府に対し投資意思決定を通じた影響力を発揮すべきだとした。
企業に対しては、目の前の株主へのリターンより、従業員、取引先、サプライヤーのニーズに応えることを優先すべきとした。また、健康や経済の点から、危機に対応するため、価格や財やサービスの供給量を良識的に決定すべきとした。また、サプライヤー、労働組合、政府、投資家、従業員と協働し、経済と社会にとって不必要な害を与えるような外部効果を防ぐソリューションを設計し、実行に移すよう求めた。機関投資家の集団であるPRIが、長期的な視点から、株主への短期的なリターンを犠牲にしても良いと伝えたメッセージは大きい。
政府に対しては、緊急的な経済支援に対応することを求めた。前例のない自体には、前例のない対応が政府には求められ、マクロ経済的なインパクト視点だけでなく、公衆のウェルビーイングや長期的な経済環境の強化という視点も考慮したアクションが必要とした。長期的な経済環境という点では、不平等撲滅、低炭素移行等をあげた。
その上で、機関投資家に対しては、7つの迅速なアクションを求めた。
- アクション1: 危機マネジメントに失敗している企業とのエンゲージメント
- アクション2: 危機によって覆い隠されているもしくは悪化している害へのエンゲージメント
- アクション3: その他のテーマのエンゲージメント優先順位の再検討
- アクション4: 経済全体の対応の支援
- アクション5: バーチャル株主総会への参加
- アクション6: 金融支援要求への前向きな対応
- アクション7: 長期志向の投資意思決定の維持
上記7つのアクションについて、詳細な説明も加えている。今回の提言書は、PRIが運営するソーシャルネットワークの中での自発的な意見交換から生まれたもの。PRIは今後も意見交換を継続し、今回の提言をさらにブラッシュアップしていく考え。
【参照ページ】How responsible investors should respond to the COVID-19 coronavirus crisis
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